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名作で観る世界の宮殿と城 ① アントワネットとアミダラの人生をたどる【映画で仮想旅行】

 主となるための熾烈な戦いを勝ち抜き、覇者となった者の生き方。巨大建築の設計に注ぎ込まれた繊細かつ緻密な技術。城が登場する映画は、そんなありようを最大限に利用し、物語を代弁させたものが多い。今回は城が舞台の映画をご紹介しよう。

成長の象徴としての「ベルサイユ宮殿」

 日本女性がフランス革命に詳しい理由は、池田理代子の名作マンガ「ベルサイユのばら」があるからだ。筆者にアンシャン・レジーム、ロベスピエールなどという単語や名前を記憶させたのもこの作品であり、恐るべき漫画である。

 タイトルの由来でもある「ベルサイユ宮殿」(フランス)は、マリー・アントワネットとルイ16世らも暮らした場所。元は1624年にルイ13世が建てた離宮で、太陽王と呼ばれたルイ14世が改築・造園し、1682年に王宮として移り住んだ。

 宮殿とその周辺に約1万人の貴族や官僚を住まわせ、王の寵愛を競わせた理由は、幼い頃に遭った大貴族の反乱だと言われている。絶対王政を布くために有力な貴族を住まわせ、たがいに競わせて力を弱体化させたという意味では、江戸に大名を住まわせた徳川家康の考え方に近い。

ベルサイユ宮殿の鏡の間。なにもかもが大きな城では人間の愚かさすら小さく見える(f11photo/stock.adobe.com)

 ソフィア・コッポラ監督、キルスティン・ダンスト主演の『マリー・アントワネット』(2006)は、このベルサイユ宮殿で3カ月ロケを行った。史実を追うというより、ストレンジャーな少女が、味方が1人もいない中で自分の呼吸する場所を探す物語だ。父フランシス・コッポラの撮影に同行して、世界を転々としながら居場所を探した少女時代のソフィア自身を描いたと言っても過言ではない。

 作中では、産まれた子どもとプチ・トリアノン(小トリアノン宮殿)で過ごすマリー・アントワネットをある意味、居場所を見つけたとも受け取れる描き方をしている。

 これは、“青い鳥”は場所ではなく、身近なところにあったという意図なのだろう。実生活でも映画の公開年に第1子を出産。プロモーションで、本作が「女性が進むべき道やアイデンティティを見つける3部作の最終章」だとコメントしている。

プチ・トリアノン(PackShot/stock.adobe.com)

 マリー・アントワネットが狂瀾の日々を過ごす演出は、カンヌ国際映画祭や研究者らの不興を買ったようだが、たぶんこれは1664年に、ルイ14世が愛人ルイーズのために開いた饗宴「魔法の島の歓楽」を具現化してみたのではないか。6日間にわたるその饗宴では、ルイ14世お抱えの舞台美術家カルロ・ヴァガラニによる花火が幻想的に噴水のある大庭園を飾ったそうだ。

 ちなみに噴水の水は、10キロメートル離れたセーヌ川から巨大な揚水装置「マルリーの機械」を使って汲み上げ、作り上げた水道橋でベルサイユまで流したのだそう。権威を示すために備えた水道……。そう思いながら映画を観ていくと、ベルサイユ宮殿の栄枯盛衰さえ圧縮されて見えてくるようだ。

 このほか、ベルサイユ宮殿で撮影された作品には、マリー・アントワネットと、彼女を慕う朗読係の侍女の手痛い失恋を描いたブノワ・ジャコー監督の『マリー・アントワネットに別れを告げて』(2012)と、ジャック・ドゥミ監督の『ベルサイユのばら』実写版がある。

煽られた競争心が具現化された「カゼルタ宮殿」

 そんなソフィア・コッポラが少女時代、端役で出演した『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)。この作品が撮影された「カゼルタ宮殿」(イタリア)も特筆すべき城だ。ブルボン家の血筋であるナポリ王カルロ3世が、ベルサイユ宮殿に憧れ「それ以上の宮殿を!」と、18世紀後半に建造。1997年には世界遺産に登録されている。

巨大な力は新たな欲望を揺り動かすカゼルタ宮殿(reinenice/PIXTA)

 宮殿には、劇場、礼拝堂、博物館を含む約1200の部屋と、ベルサイユ超えを狙ったと思われる滝やギリシャ神話の彫刻噴水が設置された120ヘクタールの庭園がある。庭園に水を供給するため、建築家ルイジ・ヴァンヴィテッリが古代ローマ風の美しい水道橋を建設したのも、ベルサイユを意識してのことかもしれない。

 『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』と『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002)では、惑星ナブーの女王で銀河共和国元老院議員になるパドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)のアミダラの宮殿として登場する。

 ほかにも、『ミッション:インポッシブル3』(2006)ではイーサン・ハントがIMF組織内の裏切りを暴くために乗り込むバチカン市国として、『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)の続編『天使と悪魔』(2009)でもやはりコンクラーヴェが行われるバチカン市国として撮影されている。

 日本映画では、織田裕二と天海祐希が主演したサスペンス『アマルフィ 女神の報酬』(2009)で、主題歌も担当したサラ・ブライトマンがコンサートを行う場所として使われている。

<次回はドイツのノイシュバンシュタイン城とイギリスのバッキンガム宮殿をご紹介します!>

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