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グザヴィエ・ドラン監督が「名所を見せない」理由とは?『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』

 レオナルド・ディカプリオの『ギルバート・グレイプ』(1993)が公開されたとき、とんでもない演技力のある少年俳優の登場に世界は驚いた。『太陽と月に背いて』(1995)、『ロミオ+ジュリエット』(1996)では改めてその美貌に魅了され、『タイタニック』(1997)で完落ち。完落ちした中には、カナダのグザヴィエ・ドラン監督も含まれていたという。

 『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』は、『タイタニック』を観たドラン監督がディカプリオにファンレターを書いた実体験がベースになっている。ドラン監督は当時8歳。本作の主人公ルパート(ジェイコブ・トレンブレイ)同様、実際に子役だった。

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』3月13日(金)より、新宿ピカデリー他 全国ロードショー 配給:ファントム・フィルム/松竹 (c) 2018 THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD.

Story:大ヒットTVドラマシリーズに主演していたニューヨーク在住の人気俳優ジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)の訃報が流れる。自殺、事故、はたまた事件か。死因は明かされないまま10年の月日が流れ、21歳になった俳優ルパート・ターナー(ベン・シュネッツァー)は、ジョン・F・ドノヴァンの死の直前まで交わしていた手紙を本にまとめた。スキャンダラスな空気をまとったこの本の取材のため、環境問題を専門とするジャーナリストのオードリー(タンディ・ニュートン)がプラハへ差し向けられる。オードリーはあからさまに興味のない態度でルパートの話を聞き始めるが、彼が語る2組の母と息子の物語にのめり込んでいく――。

2006年のNYが表現するジョン・F・ドノヴァンの“現状”

 舞台は2006年のニューヨークとロンドン、そして2016年のプラハで展開する。2006年当時、TVドラマシリーズの主演としてブレイクしたジョン・F・ドノヴァンはニューヨーク在住。マンハッタンは、ブロードウェイなど舞台のイメージが強いが、テレビの町でもある。アメリカのテレビ局の多くが、ニューヨークに本社を置いているためだ。

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』3月13日(金)より、新宿ピカデリー他 全国ロードショー 配給:ファントム・フィルム/松竹 (c) 2018 THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD.

 しかしドラン監督は、マンハッタンの観光名所を撮ることは意識的に避けたようだ。マンハッタンだと分かるのは、“アベニュー”を俯瞰で移動撮影する場面だけ。それですら、象徴的なランドマークは映さない。町のどこにいるかに意味を持たせるのではなく、「高く高く上へと伸びたマンハッタンそのもの」を描こうとしたのだろう。

 ジョン・F・ドノヴァンの人気の度合いについて、ドラン監督は「ジェニファー・ローレンスの10倍以上」と表現している。また、演じたキット・ハリントンもTVドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』でスターとなったが「僕に似ていながら、まったく違う」と語った。「僕らの業界にはジョンのような俳優が大勢いて、皆、苦しんでいる」。

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』3月13日(金)より、新宿ピカデリー他 全国ロードショー 配給:ファントム・フィルム/松竹 (c) 2018 THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD.

  “メインストリーム”のテレビドラマで人気を得ながらも、それを受け止めるキャパシティを持たないまま、また愛が同性へと向かうのを隠したまま、ただひたすらに高みを目指すジョン・F・ドノヴァン。ドラン監督は彼のそんな姿を、マンハッタンにたとえたのかもしれない。

2006年のロンドンに漂うルパートの閉塞感

 そんなジョン・F・ドノヴァンと文通をする子役のルパートは、母サム・ターナー(ナタリー・ポートマン)とロンドンに住んでいる。演じるジェイコブ・トレンブレイは、『ルーム』(2015)、『ワンダー 君は太陽』(2017)で高い評価を得た子役だ。ナタリー・ポートマンもまた、かつて子役だった。

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』3月13日(金)より、新宿ピカデリー他 全国ロードショー 配給:ファントム・フィルム/松竹 (c) 2018 THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD.

 女優だった母サムは、結婚してルパートを授かり、離婚した。そしてアメリカからロンドンに移住すると同時に俳優業を辞め、演技者としての自身の夢をルパートに託す。しかし、ルパートはその“子役”であるせいで、いじめにあっている。加えて転校生であること、ジョン・F・ドノヴァンと同じく心がときめくのが同性であることや、彼との文通も、いじめに追い打ちをかける。

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