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【日本の映画祭】2019年も盛況! 行定勲監督が地元愛を込めるくまもと復興映画祭

 2016年4月、最大震度7を記録する地震に見舞われた熊本。あれから3年、その復興を映画の力で後押しする 「くまもと復興映画祭 powered by 菊池映画祭」が、今年も4月19~21日の日程で開催された。

左からくまモン、行定勲監督、松永壮(ポスタービジュアルのグラフィックデザイナー)、『洗骨』の古謝美佐子(主題歌)、水崎綾女、奥田瑛二、高良健吾、大西一史(熊本市長)、松本穂香、『月極オトコトモダチ』の穐山茉由監督、『岬の兄妹』の片山慎三監督、『オーファンズ・ブルース』の村上由規乃、辻凪子、『おいしい家族』のふくだももこ監督、『#ハンド全力』の甲斐翔真、田中美久、松居大悟監督(撮影:平辻哲也)

 映画祭ディレクターは、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)や『リバーズ・エッジ』(2018)などで知られる熊本出身の映画監督、行定勲氏。行定監督の呼びかけで、奥田瑛二、有村架純、高良健吾、松本穂香らが参加し、4月20日(菊池市・菊池市文化会館)と21日(熊本市・くまもと森都心プラザ)の2日間は前売り券が完売する盛況ぶりだった。

今年の映画祭に参加した、(左から)高良健吾、松本穂香、奥田瑛二、水崎綾女、行定勲監督(撮影:平辻哲也)

「あの時」熊本にいた行定監督の思い

 「くまもと復興映画祭」は隣接する菊池市で開催されていた「菊池映画祭」がルーツ。2014年に「映画の力で町おこしをしたい」と地元市民から依頼を受け、行定監督がディレクターに就任した。2016年3月には、熊本で撮影した「くまもと映画プロジェクト」の第1弾『うつくしいひと』を特別上映。本屋でアルバイトをしている大学生のヒロイン(橋本愛)のところに、怪しげな中年男性(姜尚中)が現れることから始まる熊本愛あふれるノスタルジックなラブストーリーだ。出演の橋本、姜氏、高良らは熊本出身で、熊本城や夏目漱石旧居、江津湖、菊池渓谷などでロケされた。

『うつくしいひと』ポスター

 だが、そのロケ先もそれから約1カ月後に起きた地震で甚大な被害を受けた。そんな中、行定監督のところに、大西一史・熊本市長から「映画の力で熊本市民を勇気づけてほしい」と依頼が入る。そこで翌2017年4月からは会場を熊本市に広げ、「くまもと復興映画祭 powered by 菊池映画祭」として開催されることになった。

満席の会場(撮影:平辻哲也)

 地震当日、市内のホテルで地震に遭遇した行定監督は「あの時、熊本にいなかったら、ここまで映画祭をやらなかったかもしれない。熊本で映画を作ること、映画祭をやることは天命だと思えた」と振り返る。その後は、震災直後の熊本を伝えようと、くまもと映画プロジェクト第2弾『うつくしいひと サバ?』(2017)、地震当夜の人間模様を描いた第3弾『いっちょんすかん』(2018)も製作し、プレミア上映した。

高良健吾(右)も熊本出身。2019年は「多十郎殉愛記」(中島貞夫監督・2019)の上映、行定監督とのトークショーで映画祭に参加(撮影:平辻哲也)

特集上映のヒロイン、有村架純を始めとする華やかなゲストも

 平成最後の今回は4月19日、熊本市内の「市民会館シアーズホーム夢ホール」でオープニング。今年は「くまもと映画プロジェクト」の作品はなく、オープニング作品に選ばれたのは、お笑いコンビ「ガレッジセール」のゴリこと照屋年之氏が沖縄の離島・粟国島に残る風習「洗骨」を通して、家族の絆と命のバトンを描いた『洗骨』。オープニングセレモニーでは、『洗骨』の奥田、水崎綾女、『多十郎殉愛記』(中島貞夫監督)の高良、『おいしい家族』(9月公開)、『アストラル・アブノーマル鈴木さん』の松本ら人気俳優が会場をわかせた。

客席から登場した松本穂香(撮影:平辻哲也)

 このほか、「有村架純特集」として、『かぞくいろ -RAILWAYS わたしたちの出発-』(2018・吉田康弘監督)、『ナラタージュ』(2017・行定監督)を上映。有村はWOWOWドラマの撮影の合間を縫って、20、21日の両日に参加し、菊池と熊本の両会場は大盛況だった。

「有村架純特集」での有村架純と行定監督(左)(撮影:平辻哲也)

メジャー、インディーズ両方の映画を楽しむ

 こうした華やかなラインナップの一方、新人監督の登竜門で知られる 「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018」国内コンペティション部門で最優秀作品賞と観客賞をW受賞し、全国60スクリーン以上で公開されている 『岬の兄妹』(片山慎三監督)を始めとする傑作インディーズ映画もセレクト。

左から行定監督、『岬の兄妹』の和田光沙と片山慎三監督(撮影:平辻哲也)

 「地震に遭った熊本の人たちは家族の大切さ、身近な人がそばにいる大切さを身にしみて分かったはず。そうした人たちを元気づけるような作品を上映したかった」と行定監督。インディーズ映画を選んだ理由についても「熊本には『わさもん』(「早生者」=新しい物好き)という言葉があります。流行り物を誰よりも早く取り入れたいという気持ちがあるんです。熊本はそういう気質の土地なので、映画もそうなってほしいなと思っています」と語る。

左からきべとしお(ラジオ「月刊行定勲」出演者)、行定監督、『オーファンズ・ブルース』の辻凪子、工藤梨穂監督、村上由規乃、ミルクマン斉藤、『岬の兄妹』の片山慎三監督、『月極オトコトモダチ』の穐山茉由監督(撮影:平辻哲也)

 前売り券は1日通し券なので、メジャー映画、インディーズの両方が楽しめる。各上映後に行われる、行定監督が自ら司会進行を務めて出演者や監督らにインタビューし、観客からの質問を受け付けるティーチインも名物の一つだ。

秘蔵映像を上映するプログラム「真夜中の映画祭」

 通常のプログラムとは別に、菊池市の老舗旅館 「望月旅館」 の大広間で夜中に開催される「真夜中の映画祭」もある。普段はお目にかかれない秘蔵映像を上映し、この場でしか聞けないトークが人気。「さぬき映画祭」にも同名プログラムがあるが、映画祭ディレクターを務める本広克行監督がゲストで参加した折に気に入り、許諾を得た上で「さぬき映画祭」で開催しているのだ。

「真夜中の映画祭」が開催される望月旅館(撮影:平辻哲也)

 今回の「真夜中の映画祭」では、全編アメリカロケした短編アクション『荒野の忍 Return of Ninja』(2018・内田英治監督)が上映され、主演を務めた「EXILE」「三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」の小林直己が登壇し、若い女性ファンで超満員。この「真夜中の映画祭」を含めて、初日から3日間ぶっ通しで11本全ての映画を観る人もツワモノもいた。

上映中の「真夜中の映画祭」(撮影:平辻哲也)

 菊池市は映画館ゼロの町だが、期間中は映画一色に。 「菊池温泉観光旅館協同組合」 代表理事で「望月旅館」の岩永誠さんは、「菊池映画祭は当初、韓国映画を1日だけ上映していたんです。それが行定監督にお願いしたら、全然違うものになって、すごいゲストの方が来てくださるようになった。『うつくしいひと』や『うつくしいひと サバ?』も復興の大きな力になったと思います。映画の力は本当に素晴らしいです」と話す。

 また、菊池市では、日本の名湯百選に選ばれた名湯も楽しめる。菊池温泉の泉質はアルカリ性単純泉。滑らかな肌触りの湯は別名「美肌の湯」とも言われている。源泉かけ流しで、少しぬるめの湯に時間をかけて浸かると、体が芯から温まり、スベスベ肌に。緑と水が豊かな菊池渓谷を始め、水源にも恵まれ、米、野菜、畜産も盛んで、料理がおいしい。

復元中の熊本城で感じる復興、そして復興の先へ

 一方、熊本市のNo.1観光スポットは言わずもがな 「熊本城」だ。町のシンボルは20年かけて復興工事中だが、日没から午後11時にかけて、毎日ライトアップ中。熊本出身の高良健吾は「熊本城の存在感は大きいんですよ。熊本城が少しずつ直っていく姿を見て、復興を感じることができる」と話す。間近で見ることは叶わないが、「熊本城復元コース」もある。加藤神社から、全体像が見ることができるので、オススメだ。

修復中の熊本城(撮影:平辻哲也)

 熊本ラーメンも忘れてはいけない。名店は数多くあるが、ただし、深夜営業している店はあまり多くはない。そんな中、本格的な熊本豚骨を味わうことができる 「黄金ラーメン銀座店」は24時間営業。深夜のラーメンは体にはよくないことは承知だが、なんと魅惑的なことか。

熊本城近くのラーメン激戦地区にある「黄金ラーメン銀座店」(撮影:平辻哲也)

 「くまもと復興映画祭」は来年も開催決定。行定監督は「やがて復興という言葉はなくなるかもしれないけども、復興の文字は残したい。『くまもと復興映画祭』という言葉があることで、2016年の地震を思い出せる。この地震があって、それを乗り越えた人たちがいたから、10年後、20年後の熊本がある、というようなものにしたい」と力を込める。

 地元出身の映画監督が地元愛をたっぷり込めた映画祭は、復興の歩みとともに、ますますスケールアップしていきそうだ。

くまもと復興映画祭 powered by 菊池映画祭 WEB
2019年に3回目を迎える4月開催の映画祭。行定勲監督が映画祭ディレクターを務める。映画を通して2016年熊本地震で被災した県内の方々に元気を与えることを目的とし、映画祭の開催により「熊本」の文化力およびブランド力向上、県外からの集客による熊本の観光プロモーション及び地域活性化、全国・世界に向けて熊本を発信していく。復興していくに連れ、作り手と観客が一体となり、新しい才能を発見していくことも目指していく。

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