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オーナーはカンヌ公認写真家! 古民家カフェ&写真館「ケープルヴィル」でフランス気分

垣間見た北野武監督の素顔

 その過程を経て、今では最前列にまできたわけだが、ここは目立つ位置だけに品行方正さも求められるという。

 「撮影エリアから飛び出して、レッドカーペットを歩くスターに突撃するようなカメラマンは、最前列に撮影位置を取ることはできません。私たちの行動は常に映画祭側にチェックされていて、マナー違反を動画で証拠として抑えられたらOUTで、即、パス剥奪です」

 華やかな世界の熾烈な舞台裏秘話だが、間近でスターの意外な表情に触れられるという特権がある。北野武監督が『菊次郎の夏』(1999)で第52回のコンペティション部門に選ばれた時には、北野監督の珍しい素顔を垣間見た。

飾られている写真にもたくさんの“素顔”が(撮影:Avanti Press)

 公式上映では約15分にわたってスタンディングオベーションを受け、北野監督も号泣するほど(本人は「ドライアイで涙が出た」と弁明)感動。その後、上映会場から迎えの車に乗り込む北野監督を撮影していたところ、北野監督がわざわざ車の窓を開け、「姉ちゃん! 今日の上映凄かったよな!」と若山さんに声をかけてきたのだ。

 「あの時は、北野監督も余程興奮していたのでしょうね」

日本で店を開いたきっかけは?

 フランスの生活にどっぷり浸っていた若山さんが帰国したのは、2011年の東日本大震災がきっかけだ。「故郷がこのままなくなってしまうのではないか」。そんな危機感を抱いた若山さんは帰国するのは今しかないと決断。同じ写真家だったフランス人の夫とは話し合いの末に別々の道を歩むことにし、娘2人と共に日本で暮らす決断をした。

左/この日は若山さんの愛犬もご出勤 右/フランス国旗が目印(撮影:中山治美)

 カフェと写真館の経営は、友人に誘われての決断だったそうだが、パリのカフェ文化にも精通しているであろう若山さんなら実に最適な新規事業に思える。しかし、軌道に乗るまではやはり苦難があったようだ。

 「最初、道路に面したガラス戸は何も書いておらず、店内がよく見えるように。席も、外が見えるように配置していたんです。ところがカフェ・コーディネートをしている友人から『見えすぎると日本人は入りづらい』と指摘されて、ガラス戸にはなんでもいいから文字を書いて目隠しになるようにし、席の配置も変えました。パリでは外に席を並べて、道行く人を眺めながらお茶の時間を楽しむのが当たり前ですけど。そういうところで日本に合わせた店づくりもしなければ痛感しました」

写真館では写真集の制作も

 一方で写真館では、若山さんのパリでの子育て経験が生きているという。若山さんは子どもの成長に合わせて、毎年、一冊の写真集にまとめていた。

 そこで、家族や友人たちにも好評だったという写真集制作を写真館でも始めたところ、谷根千エリアに増えてきた若いファミリー層からの需要が増え、今では出産祝いや誕生日はもちろん、七五三、成人式と記念日に合わせた家族写真の撮影など活動の幅が広がっている。

その家族のストーリーや気持ちが伝わってくるような写真集(撮影:Avanti Press)

 「スターの撮影は15分や20分と短時間での勝負となるけど、家族写真は1〜2時間の撮影の合間で家族の関係性なども見ながら写真集の構成を考えていくので、一つの物語を考えているよう。映画制作と似ているなと思って、それがすごく楽しい」

 今後も谷根千に腰を落ち着かせながら、カンヌやヴェネチアなど国際映画祭取材を続けていく。せっかく手にしたカンヌのレッドカーペット最前列の地位を維持していくためでもあるが、「やはり刺激的なんですよね。一方でケープルヴィルの仕事があって、それが今、いいバランスになっている」という。

フォトスタジオでは、フランス在住のアーティスト・秋山あいさんの作品を背景に撮影できるのも魅力の一つ(撮影:中山治美)

 現在は新型コロナウイルス流行の影響で自粛しているが、フランス語講座やワインやチーズ会、撮影会なども開催している。ここで本場の文化に触れれば、フランス映画を理解する一助ともなりそうだ。

ケープルヴィル
電話:03-5834-8500
住所:東京都文京区千駄木3-42-7

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