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【日本の映画祭】2019年は参加者倍増! 有名ロケ地の宝庫で尾道映画祭

 広島・尾道は小津安二郎監督の名作『東京物語』(1953)や、尾道出身・大林宣彦監督の「尾道三部作」こと『転校生』(1982)、『時をかける少女』(1983)、『さびしんぼう』(1985)の舞台。同じ大林監督の『ふたり』(1991)でロケ地となった 「千光寺」 から瀬戸内の海を臨む光景は、初めて来たのに、どこか懐かしい。ここには日本の原風景がある。『東京物語』を傑作にしているのは、尾道という街そのものかもしれない。

千光寺から臨む尾道の街(撮影:平辻哲也)

 そんな“映画の街”で繰り広げられた「尾道映画祭2019」(2019年3月22〜24日)は今回3回目の歴史の浅い映画祭だが、多くの映画人を魅了している。街を歩けば、ロケ地ばかり。こんな映画祭はほかにはない!

尾道の頭文字「O」を指で作るゲスト陣(撮影:平辻哲也)

「まち全体で楽しむ映画祭」はゲストも豪華!

 「尾道映画祭」は尾道市、地元企業、NPO法人からなる「尾道映画祭実行委員会」が主催。「まち全体で楽しむ映画祭」をコンセプトに音楽、街歩き、対談企画、小学生や大学生による映画ワークショップなど様々なイベントを開催。初年の17年は広島出身の女優、プロデューサー、杉野希妃が尾道ロケを敢行した初監督作『雪女』を始め、ももいろクローバーZの主演作『幕が上がる』などを上映。18年は大林監督を特集した。

 今年2019年は尾道市(因島町)出身のベストセラー作家、湊かなえさん原作によるオープニング作品『望郷』(2017)、人気ミュージシャンの山崎まさよしがデビュー当時に初主演した『月とキャベツ』(1996)、東京国際映画祭2018コンペティション部門出品作『愛がなんだ』(4月19日公開)などを上映。街で唯一の映画館にしてミニシアター「シネマ尾道」での上映は毎回、大盛況だった。

山崎まさよしは上映後のトークとミニライブでファンを魅了(撮影:平辻哲也)

 『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018)、『愛がなんだ』(2019)の2作で参加した女優の深川麻衣は初尾道。「駅についた瞬間から眼の前に海がひらけていて、すごく気持ちがよかったです。写真もたくさん撮りましたし、食べ物もすごく美味しかったです。何よりも人がすごく温かい。みなさんが尾道を好きになる理由が分かりました」と話した。

『パンとバスと2度目のハツコイ』『愛がなんだ』の2作で参加した女優の深川麻衣(撮影:平辻哲也)

映画の街だからこそのイベントで参加者倍増

 会場は多岐に渡った。映画の上映は、駅前にある「シネマ尾道」と 「しまなみ交流館」。前夜祭は昨年12月にオープンしたばかりの山の手の新ランドマークとなった複合施設 「LOG」だ。

尾道の新名所「LOG」中庭で開催された前夜祭イベント(撮影:平辻哲也)

 ほかにも、曽我部恵一と安部勇磨(never young beach)の「映画の街で出逢えたらライブin 尾道映画祭」は浄泉寺で。佐野史郎とヴィヴィアン佐藤をゲストに迎え、NHK「ブラタモリ」にも出演した市学芸員が案内する街歩きイベント「映画の街・尾道の歴史と文化を歩く」も開催され、映画館を飛び出した映画祭だった。

「ブラタモリ」でも紹介された史跡をめぐる佐野史郎(撮影:平辻哲也)

 尾道映画祭ディレクターを務めた「シネマ尾道」支配人の河本清順さんは言う。

 「前回、前々回の参加者は1000人でしたが、今年は倍の約2000人でした。予算は同じですが、認知度が高まったこと、街全体を会場にしたことが功を奏したようです。映画祭に参加したいという方だけではなく、尾道に来た方を巻き込むことができました。飲食店にも経済効果があったようで、街の人たちが喜んでくれました」

「こども映画制作ワークショップ」提案したのはあの俳優!?

 企画の中でもユニークだったのは「こども映画制作ワークショップ」だ。『東京オアシス』(2011)の中村佳代監督が講師を務め、尾道の1~6年の小学生とともに短編を映画制作し、上映するというもの。企画、脚本、監督、撮影、出演はすべて小学生が担当。3月に開業したばかりのJR尾道駅舎などで3月16、17日の2日間ロケ。中村監督が編集、最終仕上げを行い、完成した2本の短編(約10分)がシネマ尾道のスクリーンでお披露目された。

こども映画制作ワークショップに参加したこども監督たち。ここから未来の巨匠が!(撮影:平辻哲也)

 2作は「穴」をテーマにした冒険劇とファンタジー。風景と相まって、どこか大林監督の作品を思わせる。昨年3月は「花筐/HANAGATAMI」(2017)で参加し、小学生とともに「シネマ尾道」の看板を作った俳優の満島真之介は、今回いち観客として子ども映画を鑑賞し、「僕たちが忘れかけていた、物を作る喜びが映画に満ちあふれていた。夏休みに、10日くらいかけて、子どもたちと映画を撮れたらいいな。子ども映画のコンペティションもやったら、面白いんじゃないかな」と話していた。

左/満島真之介は舞台挨拶、ライブの司会などで大活躍。物件探しもしたほどの尾道愛の持ち主 右/メイン会場のシネマ尾道。看板は満島真之介と呉出身の絵本作家、長田真作さんとこどもたちの手作り(ともに撮影:平辻哲也)

 中村監督も「“怪しい”というお題を出したら、7人の“脚本家”が7本の話を考えてくれました。それを2つの映画にまとめて、17人の“監督”が全部で17のシーンを演出しました。将来は映画の仕事をやってみたいと話していた子もたくさんいました」と話す。第二の大林監督誕生もありそうだ。

1年を通じて楽しめる有名ロケ地の数々

 映画祭は終わってしまったが、尾道には映画を感じられる場所がたくさんある。

 ナンバーワンの人気スポット・千光寺は『あの、夏の日~トンデロじいちゃん~』(1999)、『日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群』(1988)、NHK連続テレビ小説「てっぱん」(2011)のロケ地としても有名。駅チカの 「福本渡船のりば」(尾道市土堂1丁目)は大林監督の『さびしんぼう』、『あした』(1995)のロケ地だ。

『さびしんぼう』『あした』のロケ地・福本渡船のりば(撮影:平辻哲也)

 そこから東へ歩けば、『東京物語』に登場する石灯籠がシンボリックな住吉神社、小津組が宿泊した老舗割烹旅館 「おのみち 竹村家」(尾道市久保3-14-1)が続く。

小津監督が宿泊した旅館竹村家(撮影:平辻哲也)

 山陽線を越えると、『東京物語』のラストシーンに登場する「浄土寺」(尾道市東久保町20-28)。

『東京物語』に登場する浄土寺の灯籠を撮影する佐野史郎(撮影:平辻哲也)

 その近くには『転校生』でおなじみの急階段がある 「御袖天満宮」(尾道市長江一丁目11-16)。尾道はまるで、街ごとスタジオのようなのだ。

『転校生』で有名な御袖天満宮の石階段(撮影:平辻哲也)

 長年“ガッカリ名所”と言われ続けながら、最近人気急上昇なのが「尾道城」だ。1964年に建てられた天守閣風の元博物館。駅からもよく見える街のシンボルであったが、歴史的な背景は一切ない“なんちゃって城”。90年代から長らく廃墟だったが、所有者から譲り受けた尾道市はこのほど、解体方針を決定。「解体を惜しんで、見学を希望する人が多く、真っ先に案内を求められます」(現地ブロガーさん談)とのこと。

街のお荷物だったが、人気上昇中の尾道城(撮影:平辻哲也)

 ほかにも、尾道ラーメン、サイクリストの聖地は「しまなみ海道」、ユニークなリノベーション物件もたくさんある。映画ファンだけでなく、誰もがこの街に魅了されるはずだ。

尾道映画祭 Osaka Asian Film Festival WEB
映画の街・尾道で、映画や人と出会い、交流がうまれ、次代を担う子どもたちや若者が夢を膨らませ、国境や世代を越えて街中で語りあうことを目的とする広島県尾道市で開催される映画祭。第3回は2019年3月22日から24日まで開催された。

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