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映画祭に大事なものとは? 第32回東京国際映画祭を振り返る

「TIFF」とはどんな映画祭なのか?

 審査委員長のチャン・ツィイーが閉幕後の会見で述べた言葉が、TIFFに対して私が長年感じていることとほぼ同じだったので、それを引用しよう。

 「とても強く感じたのは、TIFFがどのような個性を持ち、どのような DNA を持っているのかが大切ということです。どの映画祭にもカラーはあるので、これからTIFFがどんな立ち位置を国際的に確立していくのか、ということが大切なのです」

チャン・ツィイー審査委員長 (C)TIFF2019

 言い換えれば、「TIFFってどんな映画祭なの?」と聞かれたときに、答えにくいということ。毎年、10月に開催されるお隣の「釜山国際映画祭」は〝アジア映画のハブ〟を謳い、アジア映画の発掘・発信を基調としている。ヨーロッパ映画も数多く上映されるが、コンペはアジアの若手のみだ。上映本数も300本以上で、TIFFの181本を大きく上回る。

 とはいえ、日本映画スプラッシュの作品賞に、森達也のドキュメンタリー『i -新聞記者ドキュメント-』(2019)が選ばれたことは大いに意義がある。表現の自由を自主規制するような風潮の中で、世の中に疑問符を突きつける作品が日の目を見るようにすることは、映画祭の大きな存在意義の一つだと思う。

11月15日(金)から全国順次公開される『i -新聞記者ドキュメント-』(C)2019 TIFF

 もう一つ、2019年のTIFFの特色に、NetflixやHBOなど配信やケーブルテレビでしか観られない作品をラインナップに加えたことだ。特にマーティン・スコセッシ監督の集大成とも言える、3時間半におよぶ大河犯罪ドラマ『アイリッシュマン』(2019)に観客が殺到した。

3時間半におよぶ大河犯罪ドラマ『アイリッシュマン』(C)Netflix

 ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ、そしてジョー・ペシの顔、顔、顔! 我が家のテレビはかなり大きいけれども、劇場で観ると没入感が圧倒的で、その演技と演出に酔いしれた。こうした企画は今後も続けてほしいし、もしかするとここにこそ活路があるのかもしれない。

 さらに提案したいのは、フェミニズム視点の部門の創設だ。東京国際女性映画祭が終了して8年、女性監督は少しずつ増えたといえ、女性と社会と表現を考える場が東京にあってほしい。

東京国際映画祭 WEB
第32回を迎える、日本で唯一の国際映画製作者連盟公認するマーケットを併設する国際映画祭。今年の「コンペティション」には115の国と地域から1,804本もの応募があった。1985年、日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生し、日本およびアジアの映画産業、文化振興に大きな足跡を残しながら成長を続ける。入賞者には、『アーティスト』(11)のミシェル・アザナヴィシウス監督や、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(15)『レヴェナント: 蘇えりし者』(16)のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督など、『淵に立つ』(16)の深田晃司監督がいる。

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