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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』マサチューセッツで描かれた「女性の在り方」とは?

 ルイーザ・メイ・オルコットが1868年に出版した名作「若草物語」。4部作からなるシリーズだが、多くの方が1作目、マーチ家4姉妹の少女時代の物語を読むにとどまっているとすればもったいない。「若草物語」はある女性の生涯を追った物語なのだ。本作『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』は、そんな物語に現代的な視点を組み入れている。

マーチ家の4姉妹。左から長女メグ(エマ・ワトソン)、次女ジョー(シアーシャ・ローナン)、四女エイミー(フローレンス・ピュー)、三女ベス(エリザ・スカンレン)

 本作で描かれているのは、1933年のジョージ・キューカー監督版、1949年のマーヴィン・ルロイ監督版、1994年のジリアン・アームストロング版同様、1作目から姉妹が結婚や生き方に悩みながら人生の決断をする2作目「続 若草物語」までとなる。

マサチューセッツと2つの「家」が示すもの

 舞台は19世紀、米マサチューセッツ州コンコードに建つオーチャードハウス。父が南北戦争に従軍牧師として出征したため、家を守る母と4姉妹は、貧しいながらも想像力で日々を楽しみ、他人を思いやって生きている。

 女優になる夢を諦めて結婚する長女メグ(エマ・ワトソン)、小説家になろうとする次女ジョー(シアーシャ・ローナン)、優しく病弱だがピアノの才能を持つ三女ベス(エリザ・スカンレン)、画家を目指しパリに留学する要領のいい四女エイミー(フローレンス・ピュー)のマーチ家の4姉妹を、ジョーを核に描く。

 1650年頃に建てられたオーチャードハウスはいまも健在。現在は、国定歴史建造物だ。だから、撮影で使われたのは撮影用のセット。セットの装飾を担当するアダム・ロフマンは、美術監督のジェス・ゴンコールらとオーチャードハウスに通い、約9カ月かけてすべての装飾品を用意し、生活の空気を醸した。

実際のオーチャードハウス (c) zrfphoto/depositphotos

 セットが建てられたのはもちろんマサチューセッツ。そこが重要だった。オルコット家が実際に住み、1868年に「若草物語」が書かれたオーチャードハウスは、宗教の自由、民主主義、平等などオルコット家と当時のマサチューセッツが抱えていた問題を表現するものでもあったから。「これはルイーザ・メイ・オルコットについての映画でもあり、彼女の人生はここにあった。その土地で撮ることが必要でした」とプロデューサーのエイミー・パスカルは語っている。

 映画では、そのオーチャードハウスの向かいに、次女ジョーへの恋心を隠し、友人としてふるまうローリー(ティモシー・シャラメ)の住む資産家のローレンス邸がある。ローレンス邸とマーチ家の間には、自立して生きることを望むジョーと、それを理解するからこそ気持ちを伝えられないローリーの恋と、ピアノを介して気遣いあう主ローレンスとベスの思いやりという心が静かに行き来している。だが、実際はオーチャードハウスから約16キロ離れたウォルサムにあるライマンエステートで撮影された。

 ライマンエステートは1882年に建てられたビクトリア様式の屋敷。“ザ・ベール”の愛称で親しまれる美しき国定歴史建造物だ。家具職人としても知られる建築家サミュエル・マッキンタイアが設計した。

ローレンス邸として撮影されたライマンエステート

 この屋敷のバルコニーで、恋が芽生える瞬間が描かれる。ボウルルームで踊る人々をバックに、ジョーとふざけ合うローリーの心に。本作一番のラブシーンで、観ている私たちも二人をいとおしく思う。

 そんなローリーがジョーへの思いを抑えきれなくなるシーンが撮られたのは、マサチューセッツで一番美しい丘と言われるジベットヒル。ナシュア川の渓谷が秋色に染まった丘陵で、ジョーは「生涯結婚するつもりはない」ときっぱり言い放つ。「女の幸せが結婚だけなんておかしい。そんなの絶対間違ってる!」と。そしてそれは、「どうしようもなく孤独」なことを自覚する。

ローリーが思いを爆発させたジベットヒル

 物語は、コンコード、ニューヨーク、そしてパリで展開する。どのシーンもマサチューセッツで撮影されている。“金持ちとの結婚”を言明する裕福な伯母(メリル・ストリープ)の教えを受け入れ、それまで伯母の面倒を見てきたジョーからパリ行きの座を勝ち取るエイミー。

 だが、要領よくパリで絵画を学ぶ彼女もまた、受け入れがたい現実に翻弄されている。彼女が心を寄せるローリーはジョーを愛し、自身の絵もプロになれるほどの腕前ではないという現実に。

パリのアトリエという設定で撮影されたローリーとエイミーのシーン

 そんなエイミーらがベスの訃報を聞く美しい庭園シーンも、マサチューセッツ州イプスウィッチにあるキャッスルヒルで撮られた。キャッスルヒルは、マサチューセッツ湾植民地の初代総督の息子ジョン・ウィンスロップJr.が1637年に開発。建て替えなどの歴史を経て、現在丘の上にそびえたっているのは、建築家デイヴィッド・アドラーが1926年に設計したスチュアートスタイルの邸宅だ。これも国定歴史建造物に指定されている。

 近くのクレーンビーチでは、4姉妹の海水浴シーン、そして療養するベスとジョーが海岸で語らうシーンも撮影された。キャッスルヒルは現在、宿泊施設としても営業している。

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