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釜山国際映画祭の父、キム・ドンホ氏82歳の挑戦! 映画と文学をテーマに江陵国際映画祭

 2019年11月8日から14日まで行われた「江陵国際映画祭」。今年から始まった、韓国でもっとも新しい国際映画祭だ。「釜山国際映画祭」の生みの親、キム・ドンホ氏が組織委員長となり、名優アン・ソンギを諮問委員長に迎えスタートさせた。キム・ドンホ氏が82歳にして新たな挑戦をするというのが気になり、そして是枝裕和監督がマスタークラスを行うというので、「江陵ってどこ?」とちょっと不安になりつつ向かった。

(左から)アン・ソンギ映画祭諮問委員長、キム・ドンホ組織委員長、チェ・ミョンヒ江陵市長(写真提供:GIFF)

カフェは200軒以上! 文学の郷・江陵

 映画祭の説明の前に、江陵(カンヌン)の街を少し紹介しよう。韓国の東海岸にある江陵市は、人口21万人を擁する江原道の都市で、きれいな海と湖、そして山に恵まれたリゾート地。2018年の平昌五輪・パラリンピックのフィギュアスケートなど屋内競技の開催地や、多くの映画・ドラマのロケ地として知られている。

 そしてコーヒーの街でもあり、おしゃれなカフェがなんと200軒以上もある。ソウル金浦空港から車で約3時間、いくつものトンネルを抜けて降り着いてみた街は美しく、そして寒かった。

上映会場のひとつ、CGV江陵。隣はかつての高架下を再現した市場。10軒以上のチヂミ屋さんが並んでいる(撮影:石津文子)

 江陵はまた、韓国では文学の郷としても知られる。白砂が続く海岸と、松林を隔てたところにある鏡浦湖を中心とした風光明媚な土地は、多くの作家や詩人、文人に愛された。古くは女性詩人の先駆け、ホ・ナンソロン(蘭雪軒許)と、ハングル最古の小説とされ何度も映像化された「ホン・ギルトン伝」の作者ホ・イン(許筠)の姉弟をはじめ、現在も多くの文人を輩出している。韓国の5万ウォン札の肖像になっている女性画家、シン・サムイダン(申師任堂)と、その息子で儒学者イ・イ(李珥/5千ウォンの肖像)も江陵の出身だ。

江陵の美しい海岸(撮影:石津文子)

「文学と映画」をテーマにした映画祭

 こうした背景から、江陵国際映画祭は“文学と映画”を主題としてスタートした。組織委員長のキム・ドンホ氏は2017年に釜山国際映画祭から引退していたが、82歳にして再び映画祭の前線へと復帰。

 「市長から江陵で映画祭を開きたいと言われ、文学の街で映画祭となれば、文学と映画をテーマにするのがいいだろうと思いました。そして韓国でも人気の高い是枝裕和監督の特集上映をしたいと思い、日本へ行って直接、監督にお願いしました」とドンホ氏は語る。

 いつ会っても穏やかな紳士だが、この細い体のどこにそんなパワーがあるのかというほどこの30年間、世界中のあらゆる映画祭をまわって映画人と交流し、彼を知らない映画人はもぐりだと言われるドンホさん。是枝監督も「ドンホさんに言われたら断れません」と語るほど、世界の映画人から尊敬を集めている。

 レッドカーペットにも、江陵出身で映画祭の諮問委員にも名前を連ねた人気俳優キム・レウォンをはじめ、オープニング作品『A LITTLE PRINCESS』に主演した名女優ナ・ムニ(『怪しい彼女』)と名子役キム・スアン(『新感染 ファイナル・エクスプレス』)や、オ・ジホ、クォン・ユル、ハン・イェリ、開幕式の進行役を務めた江陵出身の女優キム・ソヒョンら多くのスターや、イ・チャンドン、イム・グォンテクらの監督が登場した。

映画祭レッドカーペットでのキム・レウォン(写真提供:GIFF)

オープニング作品『A LITTLE PRINCESS』のキャスト陣と監督(写真提供:GIFF)

 開幕式では主催者の長い祝辞などはなく、挨拶は『A LITTLE PRINCESS』のメンバーのみ。そのかわり、映画史上初の女性監督アリス・ギイがオー・ヘンリーの短編を翻案した『最後の一葉』(1912)が、江陵交響楽団の演奏付きで上映されるというシンプルだが洒落たスタートとなった。

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