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【個性的すぎる映画館】ディープなサイレント映画が待つシネマテーク「プラネットプラスワン」

フィルム修復や字幕、上映作品の資料作りも独自で

 それにしても、富岡さんはなぜシネマテークを運営するに至ったのだろう? アーカイブしている16ミリフィルムはアメリカから購入したものが多いという。そのフィルムを修復し、字幕も独自で制作。観客に配布される上映作品の資料も自作だ。

フィルム修復作業中の富岡さん(撮影:Avanti Press)

 「フィルムのベースは『プラネット映画資料図書館』(現神戸映画資料館:神戸市長田区腕塚町5-5-1 アスタくにづか1番館北棟2F)の安井喜雄さんが集めていたフィルムです。僕は関西学院大学の映画研究部にいたんですが、当時の関西で昔の映画を観られるところはプラネットしかなかった。東京の『アテネ・フランセ文化センター』でやったやつを、プラネットでもやっていて、字幕なしでしたけどよくそれを観に行っていました」

ここで様々な人と出会い、90年代初めには黒沢清監督と仲良くなり、関西テレビで監督が撮った『もだえ苦しむ活字中毒者 地獄の味噌蔵』の脚本を書いたりしたという。

山積みのフィルム(撮影:Avanti Press)

 「その後、デレカン(ディレクターズ・カンパニー)に出入りしていた生駒隆始がいたのもあって、東京に行きます。『地獄の警備員』(1992)の脚本を書いた後、1992年にデレカンが潰れて、1995年の1月に阪神淡路大震災、3月に東京で地下鉄サリン事件があって、大阪に帰ってきた」

左/コーヒーはネスプレッソ 右/富岡さんが作る上映作品の配布資料(撮影:Avanti Press)

 このときの「プラネット」は場所がなく、まったく上映をしていなかった。一方で、若い助監督や監督が映画を観ていないことが気になっていたという。

 「観てないことはカメラワークを見ればすぐ分かります。だから、若い人が映画を観られる場は大事だなと。僕はプラネットがあったから知り合えた人もいた。そんなとき、安井さんがやっていたスナックのあるビルで一室が空いて、“やりませんか?”と声をかけてもらった。別の場所で安井さんがやっていた上映会(PLANET studyo+1)を引き継いだ感じです。1995年の12月、ちょうど映画100年目の年でした」

若手映画監督を育成する場としても

 その後に転居を経て、現在の中崎第2ビルへ。1階はケーキプレートが人気のカフェ「太陽ノ塔」だ。経営はまったく別だが、このビルを探しているとき、同カフェのオーナーから「映画館の1階にカフェがあるっていいじゃないですか」と言われ、一緒に借りたのだそう。

人気のカフェ「太陽ノ塔」(撮影:Avanti Press)

 今や「太陽ノ塔」は支店が何店舗もある大人気カフェに成長。「俺もカフェやっておけばよかったなあ」と富岡さんは笑うが、自身の活動も精力的だった。ここを拠点に、若手監督への上映場所の提供や、「CO2」(シネアスト・オーガニゼーション大阪)を創設しての若手監督の育成まで行ってきている。きっかけは、大阪芸術大学の卒業制作『鬼畜大宴会』(1998)を携えて現れた熊切和嘉監督だ。

 「音楽系はライブハウスから若い人が出てくる。映画にもそういう場が必要だと思っていたんです。それが実現したのは、熊切や山下敦弘らが来たから。あの後しばらく、大阪芸大の卒業制作上映はうちでやっていました。

 その流れと経験があったので、ある会社が大阪市の予算で映画祭をやってほしいと言ってきたとき、『CO2』の構想を思いついたんです。映画祭はもういいけど、助成金で作らせるのはありかなと。全州映画祭の『三人三色』の受け売りですけどね(笑)。上映も『CO2』もいまは、直接はやっていませんが」

富岡さんがいなくなった後はどうなる?

 3〜4年前、「プラネットプラスワンって富岡さんがいなくなったらなくなるんですよね?」と言われてショックを受けたという。

細い階段を上がった先にプラネットプラスワンが(撮影:Avanti Press)

 「誰か引き継ぐとか、そんな先のこと全然考えていませんでした。自分の楽しみの延長でやっているから。圧倒的なフィルム量を誇る『神戸資料館』もそうですよね。うちのスタッフは、うちだけじゃ食えないからみんな別の仕事をしていて、それでもやりたいという映画好きや映写機を触りたい人が来る。でもプログラムまでできるようになるのは、なかなか難しい。そこは教えようがないので。こういう場所は残すべきだと思っています。ただ、先を考えるとどうか分からないですね」

 同時代にプラネットプラスワンがある奇跡。シアターへの階段は細いが、富岡さんの懐は広い。スタッフ、サイレント映画の演奏者は、募集中だという。我こそはと思う方はその懐に飛び込んでみてはいかがだろう。キュートな入口の扉を開けると、そこにはディープな映画の愉しみが待っている。

プラネットプラスワン
住所:大阪市北区中崎2-3-12 中崎第2ビル2F
電話番号:06-6377-0023
スケジュールなどの詳細はFacebookページ(@planetstudyoplusone)をご覧ください。 

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