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【個性的すぎる映画館】市民出資の映画館として35年! 「フォーラム山形」の紆余曲折

大手シネコン進出で大ピンチ! 起死回生の一手とは

 この市民出資による映画館作りの輪は、福島、盛岡へと広がっていった。いずれも映画館が減少し、都心との文化格差が生まれていた地域だ。同時にネットワークを築くことで、利点が生まれたという。

 「山形、福島、盛岡と3館になった時、初めて配給会社にチェーンとして認めてもらえ『フォーラム用にフィルムを1本焼くので、それを3館で回してください』と。つまり今までよりずっと早い段階で、話題作を自分たちの町で公開できるようになったのです。これはすごいことだと気づき、ならば東北で最も人口の多い仙台市に劇場を作れば、アート系映画を優先的に東北に持ってくることができるのではないか? と、そこで1999年にフォーラム仙台を開館しました」

 もちろん、全てが順調だったわけではない。1990年代後半に大手映画館チェーンのシネコンが東北にも進出してきたとき、既存館は軒並み興行収入が半減し、閉館に追い込まれていったという。そこで、フォーラムシネマネットワークは起死回生の一手を打った。2000年12月、山形駅西口の霞城セントラルビル地下にシネコン「ソラリス」をオープンさせたのだ。郊外型シネコンに対抗して、街中にシネコンをぶつけるという発想が大胆。

 「1990年代後半の5年間は『自分のところの映画館が潰れるのではないか?』という恐怖に苛まされ、本当にギリギリまで追い詰められました。それが開館約半年後、宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』(2001)が大ヒットして息を吹き返しました」

フォーラムシネマネットワークの系列館「ソラリス」には6スクリーン(撮影:中山治美)

封切り作品“ごちゃ混ぜプログラム”の狙いは?

 続けて、フォーラム山形もシネコン化すべく、同市香澄町のパチンコ・パーラーをリノベーションして現在の場所へ移転した。フォーラムシネマネットワークも青森・八戸、栃木・那須塩原、山形・東根にも広がり、現在は同ネットワークだけで10館・58スクリーン。もはや一大映画チェーンだ。

左/元パチンコ・パーラーをリノベーションしたフォーラム山形。建物上部は駐車場 右/元パチンコ・パーラーだった面影を残す円形の入り口。周辺には映画の余韻に浸れるベンチや椅子が多数(撮影:中山治美)

 ただ、シネコンになったとはいえ初代時代からの精神は受け継がれている。上映プログラムは話題作からアート系まで多種多彩。取材に訪れた10月中旬は、ソラリスとフォーラム山形の11スクリーンのうち、上から座席数の多いスクリーン3つをYIDFFのために提供した。連休中で、稼ぎ時だったはずなのに! だ。

 「経営を安定させるために、封切り作品に名画、アート系とごちゃ混ぜにプログラムを組むという方針は変わりません。ただそれは経営のことだけではなく、娯楽映画を観にきた人がポスターや予告を見て興味を持って、アート系作品のよりディープな世界へと誘い、一人でも映画ファンを増やしたいという狙いもあります。YIDFFの作品を上映するのも、そういう理由からです。ウチの市民株主もアートだからとか、娯楽作だからとかの映画の線引きはしません。面白いか、否か。これが本来の映画の楽しみ方なのでは?と思っています」

取材時はドキュメンタリー映画『ドリーミング村上春樹』(2019)のニテーシュ・アンジャーン監督が訪館中。フォーラム山形では12月6日から公開予定(撮影:中山治美)

映画と映画館を楽しむための場所

 初代の名残はフード&ドリンク・コーナーにも表れているようだ。初代は“ロビーは何を持ち込んでもOKだが、場内はジュースもダメ”という禁飲食制度をとっていた。それは「映画をしっかり売る映画館でありたい」という思いからだったという。

 現在こそ場内でのフード&ドリンクの持ち込みは館内購入商品のみOKとなっているが、あまり商品販売に重きを置いていないようだ。長澤さんにフード&ドリンクの特色をうかがっても「ないですね。映画館で上映の妨げにならないような商品は限られていますので。それにメインは映画ですので、宣伝やHPの作り込み、映写に全力を注いでいます」とあっさり。

香ばしい匂いまで漂ってきそうなプレッツェルがそそる売店コーナー(撮影:中山治美)

 とはいえ、フォーラム山形には見るからに美味しそうなプレッツェルや焼おにぎりが。ソラリスにはYIDFFの開催に合わせた海外ゲスト向けの英語表記メニューや、特集上映「春の気配、火薬の匂い:インド北東部より」に合わせた期間限定の紅茶飲み比べを用意。スタッフの「おもてなし」の心が見えるような商品がちょこちょこ並んでいた。

 トイレサインのチャーリー・チャップリンとマリリン・モンローといい、映画を映画館で観るという体験を楽しんでほしいというスタッフの思いが至るところから伝わってくるのであった。

男子トイレはチャーリー・チャップリン、女子トイレはマリリン・モンローというサインがニクい!(撮影:中山治美)

フォーラム山形 WEB
住所 山形県山形市香澄町2-8-1
電話 (023)632-3220

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