ツイート シェア

【日本の映画祭】『カメ止め』監督も輩出! SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が楽しい理由とは

 第16回「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」が、2019年7月13日(土)から埼玉県川口市で開催されます。東京駅から川口駅までJR京浜東北線で約30分。そこから映画祭専用無料直行バスで20分とやや遠い印象ですが、それでも行かないと、知らないと、なんとももったいない映画祭なのでお伝えしたいわけです。その4つの理由をお届けしましょう!

2018年の映画祭クロージングセレモニーより(撮影:Avanti Press)

① 「これぞ!」と思える映画監督を発掘できる

 映画祭を大きく3つに分けると、映画ファンのための映画そのものを楽しむタイプ、映画業界人によって業界人同士が高め合うことを目的とするタイプ、若手映画監督の発掘・育成を目的とするタイプがあります。この「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」は3つめの若手監督の発掘・育成を核にした映画祭。これまでも国内外の多くの映画監督を輩出してきました。

 最近では、第16回のオープニング上映作品 『イソップの思うツボ』を撮った、浅沼直也監督、上田慎一郎監督、中泉裕矢監督。みんな同映画祭で受賞したり、スカラシップ的な形で映画祭関連企画の作品を撮ったりと活躍している。

第16回のオープニング上映作品『イソップの思うツボ』 (c)2019 埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

 特に上田監督は、去年、大ヒットした 『カメラを止めるな!』で話題となった。同映画祭短編コンペティション部門に、2012年『恋する小説家』で、2016年『テイク8』で参加。2016年には奨励賞を受賞したが、アニメーション部門に『こんぷれっくす×コンプレックス』で参加していた奥さんのふくだみゆき監督が最優秀作品賞を受賞し、やや影が薄くなったことが悔しかった模様。「妻がアニメの最優秀賞を取ったので僕もなにか取らないと、と思っていました。もらえて良かったです(笑)。でも同時にグランプリではない悔しさがあります。映画祭は喜びと悔しさをもらうところ。次は最高賞と思ってがんばります」と話しており、果たして翌年、『カメ止め!』を大成功させたのだった。

 そのほか、『孤狼の血』(2018)、『止められるか、俺たちを』(2018)、『凪待ち』(2019)の白石和彌監督、『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)、『長いお別れ』(2019)、『浅田家』(2020公開予定)の中野量太監督、『東京ウィンドオーケストラ』(2017)、『ピンカートンに会いにいく』(2018)の坂下雄一郎監督、昨年国内コンペティション(長編部門)優秀作品賞・観客賞をW受賞した『岬の兄妹』(2018)の片山慎三監督なども活躍している。

特集「飛翔する監督たち」のトークショーに登壇した白石和彌監督、中野量太監督、坂下雄一郎監督(撮影:Avanti Press)

 映画祭で出会う時点では、誰もが海のものでも、山のものでもないわけだが、お気に入りの作品を見つけても、その監督に直接感想を伝えたり、疑問を聞けたりする機会なんてそうそうあるものじゃない。映画祭では上映の後に質疑応答の時間が用意されているので、その時間を利用して、どんどん質問してみよう。

② 会場のSKIPシティでロケ地めぐりもできる!

 映画祭が開催される「SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ」には、若手映画監督や映像会社が入居する、ポストプロダクション(撮影終了後の作業。編集や合成など)機材を安く利用することができるインキュベートオフィスがある。そんなこともあり、周辺はロケ地の宝庫だ。山田洋次監督『母べえ』(2008)や周防正行監督『舞妓はレディ』(2014)のオープンセットが建てられたのもここ。『カメラを止めるな!』や『イソップの思うツボ』のロケも一部行われている。最新作では『ダンス ウィズ ミー』も撮影されているとか! 映画祭を訪れたら、ロケ地をひと廻りしてみるのも楽しい。

 『カメラを止めるな!』ロケ地・SKIPシティを探訪~監督が明かした撮影裏話とは はこちら

『カメラを止めるな!』の撮影が行われた場所(撮影:Avanti Press)


会場の「SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ」。隣のスペースには、かつて『母べえ』や『舞妓はレディ』のオープンセットが建った(撮影:Avanti Press)

③ 映画監督との距離が近い!

 映画祭のいいところは、「いいな!」と思った映画の監督や関係者と直接話せるところだというのは、前章でも書かせていただいた。だが、それは舞台上と客席に分かれてというだけじゃないことを付け加えておきたい。観客と映画監督の距離が遠い映画祭ではその余地はないが「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」は大丈夫。上映が終わってロビーにいる監督や俳優などに感想を告げたり、質問したりも可能だ。もちろん人としての礼儀と節度を持っての話ではあるが、せっかく映画祭に出かけたのならどんどん話しかけてみよう。

 その機会はロビーだけじゃない。建物の1階にある 「つぼ八」は、映画上映後に登壇した人々が集う場所。観客、映画関係者がビールの杯を片手に映画を語り合う姿が見られたアツい年もあった。また映画祭期間中(2019年は7月14日~20日)だけ2階に開設されるベジタ(Vegetable)×バル(Bar)「0363(オサムサン)」も、ランチやカフェスペースとして参加者が利用している。審査員の姿を見かけることもあるので、今年のコンペティション、長編部門の三池崇史審査委員長、短編部門の荻上直子審査委員長に遭遇することもあるかも。

貴重な出会いの場所(撮影:Avanti Press)

 最終日には川口駅近くのダイニングバー 「ストックヤード」で監督やスタッフ入り乱されての打ち上げも開催される。ここに参加したいと思うほどであれば、来年は映画祭に監督として応募しているか、ボランティアとして参加しているかもしれない。

川口駅近くにあるストックヤード(撮影:Avanti Press)

 会えるのは、日本の監督だけじゃない。『スリー・モンキーズ』(2008)でカンヌ映画祭監督賞、『雪の轍』(2014)で同パルムドールを受賞したヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督、『未来を生きる君たちへ』(2010)でアカデミー外国語映画賞を受賞したスザンネ・ビア監督、大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)、『ロケットマン』(2019)のデクスター・フレッチャー監督も、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の観客の視点の鋭さに驚いた人々だ。映画祭に参加した時点では新人監督以外の何者でもない作家たちを応援して、彼らが大きく成長していくのを目の当たりにするのはちょっとした醍醐味だ。

まずは 映画祭公式サイトをじっくり眺め、気になった作品の上映日目掛けて行動を起こすところから! どんな出会いが待っているか、その出会いがなにを変えるのか?

④ 「東京との関所」川口でグルメを楽しめる!

 そうは言われても川口って、『翔んで埼玉』(2019)で東京との関所が置かれていた場所。「埼玉都民の住処でしょう!」という突っ込みが入りそう。でも、だからこそ面白いのです。

 川口駅発の無料直行バスで往復される方は、安さとうまさで庶民の胃袋を満たしてくれる、そごう裏のセントラルアヴェニュー商店会へ。路地を入った一画に、炭火焼鳥と燻製 「ケブリノ」、炭火焼鳥 「とさか」、居酒屋 「谷ツ田」、自家製麺 「竜葵」、イタリアン「ヴォーノ」(埼玉県川口市栄町3-5-19)、居酒屋「わんえもん」(埼玉県川口市栄町3-5)など、おいしくて、胃にもお財布にも優しい店が並ぶ。さすがに週末は混み合うので、足を運ぶ際は予約の電話を入れることをお勧めします。

セントラルアヴェニュー商店会(撮影:Avanti Press)

 路面バスで帰ろうという方は、いま話題の西川口駅方面へ。かつてのピンクなイメージから一新。現在は、あの広い中国の食文化を、西川口南通り商店会だけで味わうことができる、中華料理屋ひしめく町となっている。深夜の人気テレビ番組「タモリ倶楽部」で紹介されて人気の出た「滕記鉄鍋炖」(川口市西川口1-24-2 B1)もこちらに。具を煮る大きな鉄鍋に、とうもろこしパン種を貼り付けて蒸す鍋はぜひ食していただきたい逸品。

鉄鍋が大人気。でも2人では食べきれないのでぜひ大勢で!(撮影:Avanti Press)

 また江戸時代、川を使った流通拠点だった川口ならでは、材木屋さん跡地をリノベーションしたクラフトビール醸造工場兼専門店 「グロウブリューハウス」(GROW BREW HOUSE)ではおいしいクラフトビールを楽しめるうえ、お店が掲げる「西川口全体がフードコートだ!」の言葉通り周辺の店でテイクアウトしたつまみを食べながらビールを飲むことができる。いろいろ味わいたいなら、このお店を拠点にするのが効率的かも。

「グロウブリューハウス」醸造長の岩立佳泰さん(撮影:Avanti Press)

 最後には西川口西口きっての本格派バー 「カスク&スティル」へ。大沢在昌さんも杯を傾けたそのカウンターからは、400種以上のウイスキーのボトルが見える。ウイスキーのことをまったく知らなくても、ドキュメンタリー映画『シューマンズ バー ブック』(2017)のチャールズ・シューマンさんとも対談したマスターが、言葉は少ないながらぴったりな一杯を見つけ出してくれるのでご安心を。

「カスク&スティル」マスターの川本将人さん(撮影:Avanti Press)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 WEB
2004年に埼玉県川口市で誕生した映画祭。デジタルシネマにいち早くフォーカスした国際コンペティション映画祭であったが、映画産業の変革の中で、新たに生み出されたビジネスチャンスを掴もうとする若い才能の発掘と育成を目的とした。国際コンペティションと長編部門と短編部門の2部門で構成される国内コンペティション部門がある。本年は92の国と地域から、合計861本の応募があった。

関連記事