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名作で観る世界の宮殿と城 ② 芸術を愛した王とヘリからダイブした女王【映画で仮想旅行】

文化への敬意あふれるバッキンガム宮殿

 エリザベス女王が現在も住居としている「バッキンガム宮殿」(イギリス)。その始まりは、バッキンガム公ジョン・シェフィールートが、1703年に建てたバッキンガムハウスだ。ジョージ4世がネオクラシック様式に改築し、ヴィクトリア女王が移り住んだ1837年から、イギリス皇室のロンドンの公式の住居となった。

 正面は約108メートル、奥行120メートル、高さ24メートル。客室775室、ステートルーム19室、ロイヤルルームとゲストベッドルームを合わせて52室、188室のスタッフベッドルームに、計78のバスルームがある。宮殿内には92室のオフィスがあり、様々な執務が行われている。このため、たとえ映画の舞台がバッキンガム宮殿でも、実際に撮影が許されることはない。しかし、例外もいくつかある。

文化への愛が深いイギリス皇室の公邸、バッキンガム宮殿(adellyne/stock.adobe.com)

 まずは、ロンドン五輪の開会式で上映された、総合演出のダニー・ボイル監督による“Happy & Glorious”。ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)がエリザベス2世を迎えに行くシーンは、女王の私室での撮影が許可されている。ポンドを出迎えるのも女王本人。2人が待機していたヘリコプターに乗り込み、スタジアム上空からパラシュートで降下する演出は、固唾を飲んで見守っていた全世界の聴衆の度肝を抜いた。

 そして実は、もう一例ある。シャーロック・ホームズをベネディクト・カンバーバッチが、ジョン・ワトソンをマーティン・フリーマンが演じるBBCドラマ『SHERLOCKシャーロック』だ。そのシーズン2、エピソード1「ベルグレービアの醜聞」は、バッキンガム宮殿で撮影が行われた。

 シーツを巻き付けた姿で家にいたホームズは、そのままバッキンガム宮殿に連れ去られる。呼び出したのは彼の兄で、政府の役人をしているマイクロフト(マーク・ゲイティス)。依頼主は、その宮殿で一番“高位”にいる人物だという。マイクロフトはホームズに、話を聞く前にパンツを履くよう一式の服を渡すが……。バッキンガム宮殿でちょっとしたサービスカットまで撮影させるとは、英国および英国王室の懐の深さを改めて思い知る。

 また、宮殿外観は『007 ダイ・アナザー・デイ』(2002)の勲爵士授与式出席のため英国旗パラシュートで降下するダイヤモンド王グレーヴス(トビー・スティーブンス)の登場シーンや、アカデミー賞の作品賞と主演男優賞を受賞した『英国王のスピーチ』(2010)でジョージ6世(コリン・ファース)がスピーチを終えた後のシーンが撮影されている。

 ちなみに、『英国王のスピーチ』の城内は、1825年に建造された大邸宅「ランカスター・ハウス」で撮影された。ランカスター・ハウスは、TVドラマ『ダウントン・アビー』などバッキンガム宮殿の“内部”として度々使用されている。