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揺れる30歳が見た“故郷の風景”とは? 『ブルーアワーにぶっ飛ばす』に映る茨城

 人はいくつで大人になるのでしょう? 日本では、法律的に20歳から成人とみなしますが、自身が大人と感じる年齢、また周りを見渡したときに大人だなと思う人の年齢は“ハタチ”をはるかに超えているような気がします。

 『ブルーアワーにぶっ飛ばす』の主人公は30歳。実質的には“大人”と呼ばれる年齢ながらも、“満たされない思い”を抱え、イライラ、もやもやしているアラサーの気持ちを、ロケ地とこの作品で映画監督デビューを果たした箱田優子監督、主演の夏帆さんの言葉から見つめてみたいと思います。

(c)2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会

CMディレクター・砂田(夏帆)は、30歳。東京で仕事に明け暮れる日々をおくっている。不規則で理不尽なことの多い仕事。そのはけ口にしている不倫。口をひらけば出る悪態……。ある日、実家からの電話で、茨城県に住む病気の祖母を見舞うことに。砂田の窮地にいつも寄り添ってくれる天真爛漫な秘密の友だち・清浦(シム・ウンギョン)が、車を出してくれた。再会した家族には、都会の論理は通用しない。おのずと本当の自分がむき出しになっていく……。

監督と主人公がシンクロした映画なのに…

 本作は、CMやミュージックビデオの演出家として活躍する箱田優子の映画監督デビュー作。若手映像作家の登竜門「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」に箱田監督が応募した企画は、当落線上をさまよいながらも、最終審査まで少しずつ審査員の心にくさびを打ち込み続け、“審査員特別賞”という新しい賞を創設させました。その後、プロデューサーとの開発期間を経て、映画化されたのがこの作品です。

 『オーバー・フェンス』(2016)、『スマホを落としただけなのに』(2018)などを手掛けてきた本作の星野秀樹プロデューサーは、「(箱田監督が初めて書いた脚本は)台詞が秀逸で、ユーモアのセンスも素晴らしく、このまま撮れるクオリティでした。どこかで見たことがある事件を盛り込むより、今の観客は何も起こらないことに自分を重ね合わせてドラマを感じ、心に刺さるんじゃないかと思いました」と絶賛。

演出中の箱田優子監督 (c)2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会

 そんな主人公・砂田は“全裸100%”の箱田監督であるようです。「限りなく自分に近いキャラクターを、夏帆さん本人に寄せて作っていきました」と箱田監督。その意気込みに「“シンクロしましょう”と並走してくれた夏帆100%に感服です」という。それにしてもこの映画、監督と主人公をシンクロさせているのに、不思議と“私小説風”な湿度や独りよがりなところを感じさせないのです。変な言い方ですが、商業映画として面白い、と言うか。

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