ツイート シェア

「スパイの首都」の入口と出口~ドイツ・ベルリン ②

 ドイツの首都・ベルリンはヨーロッパを代表する観光都市。ベルリンの壁やシャルロッテンブルク宮殿など長い歴史が築いた観光スポットには、ロンドンとパリにつぐ数の観光客が集まるそう。また、それらの多くは数々の名作映画や小説に登場する重要な舞台でもあります。

アトミック・ブロンド ATOMIC BLONDE

 冷戦末期の東西ベルリンが舞台の 『アトミック・ブロンド』(2017)には、MI6(英国秘密情報部)の女性スパイ、ロレーン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)が登場します。任務は極秘情報リストの奪還。MI6ベルリン支局長デヴィッド・パーシヴァル(ジェームズ・マカヴォイ)との共同作戦ですが、彼女にはもうひとつ別の任務がありました。

 それはMI6内のダブルスパイを見つけること。「ベルリンの壁」崩壊直前の混沌とした雰囲気のなか、各国スパイが入り乱れての戦いが繰り広げられます。

 「スパイの首都」とも呼ばれた東西ベルリン。そこで展開するスパイ作品といえば、裏切りや寝返り、密告などが作るウェットなムードが定番でした。本作もリスト奪還&ダブルスパイという「あるある」なストーリーですが、ふんだんに取り入れられた80年代ソングとファッションが現代的なスピード感を強調しています。そこに、クールで腕っ節が強いロレーンのキャラクターが重なると、定番的な古臭さは見事消滅。ポップでタフなニューヒロイン像が浮かび上がります。

 本作で使用されたベルリンのロケ地は多数ありますが、ここではロレーンがベルリン入りする「旧ベルリン・テンペルホーフ国際空港」をご紹介しましょう。西ベルリンは東ベルリン内で壁に囲まれたエリア、いわゆる飛び地。この空港は西ベルリン側となり、多数の映画や小説などに登場しています。歴史は古く、開港は1923年のワイマール共和国時代でした。

ターミナルビル内には建設途中で放置された場所も。このまま完成する日は来ないそう(撮影:goo映画編集部)

 現存するターミナルビルは1941年、ヒトラーによる「世界首都ゲルマニア」構想の一環として建設されたものです。第二次世界大戦後の1948年には、ソ連が仕掛けた「ベルリン封鎖」に対抗すべく、物資空輸作戦「ベルリン大空輸」の舞台になります。

 以後は冷戦を経て2008年に閉鎖され、2010年5月に市民公園としての再出発。滑走路や当時の看板が残る箇所がそのまま開放されました。このため、2010年6月には緊急着陸機の受け入れで一日限りの復活を果たしたことも。

滑走路の上をサイクリング。犬の散歩やバーベキュー、ジョギングなど市民にとっては憩いの場です(撮影:goo映画編集部)

 ロケ地としての協力は本作のほか『ブリッジ・オブ・スパイ』(2015)など多数。『ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス』(2014)と『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』(2015)では、ターミナルビルの外観が大胆に使用されました。崩れかかった廃墟としての登場ですが、実際のターミナルビルを装飾しています。

 ターミナルビル内部は見学ツアーでのみ入場可能。チェックインカウンタはもちろん、建設途中のまま放置されたエリアやアメリカ軍が使用していた娯楽室とバスケットコートなど、見ごたえは十分です。

『ハンガー・ゲーム』2作品で廃墟に扮したターミナルビル。なかなかの役者ぶりです(撮影:goo映画編集部)

 そしてもう1本、この空港を語るにおいて欠かせない作品があります。2018年のベルリン国際映画祭パノラマ部門で上映されたドキュメンタリー 『Central Airport THF』(日本未公開)。2015年から空港内に設置されている難民キャンプがテーマです。ドイツと移民の関係を垣間見ることができる作品として話題を呼びました。

 空港としての役目は終えましたが、取り巻く歴史はいまも続いています。

旧ベルリン・テンペルホーフ国際空港 Flughafen Tempelhof WEB
英語ガイドツアー  13:30より約2時間(水・金・土・日)

ブリッジ・オブ・スパイ Bridge of Spies

 スティーヴン・スピルバーグ監督、マット・チャーマン&コーエン兄弟脚本、トム・ハンクス主演と豪華な顔ぶれで話題を呼んだ 『ブリッジ・オブ・スパイ』(2015)。冷戦時代のスパイ・捕虜交換で米側の交渉人だった実在の人物、ジェームス・ドノヴァンを描いた作品です。本作でジェームズが初めて挑む交渉、交換対象はアメリカで捕らえられたソ連のスパイと、ソ連で撃墜された米偵察機のパイロットでした。

 交渉と交換の場所は東独の東ベルリン。ソ連のバックアップを受けて建国された東独は事実上の「衛星国」であり、東側と西側の接触地点として利用されました。スパイ交換にかけてはまさに最適の場所といえるでしょう。このグリーニッケ橋は本作タイトルにある「スパイの橋」として、実際にスパイ交換が行われていました。

現在は車両が通行する普通の橋ですが、脇には当時の写真と解説のプレートが設置されています。写真撮影の際は車に注意(写真:goo映画編集部)

 ベルリン郊外、ポツダムに近いヴァンゼー駅からバスで約15分。ハーフェル川にかかるグリーニッケ橋は当時、西ベルリンの西の外れに位置していました。このため、東西に伸びる端の西側が東独、東側が西独です。対象者を橋のたもとに連れ、次に中央へ歩かせて交換するスタイルは、実際の写真やフィルムに残されています。

 『ブリッジ・オブ・スパイ』の撮影は2014年。現地紙の報道によると紙製の人工雪で覆われていたそう。

西ベルリン側からの眺め。見学後は路面電車でポツダム駅へ出ることができます(写真:goo映画編集部)

 東ベルリン側に建つ屋敷「ヴィラ・シェーニンゲン」は当時、交換を待つスパイたちが控え室として利用したそう。現在は博物館となり、『ブリッジ・オブ・スパイ』にも登場した橋の上の東独国章などが展示されています。もちろん当時の実物です。また、東独家庭のリビングを再現したスペースはかなりのクオリティ。

 併設のカフェでは2018年W杯のパブリックビューイングが行われていたそう。「スパイの橋」のたもとで沸く歓声。当時は到底考えられなかった状況に、時の流れを感じます。

グリーニッケ橋 Glienicker Brücke & ヴィラ・シェーニンゲン Villa Schöningen WEB
住所 Berliner Straße 86, 14467 Potsdam

スパイの足跡はまだまだたくさん!

 これまで多数の映画やドラマ、小説に登場したMI6こと英国情報局秘密情報部(SIS)。実際のオフィスはベルリンのウンター・デン・リンデン通り沿いにありました。現在は何の変哲もないビルですが、ひそかに萌える人はいるはずのスポットです。

地元の人もほとんど知らないため、写真を撮っていると「なんでこんな場所を?」という目で見られます(写真:goo映画編集部)

 ベルリンのスパイをもう少し学びたくなったら「スパイ博物館」へどうぞ。元「スパイの首都」ですがオープンは2015年と遅く、当時は「やっとできた」「いままでなかったのがおかしい」との声もありました。

「ドイツ・スパイ博物館」でのオススメは東西ベルリン内のスパイ拠点が一覧できるインタラクティブマップ。控えめに言っても多すぎます(写真:goo映画編集部)

 盗撮・尾行などのスパイグッズやスパイ関連事件の説明パネル、東西ベルリンのスパイ関連スポットを示すインタラクティブマップなど読ませる展示が多数。『ブリッジ・オブ・スパイ』でテーマになったグリーニッケ橋スパイ交換のミニチュア模型も必見です。徐々に展示物が増え、ついには赤外線レーザーをくぐるコンセプトの脱出ゲームも登場しました。タイムを競う形式で、子どもたちに人気です。また、ミュージアムショップにはスパイ関連書籍やスパイグッズが。

 元「スパイの首都」ではいま、スパイが立派な観光資源になりつつあるようです。

ドイツ・スパイ博物館 Deutsches Spionage Museum WEB
住所 Leipziger Platz 9, 10117 Berlin-Mitte
営業時間 月~日 10:00~20:00 無休


関連記事