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人気アナは“映画人の祭典”にどう切り込む?「日本アカデミー賞」新司会者・羽鳥慎一さんインタビュー

 “映画人による映画人のための賞”と言われる日本アカデミー賞。そう呼ばれる理由は、投票権を持つ日本アカデミー賞協会会員3962人が、劇場映画に関わる仕事に3年以上従事している人々だから。

 2020年1月15日、まず第43回の優秀賞受賞者・受賞作が発表された。その中から決まる最優秀賞の発表と授賞式は、3月6日(金)に行われる。授賞式当日、会場に集まるのは、登壇者はもちろん、裏方として働く人々もすべて映画人。すでに公開も終わり、会う機会のない受賞作品のスタッフ、キャスト、宣伝チームは、お祝いムードも手伝ってテンション高めに再会を喜び合う。やがてそれは作品の垣根を越え、会場全体を同窓会的ムードに包み、式が終わった後も皆を立ち去り難く語り合わせるのだ。

 そんな日本アカデミー賞の司会者は、近年は6年連続計9回も務め、すっかり顔となっていた西田敏行さんだった。その西田さんに代わって、2020年、司会に抜擢されたのは羽鳥慎一さんだ。アナウンサーである羽鳥さんに、俳優である西田さんの司会がどう映っていたのか? またそんな映画の祭典の司会に臨む羽鳥さんは、日本アカデミー賞をどんな場と考えているのか、うかがった。

羽鳥慎一さん(撮影:Tomoko Ishikawa)

西田敏行から受け取ったバトンの重み

――日本アカデミー賞の顔となっていた西田さんから司会を引き継がれたわけですが、依頼の際、具体的なお願いはありましたか?

羽鳥 羽鳥さんらしさを出してください、と言っていただきました。西田敏行さんは俳優さんですから、映画の撮影現場の苦労を知る仲間として、受賞者の方々にインタビューされ、楽しい雰囲気でさまざまな言葉を引き出されていました。西田さんのスタイルには憧れますが、私にそれはできませんので、その立場でのお話は、今年、司会でご一緒する安藤サクラさん(前年の最優秀主演女優賞受賞者)にお任せして、視聴者の方に近い立場で映画を観て感じたことをしっかりうかがっていければと思います。

左から第43回日本アカデミー賞の司会を務める羽鳥慎一さんと安藤サクラさん(撮影:Tomoko Ishikawa)

――羽鳥さんに、視聴者側の視点に立ってナビゲーションいただけるのは心強いですね。どんな授賞式にしたいですか?

羽鳥 一つの映画ができるまでには、演じる方、スタッフの方、大勢の人が関わられます。苦楽あるなかで完成する作品について、みんなが笑顔になるお話を引き出し、語っていただければと思っています。受賞者という主役を輝かせる質問をしっかり振っていければと思っています。

――ではありますが、羽鳥さんは華がある方なので、授賞式を仕切っていただきながら、受賞者の方々とよい化学反応を起こしてくれることを期待されているのかなとも思いました。

羽鳥 なるほど。“ザ・アナウンサー”な仕事にプラスして、もうちょっと踏み込んだ聞き方もしていいということでしょうか?

――そうかもしれませんね。

授賞式で印象的だったのはこのエピソード

――これまでの授賞式で気になったエピソードはありますか?

羽鳥 「オールナイトニッポン」のリスナーが選ぶ“日本アカデミー賞 話題賞”という賞があるんです。第23回の作品部門を『無問題(モウマンタイ)』(1999年)が受賞し、主演の岡村隆史さんが登壇したので、私は一緒にやっているバラエティ番組として、当時、取材にうかがいました。岡本さんはちょっとアウェーな空気に何か爪痕を残そうと思われたのか、壇上で「目標の俳優は、高倉健さんです」とスピーチしたんです。そうしたら会場が「そういうふざけた空気はいらないのよ」とばかりに少しざわざわした。

 そのとき『鉄道員(ぽっぽや)』(1999)で受賞されていた高倉健さんが、スッと立ち上がって拍手されたんです、本気で。それと同時に会場の空気が一変し、祝福モードになった。高倉健さん、すごいなと思いました。あとで岡村さんに聞いたら「本当に助けられた」と言っていました。あのときの高倉健さんの存在感は本当に格好良かったですね。

――高倉さんは、いち俳優として、同じく俳優である岡村さんにエールを贈られた。日本アカデミー賞が掲げる“映画人による映画人のための賞”を体現されたのかなと思います。

羽鳥 みんなが「またまた~」と揶揄する気持ちでいたところ、高倉さんは映画人として迷いなく立ちあがり、拍手を贈られた。本当にすごい方だなと思います。

――そういう場面、歴史が重ねられることで、この賞の“輪郭”ははっきりしていくんでしょうね。そして、見ている方は「そういう場面をもっと目撃したい」、映画人は「いつかあの場に行きたい」、受賞者は「またここに戻ってきたい」という気持ちになるのかなと思いました。

羽鳥 安藤さんは、「あんなに素晴らしい場はありません。レジェンド(会長功労賞受賞者など)とも会えるし」とおっしゃっていました。だから司会として壇上に立つことを、「特等席」と表現されたんじゃないかと思います。

――羽鳥さんにもそんなエピソードをさりげなく引き出していただけることを期待しています!

羽鳥 猛勉強します(笑)。西田さんはそれを自然にやっていらっしゃったわけですよね。その域にはいけませんが頑張ります。

司会・羽鳥慎一を震えさせる登壇者は?

――今回の受賞者の中で、お会いしたら震えそうだと思う方はいますか?

羽鳥 今回の受賞者ではありませんが、ちゃんとお目にかかるのは初めてなので、安藤サクラさんです。毎日、連続テレビ小説「まんぷく」(2018年・NHK)を観ていましたので、「今日(記者会見)は安藤さんに会うんだ」と思ったらドキドキしました(笑)。言いませんでしたけれどね(笑)。

――男性では?

羽鳥 今回に限っては、岡村さん以外全員です(笑)。受賞者リストに岡村さんの名前を見つけたときは、心からホッとしました(笑)。

――突っ込んだお話をしてみたい方は?

羽鳥 優秀助演男優賞を受賞された柄本佑さんですね。おそらく安藤さんは、俳優として作品について質問されると思うんですが、僕はいける範囲で家庭の話もうかがいたい。「トップ俳優が二人いるご家庭ってどうなんですか?」と(笑)。一人でも大変なのに、あのレベルの俳優が二人いるなんて、どんなふうに過ごされているのか!? うかがってみたいですね。

羽鳥慎一さん(撮影:Tomoko Ishikawa)

映画に対する新しいスタンス

――もともと映画がお好きだったとうかがいました。映画にまつわるエピソードを教えてください。

羽鳥 最初の映画体験は、親に連れて行ってもらった『ドラえもん のび太の恐竜』(1980年)です。ポップコーンを食べながら楽しく観ました。でも最近は純粋に楽しめなくなってしまった……。「この映画のポイントは?」とか、「あの俳優さんのここが気になる」とか、「この映画の内容は」などと考えてしまう。もうポップコーンを食べながら観る時代は終わってしまった(笑)! でも今度はそれを楽しめるように頑張ろうと思います。普段、自分がやっている番組などでも、自然に映画のコメントができるように。

――一方で、優秀アニメーション作品賞受賞作の『天気の子』(2019年)にご出演されていましたよね?

羽鳥 出演しました! 15秒くらい。主人公・帆高と一緒に、六本木ヒルズの屋上に向かうエレベーターに乗っている、花火大会の関係者で、花火大会を晴れにして欲しいと依頼してきた人物の役です。15秒ですけど、緊張で吐きそうになりました(笑)。周りはみんなトッププロでしたから。

――少し作品に肩入れしてしまうかもしれませんね。

羽鳥 そうかもしれません(笑)。肩入れという意味では、埼玉出身なので『翔んで埼玉』(2019年)もあぶない。でも、心を鬼にして公平に務めたいと思います(笑)。

※ ※ ※

 「第43回日本アカデミー賞授賞式」は、3月6日(金)21時から日本テレビ系で放送される。2019年は、育児と演技、人生の悩みを吐露した安藤サクラの受賞スピーチ(最優秀主演女優賞)が胸を打った授賞式。今年はどんな“言葉”が飛び出すのか。楽しみにしたい。

第43回日本アカデミー賞
日本の映画芸術、技術、科学の向上発展のために、1978年にスタートした「日本映画人による日本映画人のための日本映画の祭典」。日本アカデミー賞協会の会員全員の投票によって、優秀作品賞、優秀監督賞など正賞15部門(各々5作品、5名)および、新人俳優賞などが決定する。2020年3月6日(金)の授賞式(第43回)では、優秀賞への表彰および、各部門の最優秀賞が発表される。

優秀賞受賞作品賞上映会
日程:2020年2月15日(土)~21日(金)会場:T・ジョイPRINCE品川
新人俳優賞受賞作品上映会
日程:2020年2月28日(金)~3月5日(木)会場:シネクイント
料金:一般1,200円税込(※一部作品を除く)
関連イベント
「NEW CINEMA FACE 2020」新人俳優賞受賞者の撮り下ろし企画
期間:2020年2月26日(水)~3月13日(金) 掲出場所:東京ミッドタウン日比谷

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