世界映画散歩 ① 天使とスパイがすれ違う街~ドイツ・ベルリン

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 ドイツの首都・ベルリンはヨーロッパを代表する観光都市。ベルリンの壁やシャルロッテンブルク宮殿など長い歴史が築いた観光スポットには、ロンドンとパリに次ぐ数の観光客が集まるそう。また、それらの多くは数々の名作映画や小説に登場する重要な舞台でもあります。

ベルリン・天使の詩 Der Himmel über Berlin

 ベルリンを舞台にした映画といえば、現在も圧倒的な知名度を誇る『ベルリン・天使の詩』(1987)でしょう。2018年のベルリン国際映画祭では4Kデジタル修復版が上映され、来場したヴィム・ヴェンダース監督に盛大な拍手が送られました。公開から約30年経っても人気が衰えない理由のひとつは、ベルリンの壁以外さほど変化していないロケーションかも。

 その代表がこちら、天使のダミエル(ブルーノ・ガンツ)がたたずんでいた戦勝記念塔(ジーゲスゾイレ)です。

戦勝記念塔(ジーゲスゾイレ)はベルリン中央に広がる広大な公園・ティーアガルテンの中心に。ベルリンの壁が存在していたブランデンブルグ門から大通りを西へ約2キロ。撮影当時は西ベルリン側でした(撮影:goo映画編集部)

 地味なコートに身を包み、ベルリンの街を見守りつ続ける天使たち。彼らの目に映る街はつねにモノクロですが、実際の女神像はご覧の通りキラッキラ。さすが勝利の女神ヴィクトリアです。近付くにつれて増す迫力は、夜中にロボ化して悪を倒しそうな雰囲気も。

 もっと近付きたくなったなら女神の足元まで行ってみましょう。ここからが本番です。エレベータなんてもちろんなく、ひたすら続く螺旋階段は気軽に上り始めたことを後悔する険しさ。すれ違う人たちからも笑顔は消え「大丈夫?」「あと少しだからがんばって」と真顔で声をかけあう登山客状態になることも。「羽根がない人間のカラダはとっても重い」という事実を、心から実感できてしまう仕様です。これも女神の配慮でしょうか。

狭い螺旋階段がひたすら続く塔内部。最初は笑顔だった人もそのうち無口になり、到着間際は荒い息遣いしか響かなくなることも…。途中に休憩用の椅子アリ(撮影:goo映画編集部)

 やっとのことで到着した地上約60メートル。足元から見上げる女神像もやっぱりキラッキラです。

足元に到着! 間近で見てもキラッキラです(写真:goo映画編集部)

 見晴らしはもちろん、苦労した甲斐があったと思えるすばらしさです。これぞ天使ダミエルが見ていたベルリンの景色。ある人間女性に恋心を抱いた彼は天使の立場を捨て、この見晴らしともお別れしました。しかし次には、色鮮やかな町並みが彼の心を打ちます。ティーアガルテンを覆う緑にもきっと、彼は目を輝かせたでしょう。

旧西ベルリン側の「6月17日通り」。1989年のベルリンの壁崩壊時には、壁に向かう西ベルリン市民で埋め尽くされた場所でもあります(撮影:goo映画編集部)

 ちなみに、塔の内部に歴史に関する展示スペースも。いくつもの戦争やベルリンの壁など、あらゆる時代のベルリンと寄り添った様子を豊富な資料で学べます。

戦勝記念塔(ジーゲスゾイレ) Siegessaule WEB
住所 Großer Stern 1, 10557 Berlin

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善き人のためのソナタ Das Leben der Anderen

 1990年まで存在したドイツ民主主義共和国(東ドイツ)は、第二次世界大戦後の1949年に建国された社会主義国。この国が登場する映画やドラマ、小説などはスパイ&歴史ファンにおなじみでしょう。なかでもシュタージ(国家保安省)による監視社会を描いた『善き人のためのソナタ』(2006)は、第79回アカデミー外国語映画賞を受賞した名作です。

 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督による本作は、シュタージに所属するゲルト・ヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)が主人公。国に忠実な彼は、反体制派と目される劇作家とその恋人の監視を始めます。劇作家の部屋に仕掛けた盗聴器を使い、屋根裏で監視を続ける日々。しかし、盗聴器を通じて触れた作家たちの生活は、彼の内面に変化をもたらすのでした。

 国が国民を監視。ヴィースラー大尉の手段は盗聴でしたが、実際は盗撮、尾行、密告、尋問など多岐にわたります。予備調査から実際の監視まで、一連のプロセスも決まった順に展開されていました。多数の作品で「悪の組織」とカテゴライズされていますが、その内部をじっくり覗いてみたくなったなら。旧東ベルリン側の「シュタージ博物館」へどうぞ。さらに深く作品を理解できるでしょう。

広大なブロックにはオフィスや食堂、医務室などシュタージ関連施設が集まっていた。博物館として使用されている建物はこちらのハウス1。(撮影:goo映画編集部)

 博物館はUバーン(地下鉄)5号線マグダレーネン通り駅すぐ脇のブロックに位置しています。当時は広大な1ブロックすべてがシュタージ関連施設(ハウス)で構成され、本部として機能していました。博物館として公開されているのは、長官を務めたエーリッヒ・ミールケのオフィスがあったハウス1。ミールケのオフィスはもちろん、館内のシェルフやカーテン、電話機、テーブルや椅子などすべて当時のままで残されています。

東ドイツのデザインは現在もファンが多く、ベルリン市内には当時の食器や雑貨などを集めたショップも(撮影:goo映画編集部)

 『善き人のためのソナタ』の室内シーンはスタジオ内のセットですが、レトロテイスト漂う無機質インテリアは忠実に再現されています。博物館ではそっくりな場所をいくつも見つけられるはず。

ヨーロッパ各地から連日多数の観光客が訪れます(写真:goo映画編集部)

 ベルリンの壁崩壊は1989年11月。12月にシュタージは解散しましたが、監視で収集した個人資料はそれ以前から処分が始まっていました。翌年1月には人権活動家たちが建物を占拠し、その後1年ほどで一般公開へ。説明パネルは長くドイツ語のみでしたが、数年前のリニューアルでやっと英語が追加されました。

 展示内容はシュタージの組織構成や詳細な活動内容など、じっくり見て回ると数時間はかかるボリューム。盗聴・盗撮に使用した機器類、制服、書類なども実物が展示されています。

日本の昭和風テイストもあるインテリア。使用されていた家具はすべて当時のままです(goo映画編集部)

 おなじ敷地内の別ハウスでは資料パンフレットも無料配布されるなど、いわゆる「負の歴史」を包み隠さず、かつ客観的に伝えようとする姿勢は随所に見受けられます。「ちょっと肩が凝る内容かな」と思われるかもしれませんが、映画をきっかけに歴史を知る時間は無駄にならないはず。

静かで孤独な作品のムードを色濃く感じる空間です(撮影:goo映画編集部)

 ちなみに、博物館があるリヒテンベルグ地区では、シュタージが使用していた刑務所も「ホーエンシェーンハウゼン記念館」(WEB)として公開されています。こちらはグループ見学のみのため、訪問前に英語ツアーの催行日時をチェックしておきましょう。

シュタージ博物館 Stasimuseum Berlin in der Zentrale des MfS WEB
住所 Ruschestraße 103, Haus 1, 10365 Berlin, Germany

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 『善き人のためのソナタ』に登場する次のスポットは、号泣必至の名シーンに登場する「カール・マルクス書店」です。作品のどこで登場するかはネタバレになってしまうため、未見の方はまずご鑑賞を。

建物自体は文化財に指定されており、現在も夜はネオンサインが灯ります(撮影:goo映画編集部)

 Uバーン(地下鉄)5号線シュトラウスベルガー広場駅から徒歩約5分。旧東ベルリンの大通り、カール・マルクス通り沿いに位置しています。1953年にオープンしましたが、映画登場後の2008年に経営難のため閉店。2016年にはカルチャー系のサロンとなり、映画上映などのイベントを開催していたそう。

 アレクサンダー広場から始まるカール・マルクス通りは、東ドイツ時代の建物が並んでいます。カール・マルクス書店のほかにもシュタージのビル(現在は廃墟)や当時から営業するカフェ「カフェ・シビラ」など見所はたくさん。建築ファンには特におすすめです。

旧カール・マルクス書店 Karl-Marx Buchhandlung
住所 Karl-Marx-Allee 78, 10243 Berlin, Germany

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