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『ラストエンペラー』の舞台・故宮でタイムスリップ気分~中国・北京

 イタリアの巨匠、ベルナルド・ベルトルッチ監督が愛新覚羅溥儀の生涯を描いた『ラストエンペラー』(1987)。そのロケ地となった「北京故宮」(以下、故宮)は現在、1日に数万人の見学者が訪れる世界遺産です。日本から北京は飛行機で約4時間。比較的訪問しやすい海外ロケ地として、旅先の候補にしてみては?

雨や風はもちろん、夏の暑さや冬の寒さにもマケズ押し寄せる観光客。大半が中国人のため中国の祝日は大混雑必至(撮影:goo映画編集部)

『ラストエンペラー』の舞台は「世界最大の木造建築群」

 米アカデミー賞で作品賞と監督賞など9部門を受賞した超大作『ラストエンペラー』。その魅力といえばまず、ジョン・ローン(溥儀)とジョアン・チェン(婉容)、ピーター・オトゥール(レジナルド・ジョンストン)、そして坂本龍一(甘粕正彦)らの豪華キャスト陣でしょう。坂本龍一はデヴィッド・バーンらと音楽も担当し、米アカデミー賞作曲賞を受賞しました。

 また、作品の壮大なスケール感も大きな魅力です。撮影場所となった故宮はまさに「影の主役」といえるでしょう。その始まりは1406年にまで遡ります。この年に明(1368~1644年)の永楽帝は、元(1271~1368年)の時代の宮殿を改築。1421年以降は紫禁城(故宮の旧名)として明の、そして続く清(1644~1912年)の宮殿となりました。1908年に2歳10カ月で清の第12代皇帝に即位した愛新覚羅溥儀は、ここで暮らした最後の皇帝です。

 歴代皇帝が暮らした宮殿は現在、南北961メートル&東西753メートルの「世界最大の木造建築群」です。1986年に中国政府の文化部(文化庁にあたる)は、国家級の重要文化財に指定された建物内での撮影を禁止しました。このため、本作は故宮内部で撮影された最初で最後の作品です。作品自体も、ある意味では「最後」だったというわけですね。

入るだけでもひと苦労 検問と人波を越えて突き進もう

 北京市内の警備は年々厳重になっており、故宮訪問に検問通過は必須。ただし、故宮入口ではなく、天安門広場などを含む付近一帯へ入る際です。一般的なアクセスは① 地下鉄1号線駅「天安門東」「天安門西」、② 前門から徒歩、③ チャーター車・観光バスなどで、いずれも故宮への経路途中に検問所が設置されています。検問所ではパスポートの提示が義務付けられており、火器類は基本的に没収です。

前門からの徒歩ルートで通過できる天安門広場。奥に見える赤い建物が「毛主席の肖像画」でおなじみの天安門(撮影:goo映画編集部)

 天安門に到着。故宮はさらに600メートル先の「午門」からです。意外と遠い! しかも、混雑はここからが本番。オンシーズンや週末なら牛歩は覚悟しましょう。前の噴水で音楽とあわせたプログラム(毎正時)が始まれば最後、行列はびくとも動きません。

2月の天安門。雪が降る寒い真冬でも大混雑&牛歩。春節(旧正月)周辺は特に混雑するので要注意(撮影:goo映画編集部)

 混雑回避の裏技は天安門のすぐ東側(向かって右手)にある北京市労働人民文化宮です。現在は市民文化センターですが、敷地内には明と清の時代に祖先を奉った太廟があります。2元の入場料を払えば、人ごみと無縁の園内を「午門」脇まで通り抜けられるほか、太廟の見学も可能です。

太廟の内部はフォトジェニック。意外な穴場です(撮影:goo映画編集部)

溥儀が「出たかった」門から「入る」興奮

 有料エリアの入口「午門」。『ラストエンペラー』ファンは早速ここから燃えましょう。母の死を知った溥儀が「門を開け!」と叫んだ場所、溥儀に追放された宦官たちが集団で土下座した場所、そして1924年の北京政変で故宮を追放された溥儀たちが「出て行く」場所がこちらです。

撮影時よりもキレイになりました。2018年8月にはサッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドがこの場所でリフティングを披露。なにかの撮影だったそうですが、状況としては普通にカオスですね(撮影:pixta)

 故宮の見学者は1日8万人まで。チケットはネットでの事前購入が推奨されていますが、サイトは中国語のみ。当日券の外国人はまず、真横の窓口で入場料支払いとパスポート番号の登録を。正面ゲートでパスポートを提示し、登録パスポート番号と照合できれば晴れて入場です。チケット半券や支払い控え、無料パンフや地図といったアイテムはありません。イヤホンガイド(有料)を利用するか、事前に市販のガイドブックなどを準備しましょう。

ベビー溥儀が皇帝になった場所・太和殿

 午門を抜けると太和門、抜けると先には…「ああ、見たことあるぞ!」な風景がまた登場。幼い溥儀の即位シーンはここで撮影されました。

太和門を抜けてすぐの広場。撮影時は撮影クルーと数百人のエキストラが集った場所です。左手奥が太和殿(撮影:goo映画編集部)

 太和門から北進した位置にある太和殿は、皇帝が重要な式典を行った建物。階段正面の龍のレリーフが目印です。太和殿前で太和門とレリーフを背にして立つ溥儀の姿は、ポスターやDVDジャケットなどでもおなじみですね。

太和殿に続く龍のレリーフ。ぜひ上にお子さんを立たせて黄色い布と一緒に撮影を(撮影:goo映画編集部)

 太和殿内部は外からの見学のみ。内部には溥儀がコオロギの入れ物を隠したあの玉座が置かれています。コオロギが登場した理由は、北京で古くから盛んな「闘蟋(とうしつ)」(コオロギ相撲)。秋になると全国大会も開催され、動植物店などが集まる市場では、小さな虫かごに入ったコオロギが大量に陳列され、鳴き声で耳がツンとするほど。

 ちなみに、撮影風景のミニチュアは日本の 東武ワールドスクエア で見学可能。カメラの位置なども再現されており、臨場感はたっぷりです。また、北京郊外の老舗撮影所、 横店影視城には巨大オープンセットセットがあります。

イケメン溥儀がテニスをした場所・中和殿と保和殿の東側

 太和殿の奥は、式典前の皇帝が控えていた中和殿と、清の時代は宴と役人の試験に使われた保和殿です。太和殿と合わせて「外朝三大殿」と呼ばれるメインスポットの一部ですが、『ラストエンペラー』ファンは建物の脇に注目を。

木製ラケットを持参すると撮影がはかどります。溥儀ペアがいた側は手前、ジョンストンが座った審判台は左側です。(撮影:goo映画編集部)

 ああ…見える、見えますね? 白シャツにVネックセーター、黒縁眼鏡のイケメン溥儀と、審判台に乗ったレジナルド・ジョンストン、そして突然現れる国民党軍が。1924年、馮玉祥がおこした北京政変により、溥儀は故宮(当時は紫禁城)から追放されます。そして、午門での「退場」シーンに続きます。

見所はほかにも! タイムスリップ気分を楽しもう

 故宮の公式サイトによると、午門から前三殿(外朝三大殿)、その先の後三宮(乾清宮と交泰殿、坤寧宮)と御花園を見学する南北直進ルートの約2時間。最短ルートですが、『ラストエンペラー』気分は十分満喫できるでしょう。また、御花園にはジョンストンが実際に暮らした養性斎も。

ジョンストンが実際に暮らした養性斎。彼はのちに、溥儀にささげる書「紫禁城の黄昏」を執筆しました(撮影:goo映画編集部)

 「このためだけに来た!」なら、半日から1日かけて見学可能エリアをそぞろ歩き。京劇舞台の暢音閣や溥儀の部屋があった麗景軒、浅田次郎の小説「珍妃の井戸」(講談社文庫)に登場した井戸(別料金エリア内)など、見ごたえはたっぷり。また、赤い壁に囲まれた通路は『ラストエンペラー』でおなじみの景色でしょう。

溥儀の母が追い出されるシーンなど、ベルトルッチ監督は赤い壁が作る印象的なパースをいくつか撮影しています。ただし、おなじような壁は無数にあるため、撮影場所の特定には根気が必要(撮影:goo映画編集部)

おみやげ&おしゃれカフェも

 敷地内の売店は数年前から徐々に充実。手ごろな価格の食堂やおしゃれなカフェ、モダンなデザインのレストランも登場しました。

当時の冷蔵室があった場所にはカフェが。「ここが故宮?」と一瞬驚く内装&おしゃれなオリジナルカップ(撮影:goo映画編集部)

 お土産にできる故宮オリジナルグッズも豊富&アイディアたっぷり。皇帝が通る際に掲げた「お静かに」の看板をプリントしたトートバッグや、皇帝の衣類を模した黄色いエプロンなど、自宅でも皇帝気分を味わえます。

真夏は日傘などの日除けグッズ必須。クーラーがきいている展示館もあるので、こまめに休憩を取りましょう。冬場は雪が降ることもあるため足元に注意(撮影:goo映画編集部)

 故宮内の移動は軽いハイキングです。身軽な服装と歩きやすい靴はもちろん、真夏なら日傘や帽子、飲料水をお忘れなく。また、真冬はとてつもなく寒く、雪が降ることも。『ラストエンペラー』の撮影は1986年の9月ごろで、当時はまだ月の平均気温が20度以下でした。いまよりはすごしやすかったはずですが、80年代半ばに「実際の現場で撮影する」というシンプルな行為がいかにパワーを必要としたか、故宮を歩けば全身で実感できるでしょう。

真冬の故宮もまた絶品。SNS映えも狙える?(撮影:goo映画編集部)

 巨匠と名優、名スタッフたちが懸命に挑んだ撮影。オリジナルカット版は219分という長編作品ですが、1400年代から歴代皇帝を守り続けた故宮にとっては、ほんの一瞬の出来事だったでしょう。けれどその一瞬は、故宮の姿をフィルムに焼付け、永遠に残す一瞬になりました。

北京故宮(故宮博物院) WEB
4~10月 8:30~17:00 料金60元、11~3月 8:30~16:30 料金40元、毎週月曜休(祝日および7月4日~8月24日は開館)

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