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映画の目利き! 配給会社社長が選ぶ「絶対に観てほしい絶景&名シーン」②

『光りの墓』映画の舞台は“夢の中”

 「ムヴィオラ」の設立は2000年。代表の武井みゆきさんは「心が動いた映画。世界の扉になる映画。特に、私たちがやらなければ日本で配給されないかもしれないと感じた映画を中心に選んでいます」と語ります。

 最初にそう思った作品はドキュメンタリーの『スティーヴィー』(2006)だそう。『フープ・ドリームス』のスティーヴ・ジェイムス監督が大学生のときにビッグ・ブラザー(育ての兄)を引き受け、途中で疎遠になった少年スティーヴィーとの葛藤を描いています。自分自身をも取材対象としながら撮影した作品で、これこそ武井さんが買い付けなければ日本で観ることができなかったのではないかと思います。

 今回の見放題パックでも、ワン・ビン監督の『鉄西区 三部作』や『無言歌』、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『世紀の光』や『光りの墓』など、大手ではたぶん配給することを選ばないだろう貴重な作品ばかり。そこで武井さんが選んだ作品は、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『光りの墓』。原因不明の眠り病に罹った兵士たちと、古代の王の墓をめぐる謎を、現代社会の哀しみに重ねながらも優しさとユーモアに満ちた独特のタッチで描いた作品です。

『光りの墓』(C)Kick the Machine Films/ Illuminations Films

 「中国雲南省、チベット、台北、パレスチナ、ミラノ、南仏、パリ、ワルシャワ、ロンドン、オーストラリア、ペルー、ブラジル、コンゴと、かなり広範な地域の映画を配給してきましたが、あえての“タイ東北部、コーンケンの元は小学校だった病院”を選びました。

 上のグリーンライトの写真は、眠り病になった兵士たちに“光の治療”をしている名シーン。風景は映っていませんが、ロケ地は兵士たちの見ている“夢”というわけです。夢の中の王宮を歩くシーンもあり、観客もまた、眠っているのか目覚めているのか自分に問いかけたくなります。アーティストとして世界中を驚かせ続けているアピチャッポン監督の映画世界だからこその『絶景』だと思います」

『光りの墓』(C)Kick the Machine Films/ Illuminations Films

 ロケ地として“夢の中”をあげていただいたのははじめて。アピチャッポン監督の映画には、2001年にアテネフランセ文化センターで最初の長編『真昼の不思議な物体』を見てから夢中になったそう。

 「『すごい、すごい』とだいぶ興奮したのを覚えています。その後、東京フィルメックスがアピチャッポン監督の作品を毎作上映してくれたので、ずっと見続けて監督本人とも知り合いましたが、なかなか自社で買い付けて配給する勇気は出ませんでした」

配給のきっかけとなったのは、渋谷系ミニシアターの旗手だった、いまはなきシネマライズ。

『光りの墓』(C)Kick the Machine Films/ Illuminations Films

 「シネマライズさんがアピチャッポン監督の『ブンミおじさんの森』を買い付け、私に配給をやらせてくれたのです。そして、運がいいことに『ブンミおじさんの森』はカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。おかげで、それまでごく一部の人しか知らなかったアピチャッポンを、日本の興行に乗せられたんだと思います。その後は、自社で買い付けて配給をしています」

配給会社にも個性あり!

 見放題パックのラインナップ以外にも、名作を多数配給してきた各社。好きな映画の配給会社名を覚えておくと、次に選ぶ際に間違いなく素敵な作品に巡り合えるでしょう。また、「Help! The 映画配給会社プロジェクト」は、2弾、3弾と続くようです。参加している配給会社の名前、ぜひ憶えてみてください。