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映画館通りで地元グルメを堪能! 映画ロケ地でめぐるキューバ・ハバナ③

 『ゴッドファーザー PART II』(1974)で描かれた革命直前、1958年の首都ハバナはアメリカン・マフィアが暗躍する一大リゾート地でした。前回ご紹介した「ホテル・ナショナル・デ・キューバ」を始め、周辺のべダード地区には当時の名残が見受けられます。今回はキューバ随一の「映画館通り」(と勝手に命名)こと「23通り」を散策してみましょう。

コッポラとスコセッシがほれ込んだ『怒りのキューバ』

 「ホテル・ナショナル・デ・キューバ」正面玄関から数分、お隣といえる場所に建つ「NH カプリ ラ ハバナ」は、『ゴッドファーザー PART II』でマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)がハイマン・ロス(リー・ストラスバーグ)から譲り受ける予定だった「ホテル・カプリ」です。もちろん、現地でのロケは行われず、ドミニカ共和国のホテルを“代役”にしています。車寄せがある広い玄関などそちらのほうが豪華に見えるかも。

現在の「ホテル・カプリ」に車寄せはない(撮影:goo映画編集部)

 このホテルを実際のロケ地にした映画といえば、ミハイル・カラトーゾフ監督作『怒りのキューバ』(1964)。革命直後のキューバを訪れたソ連の詩人エフゲニー・エフトゥシェンコは、国民のバイタリティに感銘を受けて長編叙事詩「私はキューバ」を書き上げました。本作はその映像化作品であり、当時のキューバに存在した躍動感を見事なカメラワークと構成で表現しています。日本では1968年に公開されましたが、アメリカでの上映は90年代に入ってから。1992年に初公開されたあと、フランシス・フォード・コッポラ監督とマーティン・スコセッシ監督は、米国配給に向けて共同提供に乗り出しました(配給はマイルストーン・フィルム)。

 こちらの予告編は1995年に米国公開した際のもの。「ホテル・カプリ」の屋上で撮影された美女コンテストの様子などを観ることができます。特にわかりやすいものは、予告編の37秒から始まるプールのシーン。現在も現役のプールであり、驚くことに当時とほぼ変わっていません。

大きな変化は右手の壁だけ。プールの向こうに見えるビルは居住用マンション「FOCSAビル」(撮影:goo映画編集部)

 60年前に消えた享楽の街が、一瞬だけ蘇ったかのよう。これぞロケ地めぐり旅の醍醐味ですね。

NH カプリ ラ ハバナ NH Capri La Habana WEB
Calle 21 entre calle N y O, Vedado, 10400 Havana, Cuba

映画館通りのお供はキューバの名物料理

 次はベダード地区のメインストリート「23通り」へ。マレコン通りから「ホテル・ナショナル・デ・キューバ」の脇を南西に入るルートで、しばらくはなだらかな坂道が続きます。最初に現れる映画館は「ラ ランパ」(La Rampa)。映画を観る場所というより、映画のロケ地になりそうなムードがたまりません。

佇まいだけでも絵になる「ラ ランパ」(撮影:goo映画編集部)

 「ラ ランパ」の脇を曲がると、国営レストランの「ワカンバ」(WAKAMBA)。中の様子が窓越しに伺えないため、観光客にはハードルが高い店構えですが、伝統的なキューバ料理を安価で提供する優良店です。店内のテレビを見ながら地元客に紛れて地元の料理。まったりとした時間をすごしてみてください。ただしメニューはスペイン語のみのため、辞書の用意をお忘れなく。英語が通じる可能性は多くの日で0パーセントです。

チキンステーキとコングリ(黒豆ごはん)、ドリンクのセット3.2CUC(約400円)。ドリンクはもちろん国営メーカー「シエゴ・モンテロ」(Ciego Montero)。コーラが美味!(撮影:goo映画編集部)

ワカンバ WAKAMBA
Calle O e/ 23 y Humboldt, Vedado, Havana, Cuba

 腹ごしらえが済んだら「23通り」でもっともにぎわう「L通り」との交差点へ。ランドマークは1958年3月に「ハバナ・ヒルトン」としてオープンした「ハバナ・リブレ」です。当時は巨大なカジノホテルで、ウェルトン・ベケットが手掛けた内装は50年代モダンのテイストがたっぷり。ロビーのバーではサッカーUEFAチャンピオンズリーグのパブリックビューイングが開催されていました。

空間を贅沢に使った吹き抜け。円形のフォルムが落ち着いたムードを作り出す(撮影:goo映画編集部)

 「ハバナ・リブレ」から「23通り」を挟んだお向かいには、これまたレトロな映画館「シネ ヤラ」(Cine Yara)。地区のカルチャーアイコンであり、待ち合わせのメッカです。1940年代後半の誕生当時は「ワーナー」と呼ばれていたとか。現在は映画祭の会場や音楽ライブ、サッカーのパブリックビューイングなどにも使用されています。

「シネ ヤラ」はキューバ近代建築史的にも重要とされているとか(撮影:goo映画編集部)

 「シネ ヤラ」の正面から「L通り」を越えた向かいは緑豊かな公園。ですが、周囲で行列を作っている人たちはいったい? じっくり観察してみると、警備員が入場可能人数を告げるごとに行列が動いています。

暑くてもじっと待つ人たち。暑いほうがむしろ人数は多い(撮影:goo映画編集部)

 ここは国営のアイスクリームパーラー「コッペリア」(Coppélia)。キューバ・メキシコ・スペイン合作映画『苺とチョコレート』(1994)で、自由主義でゲイの芸術家ディエゴ(ホルヘ・ペルゴリア)と共産主義者の大学生ダビド(ウラジミール・クルス)が出会う場所です。タイトルにある「苺」と「チョコレート」は、ふたりがここでオーダーするアイスクリームの種類であり、ふたりがやがて受け入れるお互いの「違い」を暗示しています。ふたりが思想や主義を越えて友情を築く物語は、第44回ベルリン国際映画祭などで賞に輝き、第67回アカデミー賞では外国語映画賞にノミネートされました。

1966年に「コッペリア」がオープンする以前は病院だった(撮影:goo映画編集部)

 「コッペリア」はフィデル・カストロ氏が立ち上げたプロジェクトの一部として1966年にオープン。名付け親はフィデル氏の秘書だそう。他にも店舗はありますが、1000人を収容できる規模や映画による知名度など、やはりこの公園店が特別。ただし、残念ながら外国人は左手脇の外国人専用店舗となり、提供されるアイスクリームも外国人向け仕様です。とはいえ、ここはWi-Fi公園。所定の場所でしかネット接続できないキューバでは場所探しに苦労しますが、ここなら日陰でアイスを食べながらゆっくりできますよ。

ロケ地めぐりの礼儀として当然チョコレートアイスをオーダー。さらに甘いシロップをかけますが、断ってもヨシ(撮影:goo映画編集部)

 アイスクリーム休憩のあとはまた「23通り」を南西へ。通りに並ぶ映画館はいずれも、CUP(人民ペソ)での支払いです。外国人が一般的に使用するCUC(兌換ペソ)は受け付けてもらえないため、どうしても観賞したくなったら途中の「カデカ」(CADECA)で両替をしておきましょう。

観光客が多いエリアには、CUCからCUPの両替を受け付けていない店舗も。23通り沿いの店舗はOK(撮影:goo映画編集部)

 次に現れる映画館は「リビエラ」(Liviera)です。チープと上品のあいだを行く鮮やかなスカイブルー&看板のレトロフォントがグッときますね。妙ななつかしさも感じてしまいます。1920年代から同名の劇場として運営され、50年代には映画館に。他の劇場よりスタイリッシュな外観が話題を呼んだそう。現在はライブ会場としても使用されています。

一見するとナイトクラブ風の「リビエラ」(撮影:goo映画編集部)

 「リビエラ」を撮影している最中、ウエイター姿の男性がじっとこちら見つめていました。撮影が終わると、男性は隣の建物を指さして「映画が好きならうちの店でコーヒーでも飲めば? 写真ならいくらでもどうぞ」とのこと。それでは、とカフェレストラン「カルメロ」(Carmelo)へお邪魔します。前回ご紹介した「ホテル・ナショナル・デ・キューバ」のカフェに続く映画カフェです。ただし、店内は古いカメラと名作の場面写真が飾られただけれで、特別なメニューもありません。とはいえ、観光客向けでもない店でも映画をテーマにするとは、やはり映画好きなお国柄ですね。

「カルメロ」ではハムとチーズをたっぷり挟んだキューバン・サンドイッチをオーダー。街中の一般店やホテルのカフェ、空港などどこにでもあるが、微妙に味が違う(撮影:goo映画編集部)

 いいお天気の日にのんびり歩きと映画観光、そして地元グルメ。映画ファンなら旧市街よりこちらかも? 次回は「23通り」の後編、高い芸術性でマニアックな人気を誇るキューバの映画ポスター&『苺とチョコレート』のコンセプトカフェをご紹介します!

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