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22年ぶり新作公開!『男はつらいよ』寅さん気分で歩く葛飾柴又

寅さんファンにはたまらない「寅さん記念館」へ

 一息ついたら、「葛飾柴又 寅さん記念館」と「山田洋次ミュージアム」(葛飾区柴又6-22-19)へ。

 2館共通券は500円。こちらは2018年11月から大規模工事を行い、今年4月にリニューアルオープンしたばかり。「寅さん記念館」は歴代マドンナたちと共に振り返るエンディングコーナー、記念撮影コーナー(有料)を改装。「男はつらいよ」の世界観を再現したカフェスペース「TORAsan cafe」も新設された。

リニューアルしたばかりの寅さん記念館(撮影:平辻哲也)葛飾柴又寅さん記念館(c) 松竹(株)

 入り口には「寅さんの生い立ちコーナー」が。車寅次郎は1939年生まれとある。つまり、今年で80歳になるということだ。10月にはNHK土曜ドラマ「少年寅次郎」(原作・山田洋次、脚本・岡田惠和)も放送されたばかりとあって、熱心なファンの姿もあった。その見どころは撮影所にあった「くるまや」のセットを移築したもの。クイズコーナーもあるので、腕試しをしてみるのもよい。

 隣接の「山田洋次ミュージアム」は山田監督の上映作品の予告を鑑賞できるミニシアターや多彩な創作活動に触れられるコーナーが新設されている。『男はつらいよ』以外の作品が一堂に集められている。

山田洋次ミュージアムでは山田監督の作品を一望できる(撮影:平辻哲也)山田洋次ミュージアム(c) 松竹(株)

一大エンタテインメントな矢切の渡し

 記念館のエレベーターに乗ると、江戸川堤防に出ることができる。この堤防は、正月を迎えたさくらの一家や、寅次郎が源ちゃんやマドンナと連れ立って歩いた場所だ。近くには野球場もあって、ランニングや自転車を楽しむ人も多い。

京成金町駅方面を望むと寅さんが佇んでいた金町浄水場取水塔も見える(撮影:平辻哲也)

 堤防を降りると、「矢切の渡し」がある。伊藤左千夫の名作「野菊の墓」の恋人たちが別れる名場面の舞台として、細川たかしのヒット曲としても有名だ。寅さんも、ここを渡って帰ってきたこともある。

 江戸時代から続き、唯一現存する江戸川の農民渡船で、千葉県松戸市矢切と柴又を結び、人や物資を運ぶ。渡船料は片道、中学生以上200円。しかし、訪れた時は、矢切側の船着き場が台風19号の被害を受け、崩落したため、周遊(400円)だけが可能だった。夕闇に沈む川の光景を見ると、ここが東京とは信じられない。

船上から見た矢切の渡し(撮影:平辻哲也)

 だが、もっと信じられないのは先祖代々の家業を受け継ぐ船頭さんの話だった。

 「上流からいろいろなものが流れてくる。人も流れてくるし、熊の死体を見つけたこともある。だけど、金目のものは一切流れてこない」

 確かに、台風の影響なのか、川岸は崩れ、いろいろなものが漂着していた。いち早い復興を望みたい。

寅さんとさくらの銅像が立つ柴又へ

 再び柴又駅へ。夕焼けに染まり、明かりが灯る参道はこれまた別の美しさだ。柴又駅前には、故郷を発つ寅さんと、見送るさくら像が立っている。

 そういえば、6作目『純情篇』(1971)の最後は、電車に乗り込む寅さんと、さくらの会話だった。これはシリーズ屈指の名場面といってもいいだろう。

寅さんを見送るさくら像(撮影:平辻哲也)

さくら「あのね、お兄ちゃん。辛いことがあったら、いつでも帰っておいでね」
「そのことだけどよ、そんな考えだから俺はいつまでも一人前に……。故郷ってやつはよ、故郷ってやつはよ……」

 肝心な部分を言いかけたところで、無情にも電車の扉が閉まる。16歳の時に父親とけんかして、家出した寅さん。「もう二度と帰るもんか」と誓いながらも、気がつけば、ふらりと柴又に帰ってきてしまう。

 柴又は温かい気持ちにさせる町なのだ。

『男はつらいよ お帰り 寅さん』
出演 :渥美清/倍賞千恵子、吉岡秀隆、後藤久美子、前田吟、池脇千鶴、夏木マリ、浅丘ルリ子 原作・監督:山田洋次 12月27日全国にて公開(C)2019松竹株式会社

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