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【映画祭で食べよう】ピンチョスとチーズケーキ:サン・セバスチャン国際映画祭・スペイン

 筆者、年間4~5カ所の海外映画祭に参加している。フリーで活動している身。仕事とあれば選り好みしている場合じゃないが、密かにルールを決めている。

 酒と料理が不味い地域の映画祭には行かない――。

 だって、せっかく時間もお金もかけて行くのだもの。映画+αのお楽しみがなければやってられまへんがな。

料理部門設置の映画祭! 映画にまつわるディナーイベントも

 なかでも2008年から通い続けているのが、スペインのサン・セバスチャン国際映画祭。

サン・セバスチャン国際映画祭の会場の一つ、ビクトリア・ユージニア劇場。1912年建築の荘厳な内装に、鑑賞前のテンションもアップ(写真:中山治美)

 食通ならご存知。スペインのミシュラン三ツ星獲得レストラン7店のうち3店がこの街にあり、名門大学の調理学科が存在する美食の街として有名。

風光明媚なサン・セバスチャンの街。貝殻の形をしたコンチャ海岸が有名で、サン・セバスチャン国際映画祭の最高賞の名前も「Concha de Oro」(コンチャ・デ・オロ。金の貝殻賞)と名付けられている(写真:中山治美)

 映画祭自体も2011年から料理部門を設置。料理をテーマにした映画を鑑賞した後に、その作品にちなんだ料理をスターシェフが振る舞うスペシャル・ディナーイベントが用意されている。食欲という煩悩に囚われた人しかいないと言っても過言ではない街なのだ。

絶品ピンチョス提供バルに隣接する映画祭会場

 映画祭会場は、絶品ピンチョス(小皿料理)を提供するバルが100軒以上も軒を連ねる旧市街に隣接しているので、上映の合間にちゃちゃっと小腹を満たすことが可能。

サン・セバスチャンの人気バル 「Bergara(ベルガラ)」 の店内。カウンターに並ぶピンチョス(1個2~3ユーロ程度)を好きにとって、お代はあとで自己申告する信用会計。その方式も観光客が増えて、ちょっと変わってきてしまったのが残念(写真:中山治美)

 実は、映画祭って映画鑑賞に取材、その合間に原稿執筆とスケジュールがびっしりで、食事をとるヒマもないくらい忙しい。

 そんな参加者のための食環境が充実していない映画祭が多く、カンヌ国際映画祭(フランス)やヴェネチア国際映画祭(イタリア)で何度「富士そばを店ごと持ってこーいっ」と叫んだことか。

 そういう意味でもサン・セバスチャンは、街全部が映画祭の食堂って感じでサイコー!

チーズケーキとリオハワインで凝りも融解

 筆者が忙しかった日のご褒美にと、会期中に2~3回通うのが、旧市街の31 de Agosto(8月31日通り)にあるバル 「LA VIÑA(ラ・ビーニャ)」(スペイン語でぶどう畑の意味)。

 ここのチーズケーキ(スペイン語ではTarta de queso)をアテに地元リオハワインを飲めば……、仕事で凝り固まった脳と神経がふわーっと融解していき、一気に昇天。

これが食欲を刺激するチーズケーキ。地元の人もホール(1切は5ユーロ、ホールは45ユーロ)で購入していく人気ぶり(写真:中山治美)

 バルでチーズケーキ!? と意外に思うでしょう。

 各バルはそれぞれ名物メニューを持っていて、この店では飲んでいると、芳ばしい香りとともに焼きあがったチーズケーキがじゃんじゃんカウンターに並んでいく。

いつも店外まで人が溢れる「ラ・ビーニャ」。最近は日本の旅行ツアーにも組み込まれているようで、日本人客も多数。チーズケーキだけじゃなく、他のピンチョスも美味しいので是非!(写真:中山治美)

 一応デザートメニューなのだが、たっぷりのクリームチーズに生クリームも加わったプルプルのフィリングを口へ運ぶと、甘さの後に良い塩梅の塩気が舌に残り、これが豊潤なリオハワインとベスト・マリアージュ。

ハリウッドスターとも気さくに出会える映画祭

「LA VIÑA」で遭遇したジェームズ・フランコ。その後、映画祭で見事、最高賞の金の貝殻賞を受賞。チーズケーキパワー!?

 最近は世界各国のメディアで取り上げられ、チーズケーキ目当ての観光客が店外にも溢れているほど。2017年はこの店で、映画祭のコンペティション部門に、監督・主演作『The Disaster Artist』(日本未公開)を引っさげて参加していたジェームズ&デイヴのフランコ兄弟ご一行と遭遇。「チーズケーキぃ〜」と言いながら、チーズケーキと一緒に記念撮影していた彼ら。

 美味な料理は、ハリウッドスターをも無邪気にさせてしまうらしい。

サン・セバスチャン国際映画祭 San Sebastián International Film Festival WEB
毎年9月にスペインの観光地サン・セバスチャンで開かれる映画祭。第66回を数える今年、監督や俳優に贈られるドノスティア賞(生涯功労賞)を是枝裕和監督(『万引き家族』)に授与すると発表。同賞はこれまでフランシス・フォード・コッポラ監督、ウディ・アレン監督、オリヴァ・ストーン監督らが受賞している。アジア勢の受賞は初。

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