ツイート シェア

【日本の映画祭】映画を通じて心のバリアフリー 進化する渋谷で東京国際ろう映画祭

 2019年5月31日から6月3日まで、東京・渋谷のユーロライブをメイン会場に開催される 「第2回東京国際ろう映画祭」。「LGBT」や「環境」など特定の文化やジャンルに特化した映画祭が多数生まれていますが、本映画祭もまた時代の機運によって誕生したと言えるでしょう。聴者とろう者の相互理解の場としてだけではなく、ろう者自身にも手話文化やろう文化の魅力をより深く伝えることを目的としており、2017年に開催された第1回には3日間で1500人を動員しました。

 2019年はさらに幅を広げて、視覚障がい者も楽しめる音声ガイド付きの上映や、シアトルろう映画祭とローマ国際ろう映画祭の関係者を招いてのシンポジウムも開催されます。手話は国や地域によっても異なるので、シンポジウム当日は、日本手話・アメリカ手話・国際手話の通訳も登壇。

大杉漣さんの最初で最後のプロデュース作『教誨師』を日本語字幕付きで特別上映。(c)「教誨師」members

 また大杉漣さん主演『教誨師』(2018)の日本語字幕付き上映や、台湾で大ヒットしたデフリンピック出場を目指す女性と弁当店の青年の青春物語『聴説』(2009)の上映とアジア映画ファンにとっても嬉しい作品がラインナップに入っています。

台湾映画『聴説』は、デフリンピックを目指す水泳選手と弁当店の青年が織りなす青春劇。2010年大阪アジアン映画祭観客賞受賞作。(c)2009 鼎立娛樂有限公司

進む開発! 渋谷はバリアフリーの街へ

 映画祭が開催される渋谷区は、今年3月に 「渋谷地区周辺地区バリアフリー基本構想」を策定。誰もが安全に移動し、施設を利用できるバリアフリー基本構想を打ち出しています。ただ車椅子利用者や高齢者への配慮は手厚くなったとはいえ、傍目には気づきにくい聴覚障がい者への対応はまだまだ手薄なのが事実です。構想の中には事業者への取り組みとして知識や技術の向上、並びにコミュニケーション困難者、つまり聴覚障がい者の対応用にコミュニケーションボードの設置を推進しています。

 駅には筆談ボードや「筆談によりご案内いたします」の表示はあるのですが、店舗で案内表記があるところはまず見当たらず。ようやく発見したのは、渋谷の顔とも言える東急百貨店本店。インフォメーション・カウンターには「筆談マーク」が! 

左/渋谷といえば東急百貨店本店。上映合間の食事や休憩にも便利 右/東急百貨店本店インフォメーションセンターにある「筆談で対応します」のサイン。手話で応対できるスタッフもいます(撮影:中山治美)

 広報担当者によると、同店のインフォメーション・カウンターには筆談ボードのみならず、手話で応対できるスタッフが1名勤務しているとのこと。店内の飲食店情報や周辺地域の案内にも応じてくれるそうなので、ろう者はもちろん、渋谷で困った時には力強いサポート役となってくれそうです。

映画祭代表のオススメ店は?

 主催の東京ろう映画祭実行委員会の代表・牧原依里さんいわく、渋谷は外国人も多く、最近はスマホも活用できるので、店員とのコミュニケーションに比較的困らない街なのだそうです。確かに、駅周辺には食券を購入して利用するラーメン店や丼店が乱立しています。タッチパネルでオーダーできる飲食店もあり、聴覚障がい者も気兼ねなく利用できそうです。

 牧原代表のオススメ店は、渋谷警察署に近い明治通りに面した沖縄料理とそばの店「かんから食堂」(東京都渋谷区渋谷3-18-6 MJ3.18ビル)と、隠れ家的居酒屋「庵GuRi 5566」(東京都渋谷区道玄坂2-8-1 大和田ビル1F)渋谷店です。

左/渋谷駅東口方面にある沖縄料理「かんから食堂」。“オリオンビール250円”を見て、店内に吸い込まれる人も多そう 右/かんから食堂の海ぶどう。つぶつぶ食感がたまりません!(撮影:中山治美)

 両店とも聴覚障がい者に向けての対応をアナウンスしているわけではありませんが、味はもちろん、「かんから食堂」は朝4時まで、「庵GuRi 5566」も平日は深夜1時、金・祝日前は同2時まで営業と、夜遅い上映後も食事を楽しめるのが魅力的。何より、聴覚障がい者への理解を感じたそうです。

 それはどういうことなのか。聴者である筆者にはピンと来なかったので、「庵GuRi 5566」を訪問してみました。そして納得。スタッフの、客一人一人への気配りが素晴らしく、実に居心地がいい。渋谷の喧騒を逃れるような、落ち着いた店内の雰囲気も相まって、ついついお酒が進んでしまうので要注意です。

左/渋谷の隠れ家的居酒屋「庵GuRi 5566」。実は京王井の頭線渋谷駅から徒歩3分の近さ 右/刺身はもちろん、茗荷の天ぷらやわさび菜のおひたしなど旬の食材を使ったメニューが絶品(撮影:中山治美)

 ほか会期中は、上映会場のユーロライブ1Fの 「CAFE9」、アップリンク渋谷1Fのカフェレストラン 「Tabela」 もチケットの半券提示で割引サービスがあるほか、筆談での応対も準備しているそうです。

左/「KINOHAUS」の2階にユーロライブ、1階に「CAFE9」。映画館の半券を提示するとドリンクは50円引き 右/今や”奥渋”の人気店、アップリンク・プロデュースの「Tabela」。テラス席はペット同伴OK(写真:中山治美)

広い視野で見つめなおす映画祭

 こうして「聴覚障がい者も安心して利用できる店は?」という視点で歩くと、また街が違って見えるから不思議です。コンビニ各店の入り口にはホラ、「ほじょ犬」マークが! ほじょ犬とは、音の聞こえない聴覚障がい者をサポートする聴導犬も含まれます。でもこれって、身近に利用者がいないと気づきにくいところです。

 だからこそ、東京国際ろう映画祭が開催される意義があります。まずは同映画祭に参加して、心のバリアフリーを始めてみませんか。

東京国際ろう映画祭 WEB
2017年に「東京ろう映画祭」としてスタート。2回目となる今年は、さらなる国際化へ向け「東京‘国際’ろう映画祭」に改称。誰もが自由に映画と芸術の興味を共有できる場、聴者とろう者の相互理解の場となることを目的に開催されている。

関連記事