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映画の目利き! 配給会社社長が選ぶ「絶対に観てほしい絶景&名シーン」②

 新型コロナウイルス肺炎流行の影響を受けて劇場公開の延期が続く中、独立系配給会社が「Help! The 映画配給会社プロジェクト」を発足。自社配給作品を見放題かつお得な価格で提供するプログラム「配給会社別 見放題配信パック」を開始しました。こだわりの名作を配給してきた個性派各社だけに、そのラインナップは目移りするほど魅力的です。

 映画の目利きである各社の社長に、配信パックに含まれる自社配給作品から「絶対に観てほしい絶景&名シーン」を選んでいただくこの企画。今回の後編は、「ミモザフィルムズ」「ムヴィオラ」の2社が登場します!

『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』美しい絵の中で問われる「本当の豊かさ」

 2011年創立の「ミモザフィルムズ」は、ヨーロッパを中心に「個性的な作品や物議を醸すような作品を買い付けることをモットーにしている」配給会社。主なラインナップは、ステファヌ・ブリゼ監督が尊厳死を描いた『母の身終い』や、ベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞したモーパッサン原作の『女の一生』。イタリアの名匠ロベルト・アンドー監督の社会派ミステリー『修道士は沈黙する』など。

 また、実際に起きた誘拐事件を元にした『シシリアン・ゴースト・ストーリー』、イザベル・ユペール主演の『アスファルト』、シンシア・ニクソン主演の『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』、全編手話で描かれカンヌ国際映画祭批評家週間グランプリ受賞の『ザ・トライブ』など、文芸作品からドキュメンタリーまで実に幅が広いのです。

 代表・村田敦子さんのオススメは、「この映画を配給するために会社を設立したようなもの」と語る『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』。2006年のトロント国際映画祭で発見し、2014年に公開するまで足掛け8年。執念の賜物とも言える作品です。

『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』

 本作は、900年ものあいだ外部との交流を遮断し、会話が許されるのは集会など週に数時間という修道院の生活を撮影した長編ドキュメンタリー。一日の大半を個室で祈り、孤独と沈黙のうちに一生を終える修道士の生活は、異例のロングラン・ヒットを記録しました。

 監督のフィリップ・グレーニングは、フランス・アルプスの山中にあるラ・グランド・シャルトルーズ修道院に、2002年と2003年の2回に分けて泊まり込み、春夏秋冬を撮影。さまざまな映画賞を受賞しています。

 「2006年のトロント国際映画祭で、トロント市民と一緒に市民ホールで観ました。姿勢を正し、食い入るようにスクリーンを見ていた観客が印象に残っています。伝説の修道院に初めてカメラが入った! という特別感。フェルメールの絵画のような映像美。気がつくと修道士のひとりになったように感じ、ぜひ日本で公開したいな、と思いました。

 でも、実はそのときアポが入っていて、途中で劇場を出なくてはならなかったんです。ですので、配給を決めたのは日本に帰ってから。送っていただいたVHSを観て、再度確信しました。ですが、社内の反対にあって買い付けることはできませんでした」

『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』

 当時の村田社長は、別会社メディアスーツの社員として映画を買付けていたそう。その後、メディアスーツが日活に吸収合併されたため移籍しましたが、カルチャーギャップに苦しみ1年半で退職。自社での配給事業を模索していたメディアファクトリーに買付配給担当として入社します。しかし翌年、親会社からの要請で洋画買付配給事業から撤退。映画配給以外の仕事には興味がなかったので退職し、フリーランスに。

 「周防正行監督『ダンシング・チャップリン』、ラース・フォン・トリアー監督『アンチクライスト』の配給・宣伝プロデューサーなどをしながら、カンヌ国際映画祭に参加していたころ、ある会社の方から『法人にしてもらえると仕事をお願いしやすくなる』と言われ、ハタと気が付いたんです。個人だと信用がないので売ってくれない海外のセラーも、会社であれば『大いなる沈黙へ ―グランド・シャルトルーズ修道院』を売ってくれるかも! と」

 こうして独立系配給会社のミモザフィルムズが立ち上がった。

『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』

 「この『大いなる沈黙へ ―グランド・シャルトルーズ修道院』は、オープニングからクロージングまで、すべてがハイライトと言ってもいいくらい、どこを切り取ってもフェルメールの絵画のように静謐な作品です。2時間40分ですが、一瞬も気をそらされることのない不思議な魅力を持ったドキュメンタリー。本当の豊かさとは何か? じっくりと考えさせてくれる作品だと思っています」