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絶望的な片恋を描いて大ヒット! 『愛がなんだ』ロケ地を歩く①

深夜の環七で味わう都会の寄る辺なさ

 京王線「代田橋」駅方面にもテルコの心情を描く芝居場がある。熱を出したマモルに食べ物を届けに行ったテルコは、バスルームを磨き出したことで帰宅を促され、ビールを飲みながら深夜の環七(環状七号線)を歩くシーン。

テルコが向かう先を決める環七の標識(撮影:Avanti Press)

 前原美野里プロデュ―サーが映画のパンフレットで、「東京って地方出身者の集まりじゃないですか。その中で生きていくうえで、恋愛に限らず皆どこか人肌を求めているところってあると思う。その希薄な空気感みたいなものは2019年にこの題材をやるうえでは絶対に作りたいなと思っていました」というように、住宅が並び、車が絶え間なく往来しながらも、そのひとつたりともテルコを受け入れようとしない、寄る辺なさを味わえるシーン。ただひとつ、友人の葉子の住む「高井戸」を指す標識(世田谷区大原2−20−10あたり)だけが、テルコに行き先を示す。今泉監督も好きなシーンなのだそう。

マモルが誘う居酒屋はロケ界の有名店

 この映画には、ご飯を食べるシーンがたくさん登場する。食事は、生きて行く限り欠かせないもの。悲しかろうが、辛かろうが、最高に嬉しかろうが、ものを食べずには生きられない。ある日テルコは、真夜中に追い返したお詫びとマモルに呼び出され、居酒屋で一緒にご飯を食べる。そのシーンが撮影されたのが、居酒屋 「酔の助神保町本店」

数々の名作に出演している「酔の助神保町本店」(撮影:Avanti Press)

『愛がなんだ』(c)2019映画「愛がなんだ」製作委員会

 「酔の助」は、『舟を編む』(2013)やヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(2016)など、年間30作品くらい撮影を受け入れているのだそう。1979(昭和54)年から神保町で営業している老舗で、ロケーション界の有名店なのです。つい最近、撮影されたばかりなのは岡崎体育さん「今宵よい酔い」のMV。お客さんには映画やドラマのファンが多いようで、開店の18時になると次々と詰め掛け、奥座敷まである広い店内はあっという間に一杯。大勢で来店するなら予約は必至。

酔の助神保町本店外観。二人はここでタクシーを待つ(撮影:Avanti Press)

 店長の一山文明さんに「繁盛の秘訣は?」とお聞きすると、やはり「撮影された映画やドラマのファンが来てくださるから」だという。さらに、「なぜこんなにロケ地として選ばれるのか?」と問うと、「私の(ロケ隊への)神対応のせいかな」と笑いながら答えてくれた。

 きっとこれまでもいろいろな便宜をはかってこられたのだろう。その話が広がって、引きも切らずロケ隊が押し寄せる状況になったのだと思う。工夫を凝らしたメニューは楽しく、また大変おいしくリーズナブル。これもお客が通いたくなるのも当然だ。【②に続く】

『愛がなんだ』 WEB
全国にて公開中 配給:エレファントハウス 岸井ゆきの、成田 凌、深川麻衣、若葉竜也、片岡礼子、筒井真理子/江口のりこ 監督:今泉力哉  原作:角田光代「愛がなんだ」(角川文庫刊) (c)2019映画「愛がなんだ」製作委員会

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