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名脇役・佐藤蛾次郎さんのパブ「Pabu 蛾次ママ」 名物は渥美清さんも愛したカレー

 国民的人気シリーズ『男はつらいよ』の源公こと源吉役でおなじみの名脇役、佐藤蛾次郎さんが経営しているのが「Pabu 蛾次ママ」だ。高級クラブが建ち並ぶ銀座で、気楽に飲んで歌えるパブだが、名物は『男はつらいよ』のキャスト、スタッフが愛してやまない「寅さんカレー」(税抜1000円)。その味の秘密とは……?

『男はつらいよ』シリーズの源公こと源吉役でおなじみの名脇役、佐藤蛾次郎さん(撮影:平辻哲也)

長寿店の秘密は「儲けようとまでは思っていないから」?

 日本一のサラリーマン街、新橋駅から徒歩5~6分の銀座8丁目。高級クラブなどが入居するビルの9階が「Pabu 蛾次ママ」だ。お酒大好きの蛾次郎さんは、1997年10月に同店をオープンした。

 「飲むのが好きだったんでね。最初は新橋に小さなスナックを持って、次は銀座の丸源ビルの地下3階、この店は3軒目なんだ」

 「蛾次ママ」の店名でも分かる通り、以前は蛾次郎さんの妻で元女優の和子さんがママを務めていた。2016年7月30日に和子さんが多発性骨髄腫のため68歳で亡くなってからは、蛾次郎さんと長男で俳優の佐藤亮太さんが切り盛りしている。

和子さんの写真を囲む長男の佐藤亮太さん(左)と蛾次郎さん(撮影:平辻哲也)

 店は約30席。壁には『男はつらいよ』シリーズのポスター、友人でもある千葉真一さんが出演したクエンティン・タランティーノ監督のアクション『キル・ビル』(2003)のサイン入りポスターなどが飾られている。

店内にはポスターや思い出の詰まった写真などが多く飾られている(撮影:平辻哲也)

 料金はウイスキー・焼酎 水割り(飲み放題)、ポップコーン(食べ放題)、カラオケ(歌い放題)で1時間3500円。以後は30分ごとに500円加算され、おつまみは各500円。以上の合計金額に10%のサービス料+消費税という明瞭会計だ。

 「ほかに比べて、うちは安いですよ。損は困るけれど、儲けようとまでは思っていないからね。それでも、20数年やって来られた」

左/どこか懐かしさを感じる店内 右/これぞ明朗会計!(撮影:平辻哲也)

渥美清さんも愛した名物「寅さんカレー」

 時に蛾次郎さんがマイクを持つこともあるそうで、十八番は河島英五の「酒と泪と男と女」。飲んで歌えるパブだが、名物は渥美清さんも愛したという「寅さんカレー」だ。80年代後半、蛾次郎さんが『男はつらいよ』の撮影現場で振る舞って大好評に。以降、蛾次郎さんは『男はつらいよ』シリーズだけではなく、山田洋次監督作品の現場でもケータリングを頼まれている。

 「第48作『紅の花』(『男はつらいよ 寅次郎紅の花』・1995)の時、渥美さんが『蛾次郎、L(大盛り)をくれ』と言ってね、『おいしい、おいしい』と食べてくれた。それが、俺が、渥美さんから聞いた最後の言葉だったな」

多くの人が愛してやまない「寅さんカレー」(撮影:平辻哲也)

 話題を呼んだシリーズ最新の第50作『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019)の本読みでは、この寅さんカレーが復活。山田組のスケジュールには「2018年11月22日、カレーの日」と書き込まれるほどスタッフ、キャストを喜ばせた。

 「みんな、幻のカレーが食べられると喜んでくれたね。1人3杯ずつ、おかわり自由としたから、百数十人分は作ったんじゃないかな」

 出来上がったカレーは薬膳の匂いが立ち込め、食すると、複雑な味が口の中で広がる。胃袋に入れば、体温が1、2度上がる感覚。濃厚な漢方のエキスが身体中を活性化してくれるようだ。

焼酎に漢方が漬け込まれているボトル。よく見るとタツノオトシゴもひたひた……(撮影:平辻哲也)

 寅さんカレーの美味しさの秘密は18年前から焼酎に漬け込んだ高級漢方。韓国や香港から仕入れた高麗人参、タツノオトシゴ、ニンニク、生姜、クコの実、ウコンなどを漬け込み、そのエキスをカレーに入れて煮込むのだ。

 「仕込みは3カ月に1回。寸胴鍋に薬膳のエキスを入れて、煮込んで、3カ月間、冷凍庫で熟成させる。この冷凍熟成が旨味を出してくれるんだよ。お客さんには解凍して、温めて出しているんだ」

『男はつらいよ』ファン&木村拓哉ファンが殺到!?

 「Pabu 蛾次ママ」には、このカレーを目当てに全国から『男はつらいよ』ファンもやってくる。初めて店を訪れる人にプレゼントしているのは、撮影中に撮った蛾次郎さんと渥美さんのツーショットのコピー写真とサイン。

 「これは劇中の一コマではないんだよ。映画では源公はいつも寅さんを見上げるように見るんだ。この写真は渥美さんと俺が同じ目線で話をしているだろ。オフショットなんだよね」

撮影中の和やかなムードが伝わる貴重な一枚

 また、山田監督の『武士の一分』(2006年)に主演した木村拓哉さんも、寅さんカレーを愛する一人だ。2009年にドラマ「Mr. BRAIN」(TBS系)に主演した際、PRの一環で出演したクイズ番組「ぴったんこカン・カン」のロケで「Pabu 蛾次ママ」に来店。寅さんカレーに舌鼓を打った。

 「放送後、ファンが『木村さんが食べた場所で同じものを食べたい』と来てくれたこともある。スプーンの置き方から何から何まで覚えているんだよね。さすがファンだなと思ったね」

 あまりの美味しさに「ランチにカレーをやったらどうか?」とのリクエストもあるが、「それはないね。うちはパブであって、カレー屋ではないんで」と答える。あくまでもカレーはメニューの一つ。飲みに来た折に食べて味わって欲しい、とのこと。ただ、カレーはストックが切れてから作るため、タイミングによっては品切れのときも。カレー目当ての人は念のため、電話で確認して欲しいそうだ。

寅さんカレーと蛾次郎さんで日々の“つらさ”を吹き飛ばす!

 店を預かる亮太さんは「最大の売りは、佐藤蛾次郎がいる店。これに尽きますね。役者の仕事がない日は店に出て、お客さんと会話を楽しんだり、歌を歌ったりしています」とPR。

左/一目見てわかる似顔絵 右/店内いたるところに“佐藤蛾次郎がいる店”。こちらは奄美黒糖焼酎「島有泉」(撮影:平辻哲也)

 「もともと親父とママが始めた店なので、その雰囲気を壊したくはないと思っています。銀座の中でも割と安く飲める店だと思いますので、みなさんで飲んで歌って楽しんで欲しいですね。その締めに寅さんカレーの注文をお願いします」

 男も女も日々つらいことはあるかもしれないが、寅さんカレーがそのつらさを吹き飛ばしてくれるだろう。

Pabu 蛾次ママ(ぱぶ・がじまま)
電話 03-3571-8781
住所 東京都中央区銀座8-7-11ソワレド銀座第2弥生ビル9F
営業時間 18:30〜24:00(日祝除く)

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