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宇宙開発の拠点で「はやぶさ」映画の興奮を体感! 鹿児島・大隅半島の旅①

 九州の南方に位置する鹿児島県は左岸の薩摩半島と右岸の大隅半島に大別される。西郷隆盛をはじめ明治維新の志士を多く輩出し、さらには平野が広がる開放的イメージの薩摩半島に対し、大隅半島は鬱蒼とした山々に覆われ、どこかしら神秘的な佇まいを湛えている。現に大隅半島には「古事記」「日本書紀」などに根差した神話も多い。『ゲゲゲの鬼太郎』でおなじみ一反木綿も、肝付町高山地区に伝わる妖怪だ。

 そんな大隅半島でも数々のロケが行われている。今回はまず、『はやぶさ/HAYABUSA』(2011)、『はやぶさ 遥かなる帰還』(2012)など小惑星探査機「はやぶさ」の打ち上げをモチーフにした映画が撮影された「内之浦宇宙空間観測所」から紹介しよう。

神話の島、宇宙開発の拠点

 大隅半島の肝付町内之浦地区。何を隠そう私が生まれ育った場所でもある。内之浦は肝属郡の太平洋側に面した地域で(鹿児島空港から車でおよそ2時間といったところか)、映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966)の元ネタでもある“海幸彦山幸彦”の伝説や、『日本誕生』(1959)、『ヤマトタケル』(1994)、OVA『火の鳥 ヤマト編』(1987)などで描かれた熊襲征伐にまつわる逸話も多い。

 かたやこの地には宇宙空間観測施設、つまりは宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケット発射場たる 「内之浦宇宙空間観測所」が、世界でも珍しい山中にそびえ立っている。日本初の人工衛星「おおすみ」と「はやぶさ」もここから打ち上げられた。

「内之浦宇宙空間観測所」内にあるロケット打ち上げ施設「M(ミュー)センター」(撮影:増當竜也)

地元民の心も掴んだ「はやぶさ」映画

 「はやぶさ」に関しては、その発射から帰還までの模様をCGで完全再現した疑似ドキュメント映画『はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH』(2009)や、計画そのものの全貌を描いた20世紀FOX配給『はやぶさ/HAYABUSA』(2011)、計画にまつわる科学者や技術者などプロフェッショナルの誇りを主軸にした東映配給『はやぶさ 遥かなる帰還』(2012)、火星探査機「のぞみ」の失敗から小惑星探査機「はやぶさ」の成功まで、宇宙開発に携わった親子の確執を描いた松竹配給『おかえり、はやぶさ』(2012/3D映画)と3本の劇映画が競作され、FOX版と東映版は内之浦でロケも行われ、多くの町民がエキストラとして出演している。

ロケット整備塔(撮影:増當竜也)

 ただし内之浦出身者の目で見据えても、現地の人々の気持ちが汲まれていたのは皮肉にも唯一ロケを敢行しなかった(基地遠景などは撮影されたが)松竹版であった。この作品、杏扮するヒロインが内之浦出身という設定で、劇中には学生時代の彼女が下校途中の海沿いの道からロケットの打ち上げを見送るシーンも出てくる(画面のアングルなどから、ロケット基地をさらに南に下った岸良地区の海岸という設定と察しがつく)。

 実際、内之浦に住む人々からすると、ロケットの打ち上げは家の庭でも学校でもどこからでも見上げることのできる日常的なものであるとともに、四方を海と山に囲まれ、ややもすれば閉塞的になりがちな意識を、地域から上方の宇宙へと一気に連れ出し、開放感や未来への希望などを育ませるに足るものがあった。『おかえり、はやぶさ』には、そんなロケットの打ち上げが人にもたらす前向きなカタルシスが描出されていた。

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