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【個性的すぎる映画館】米寿を迎えた館長が大人気 1949年創業の「別府ブルーバード劇場」

 大分県別府市で唯一の映画館「別府ブルーバード劇場」。創業1949年の歴史ある映画館で3代目館長を務めるのは、2019年4月に米寿を迎えた岡村照(てる)さんだ。館長就任は1971年。別府ロケの『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』(1982)では全国の映画館でナンバーワンの動員を記録し、社会現象となった『カメラを止めるな!』(2018)をいち早く上映したことでも話題になった。2019年11月29日~12月1日には、映画人を多数ゲストに迎えての「第3回Beppuブルーバード映画祭」が華やかに開催される。

一目見ただけで中へ入りたくなる外観(撮影:平辻哲也)

米寿の館長が守り続ける劇場

 JR日豊本線「別府駅」東口から徒歩5分。年季の入ったビルの2階にあるレトロで味わいのある映画館が「別府ブルーバード劇場」だ。米アカデミー賞作品賞受賞作『グリーンブック』(2018)やインディーズ発『メランコリック』(2018)など、時間替わりで多彩な作品を上映している。座席数は未公表だが、全席自由席で80席ほど。シアターに入ると、真っ赤なシートが目を引く。これまでは現金払いのみだったが、バーコード決済システムを導入し、キャッシュレス決済も可能になった。

「これぞ映画館!」と思わせてくれる真っ赤なシート(撮影:平辻哲也)

 劇場を切り盛りするのは、今年4月に米寿を迎えた3代目館長の岡村照さん。「生涯現役」を謳い、可能な限り窓口に立ち続けている。照さんに会いたいがために映画人や映画ファンが全国からやってくるが、取材の日はたまたま諸用のため不在。次女で劇場マネージャーを務める岡村実紀さんが対応してくれた。

「7、8年くらい前から母の耳が遠くなったので、私も手伝うようになったんです。映画館は今年が70周年ですが、来年は母が始めてからちょうど50年目。そこまではやらせてあげたいなと思っています」

左/3代目館長の岡村照さん。好きな映画は『雨に唄えば』(1952)、『ドクトルジバゴ』(1965)、『蒲田行進曲』(1982) 右/窓口で電話対応する実紀さん(撮影:平辻哲也)

 

 劇場は1949年、照さんの父・中村弁助さんが「子どもたちに夢を与える映画を観せたい」と創業した。1970年に照さんの夫、昭夫さんが引き継いだが、わずか10カ月後に41歳の若さで急死。照さんが3代目館長に就任することになった。映画全盛期、別府市内には映画館が約30館あったが、そのすべてが消える中、映画の灯を守り続けた。

 「父(昭夫さん)はアイデアマンで、映画館でいろいろなことをやっていたんです。65〜70歳ぐらいの方は『昔、ブルーバードで渡哲也さんを見た』『山本陽子さんと握手した』とおっしゃってくださります。洋画をやっていた頃もあって、クリント・イーストウッド出演の『夕陽のガンマン』(1966)なども観ましたね。日活の専門館だった頃は浜田光夫さん、浅丘ルリ子さんをお呼びしたこともありました。日活が(1971年に)ロマンポルノに変わったので、松竹の専門館になりました」

ロビーは映画人の色紙、写真、新聞の切り抜き、米寿祝いの贈り物でいっぱい(撮影:平辻哲也)

 松竹専門館時代の一番の思い出は、別府八湯のひとつ、鉄輪(かんなわ)温泉などで大分ロケを敢行したシリーズ30作目『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』だ。シリーズ歴代3位という人気作で、そのポスターは今も看板の上に飾られている。

 「沢田研二さんと田中裕子さんが結婚するきっかけになった作品です。当時は別府が市を挙げて、全面協力をしました。渥美清さんもブルーバードに来てくださりました。劇場の売上が全国1位になり、母は表彰されました」

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