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映画の目利き! 配給会社社長が選ぶ「絶対に観てほしい絶景&名シーン」①

『5時から7時までのクレオ』パリの街の空気を存分に感じる風景

 1989年に映画の輸入会社として設立されたザジフィルムズは、92年にアメリカ映画『アフター・ダーク』で劇場配給を開始。98年には渋谷系ブームの中でリバイバル公開したジャン=リュック・ゴダール監督の『女は女である』が大ヒットしました。

 以降、ゴダール、アニエス・ヴァルダ監督『落穂拾い』、ジャック・ドゥミ監督『ローラ』などヌーヴェルヴァーグの巨匠から、『こわれゆく女』のジョン・カサヴェテス監督などの特集上映、そして『あの頃、君を追いかけた』のギデンズ・コー監督や『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のナタウット・プーンピリヤ監督などアジアの才能ある監督を発掘するなど、幅広い才能と作品を日本に紹介してきました。そんな同社の代表・志村大祐さんのイチ押しは、アニエス・ヴァルダ監督作品『5時から7時までのクレオ』(1961)。

『5時から7時までのクレオ』(c) agnes varda et enfants 1994

 「ザジフィルムズの提供する30作品中、舞台として最も多いのがパリ。ヌーヴェルヴァーグの作品群は、主に低予算で制作されているため、結果的に監督の生活圏内、すなわちパリの街中でロケされている作品が多いのです。ヴァルダの代表作の1本『5時から7時までのクレオ』もそう。ポン・ヌフ橋のある1区から始まり、ヴァルダの制作会社がある14区のモンパルナス周辺やモンスリ公園、13区の病院が印象的に登場します」

 『5時から7時までのクレオ』は、歌手であるクレオが、ガンの診断結果を待つ5時から7時までをリアルタイムで描いた作品。

 「ヴァルダの描くパリは普段着のパリ。エッフェル塔も凱旋門も登場しませんが、大通り、路線バス、カフェ、街の広場の大道芸と、パリの街の空気を存分に感じる風景が切り取られています。もっとも印象的なのはラストシーン。13区に実在するピティエ=サルペトリエール病院の前庭。走り去る車からとらえたヒロイン、コリンヌ・マルシャンの毅然とした佇まいの美しさです」

『5時から7時までのクレオ』(c) agnes varda et enfants 1994

 2019年3月に亡くなったアニエス・ヴァルダ監督は、その前月の2月に開催されたベルリン国際映画祭に出席。60年以上に及ぶ自身の創作の歴史を綴ったセルフ・ポートレイト『アニエスによるヴァルダ』を上映しました。

 「ヴァルダ監督が生活圏内だけで撮った、最も狭いロケーションの映画と言えば、ドキュメンタリー『ダゲール街の人々』。子育て中だったヴァルダは遠出が出来ず、事務所からカメラのケーブルが届く半径50メートルの商店街の人々を描いて、一本の映画にしました。恐れ入る作家魂です」

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