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大名なのに引っ越し貧乏!? 『引っ越し大名!』に見る“城と大名”の微妙な関係

 プロの業者が林立する現代においても、引っ越しは面倒なもの。きれい好きを自負されている方でも、臆しがちなプロジェクトだと思います。それでもピークである年度末に、業者を手配するのも難しいと言われるほど人々が動くのは、引っ越しが自由な意思によるものばかりではないから。

『引っ越し大名!』8月30日全国公開 (c)「引っ越し大名!」製作委員会

 本作の大名も同じ! しかも車や業者を安価に手配できる今でも大変な引っ越しを、江戸時代、それも城単位で、日本全国縦横無尽に行わなければならないとしたら、いかほどの作業量であったか。そんな大名の引っ越しがどんなものであったか、映画『引っ越し大名!』をベースに見て行きたいと思います。城は日本の観光地として定番人気を誇りますが、本作で少し見方が変わるかもしれません。

兵庫から大分へ約600キロのお引っ越し!

 本作での引っ越し始点は兵庫県の姫路城。その美しさから白鷺(しらさぎ)城とも呼ばれている名城で、現在は世界文化遺産に登録されています。当時、姫路城のある播磨姫路藩を治めていたのは松平直矩(なおのり)。直矩は、徳川家康を曽祖父に持つ、直基系越前松平家と呼ばれる由緒正しきお家柄。彼のように家康や最初のほうの将軍の血筋である大名を親藩(しんぱん)と言いますが、位は高くても基本的には中央の政には参加できないうえ、あまり力を持たないよう、江戸時代前半はかなりな頻度で幕府より引っ越し=「国替え」を命じられていました。

 物語は、松平直矩(及川光博)が命じられた、15万石から7万石への減俸のうえ、藩士とその家族を率いて期日までに豊後(大分県)の日田城へ約600キロ移動する「国替え」プロジェクトを描きます。物語の軸は、亡くなった前任者に代わり「引っ越し奉行」としてプロジェクトを遂行することになった引きこもりの書庫番・片桐春之介(星野源)です。

『引っ越し大名!』8月30日全国公開 (c)「引っ越し大名!」製作委員会

 現在の姫路城から日田城跡までの徒歩ルートをグーグルマップで検索すると、徳山港(山口県周南市)まで徒歩 → 竹田津港までフェリー → 日田城まで徒歩という、計91時間のコースが表示されました。フェリー乗船時間は2時間半ですから、徒歩の時間はなんと88時間30分……! いや、女性や子ども、老人を連れて、そんな距離は歩けません。確認すると片桐は、兵庫県たつの市の室津港から大分県中津市の中津港まで船で移動する計画を立てていました。姫路城から室津港までは約4時間40分。これなら荷物を持っても歩けないことはありません。でも瀬戸内海を通り抜け、大分までの船旅だって当時のこと、距離もあるし、さぞかし困難だったと思われますが。

『引っ越し大名!』8月30日全国公開 (c)「引っ越し大名!」製作委員会

 押し付けられるように引っ越し奉行になった片桐をサポートするのは、武芸に秀でた幼なじみ・鷹村源左衛門(高橋一生)と、前任者の娘・於蘭(高畑充希)、そして引っ越しで何より重要なお金を取り仕切る勘定頭の中西監物(濱田岳)。藩の中で目立たない存在であった片桐がいかに藩士の信頼を勝ち取るのか? 半額以下の減俸となるのに藩士全員を新天地へ連れていけるのか? そもそも、藩の資金が国替え費用の見積りを下回っているのにどうやって引っ越しをするのか? また、星野が演じたTVドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)の平匡(ひらまさ)を思わせる奥手な片桐が、於蘭への恋心にどう決着をつけるかも見どころとなっています。

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