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女神の足元から天使の眺めを 映画ロケ地でめぐるドイツ・ベルリン①

監視社会の実態をいまに残す場所

 1990年まで存在したドイツ民主主義共和国(東ドイツ)は、第二次世界大戦後の1949年に建国された社会主義国。この国が登場する映画やドラマ、小説などはスパイ&歴史ファンにおなじみでしょう。なかでもシュタージ(国家保安省)による監視社会を描いた『善き人のためのソナタ』(2006)は、第79回アカデミー外国語映画賞を受賞した名作です。

 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督による本作は、シュタージに所属するゲルト・ヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)が主人公。国に忠実な彼は、反体制派と目される劇作家とその恋人の監視を始めます。劇作家の部屋に仕掛けた盗聴器を使い、屋根裏で監視を続ける日々。しかし、盗聴器を通じて触れた作家たちの生活は、彼の内面に変化をもたらすのでした。

 国が国民を監視。ヴィースラー大尉の手段は盗聴でしたが、実際は盗撮、尾行、密告、尋問など多岐にわたります。予備調査から実際の監視まで、一連のプロセスも決まった順に展開されていました。多数の作品で「悪の組織」とカテゴライズされていますが、その内部をじっくり覗いてみたくなったなら、旧東ベルリン側の「シュタージ博物館」へどうぞ。作品をさらに深く理解できるでしょう。

広大なブロックにはかつて、オフィスや食堂、医務室などシュタージ関連施設が集まっていた。博物館として使用されている建物はこちらのハウス1(撮影:goo映画編集部)

 博物館はUバーン(地下鉄)5号線「マグダレーネン通り」駅すぐ脇のブロックに位置しています。当時は広大な1ブロックすべてがシュタージ関連施設(ハウス)で構成され、本部として機能していました。博物館として公開されているのは、長官を務めたエーリッヒ・ミールケのオフィスがあったハウス1。ミールケのオフィスはもちろん、館内のシェルフやカーテン、電話機、テーブルや椅子などすべて当時のままで残されています。

東ドイツのデザインは現在もファンが多く、ベルリン市内には当時の食器や雑貨などを集めたショップも(撮影:goo映画編集部)

 『善き人のためのソナタ』の室内シーンはスタジオ内のセットですが、レトロテイスト漂う無機質インテリアはそのままです。博物館ではそっくりな場所をいくつも見つけられるはず。

日本の昭和風テイストもあるインテリア。使用されていた家具はすべて当時のまま(撮影:goo映画編集部)

 ベルリンの壁崩壊は1989年11月。12月にシュタージは解散しましたが、監視で収集した個人資料はそれ以前から処分が始まっていました。翌年1月には人権活動家たちが建物を占拠し、その後1年ほどで一般公開へ。説明パネルは長くドイツ語のみでしたが、数年前のリニューアルでやっと英語が追加されました。展示内容はシュタージの組織構成や詳細な活動内容など、じっくり見て回ると数時間はかかるボリューム。盗聴・盗撮に使用した機器類、制服、書類なども実物が展示されています。

静かで孤独な作品のムードを色濃く感じる空間(撮影:goo映画編集部)

 おなじ敷地内の別ハウスでは資料パンフレットも無料配布されるなど、いわゆる「負の歴史」を包み隠さず、かつ客観的に伝えようとする姿勢は随所に見受けられます。「ちょっと肩が凝る内容かな」と思われるかもしれませんが、映画をきっかけに歴史を知る時間は無駄にならないはず。

 ちなみに、博物館があるリヒテンベルグ地区では、シュタージが使用していた刑務所も「ホーエンシェーンハウゼン記念館」(WEB)として公開されています。こちらはグループ見学のみのため、訪問前に英語ツアーの催行日時をチェックしておきましょう。

シュタージ博物館 Stasimuseum Berlin in der Zentrale des MfS WEB
住所 Ruschestraße 103, Haus 1, 10365 Berlin, Germany

 次のスポットは、おなじく『善き人のためのソナタ』の名シーンに登場する「カール・マルクス書店」です。作品のどこで登場するかはネタバレになってしまうため、未見の方はまずご鑑賞を。Uバーン(地下鉄)5号線「シュトラウスベルガー」広場駅から徒歩約5分。旧東ベルリンの大通り、カール・マルクス通り沿いに位置しています。

建物自体は文化財に指定されており、現在も夜はネオンサインが灯ります(撮影:goo映画編集部)

 1953年にオープンしましたが、映画登場後の2008年に経営難のため閉店。2016年にはカルチャー系のサロンとなり、映画上映などのイベントを開催していたそう。ちなみに、アレクサンダー広場から始まるカール・マルクス通りには、東ドイツ時代の建物が並んでいます。カール・マルクス書店のほかにもシュタージのビル(現在は廃墟)や当時から営業するカフェ「カフェ・シビラ」など見所はたくさん。建築ファンには特におすすめです。

旧カール・マルクス書店 Karl-Marx Buchhandlung
住所 Karl-Marx-Allee 78, 10243 Berlin, Germany

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