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『るろうに剣心』『天地明察』時代劇ロケ地の定番・三井寺を散策

 春は桜、秋は紅葉。四季折々の風情を楽しめる 「三井寺」の正式名称は「長等山園城寺」(おんじょうじ)。天台寺門宗の総本山で、平安時代、第五代天台座主・智証大師円珍和尚によって天台別院として中興された古刹です。

紅葉の季節も美しい三井寺(撮影:Avanti Press)

 物語の舞台としてもたびたび登場し、古くは「今昔物語集」で、江戸時代後期には上田秋成の「雨月物語」の一篇「夢応の鯉魚」で、平成では巡査がロシア皇太子を襲撃した明治期の大津事件の謎に迫る富岡多恵子著「湖の南―大津事件異聞」のなかで、三井寺の風景を読むことができます。また三井寺の晩鐘は、琵琶湖岸を代表する景勝地として「近江八景」に選ばれています。風光明媚、かつ物語に富んだ名刹というわけです。

 行ってみて驚いたのは、物語の舞台という意味では追随を許さないくらい映画やドラマのロケを受け入れており、多くの時代劇がここで撮影されていることです。しかも撮影された場所には、その映画やドラマの簡単なストーリーと、撮影時のエピソードが書かれた札が建てられており、見学しやすいことこの上なく。それでは早速、三井寺で撮られた代表的な時代劇とそのロケ地を見て行きましょう。

『利休にたずねよ』が撮影された金堂

 まずは、国宝・金堂から。ここでは『利休にたずねよ』(2013)の北野大茶会のシーンが撮影されました。利休役の市川海老蔵、豊臣秀吉役の大森南朋、石田三成役の福士誠治らが約200人余りのエキストラさんとともに、紅葉のなかで撮影されたとのこと。

金堂(左)と近江八景に描かれる鐘楼(撮影:Avanti Press)

 現在の金堂は、北政所からの寄進によって再建された、安土桃山時代を代表する建物なんだそうです。なぜお堂が無くなったかというと、豊臣秀吉の怒りに触れて、境内堂塔を解体、所領を没収される事件が起きたからなのでした。処分は彼の死の前日まで解かれなかったそうですが、正室である北政所は秀吉の死後、再建に乗り出したのですね。

『天地明察』で岡田准一が走り抜けた村雲橋

 次は金堂への出入り口でもある村雲橋で撮影された『天地明察』(2012)。岡田准一演じる天文歴学者・渋川春海が朝霧のなかを走るシーンが撮影されたそうです。

岡田君はいつのまにか時代劇が最も似合う俳優になりましたね(撮影:Avanti Press)

 村雲橋は、三井寺の開祖・智証大師が渡っている時に、かつて修行した唐の青龍寺が燃えているのを察知し、真言を唱えて橋の上から水をまき、火を消し止めたと言われている場所です。取材時は私も、岡田君よろしく駆け抜けてしまいましたが、次は遠くの国の事象まで感じることができるように、謙虚な気持ちで森羅万象に思いを馳せてみたいと思います。

『柘榴坂の仇討』中井貴一と阿部寛が訪れた参道

 両脇に整然と石灯籠が並ぶ唐院伽藍四脚門参道。ここでは『柘榴坂の仇討』(2014)が撮影されました。苔むした石積みが若松節朗監督の目に止まり、井伊直弼公のお墓がある豪徳寺の設定で、ロケが行われたそうです。三井寺での撮影には、彦根藩士・志村金吾を演じた中井貴一、水戸藩士・十兵衛を演じた阿部寛らが参加したそう。

こんな神聖な場所を撮影に使わせてくれるなんて三井寺太っ腹(撮影:Avanti Press)

 石灯籠はここを治めた歴代の探題によって建てられたもの。境内には、唐院大師堂、唐院潅頂堂、そして三重塔がありますが、唐院伽藍四脚門含め、全部重要文化財に指定されています。また唐院は、神聖な智証大師の廟所であるため、三重塔の奥参道より先には一般参拝客は入ることができません。原作は浅田次郎さんの短編集「五郎治殿御始末」。桜田門外の変の敵だった二人が時を経て、一人が車夫に、もう一人がその俥の客となる巡り合わせを書いた傑作です。

ちょっぴり疲れたら三井寺名物辨慶力餅(撮影:Avanti Press)

 金堂から100メートルほど歩くだけで、ロケ地に3つも出くわすこの密度! 時代も戦国時代から幕末まで幅広く、ロケ地めぐりだけでなく、タイムトリップまでしている気分です。

『るろうに剣心』で佐藤健と吉川晃司が飛んだ橋

 締めは『るろうに剣心』(2012)。唐院に建つ三重塔脇の橋を使って、剣心(佐藤健)が刃衛(吉川晃司)から薫(武井咲)を救い出すシーンが撮影されました。橋は、三重塔とお経を安置してある一切経蔵を結ぶもの。橋の下には山へと続く道があり、橋とその道の高低差を使い、見事なアクションシーンが繰り広げられました。

右手は一切経蔵、左手は三重塔(撮影:Avanti Press)

 三重塔は、豊臣秀吉によって京都伏見城へと移築された奈良・比蘇寺の塔を、1600(慶長5)年に徳川家康が三井寺に寄進したもの。重機もない時代に、よくぞ三都をまたぐ移築を試みたものです。三重塔も一切経蔵ももちろん重要文化財です。

重機もない時代に京都・奈良・滋賀をめぐった三重塔(撮影:Avanti Press)

 『るろうに剣心』は、狩野光信の障壁画でも知られる国宝・勧学院前でも撮影されたそう。学問所として1239(延応元)年に建てられた勧学院は、前述の秀吉による破壊後、1600年に再建されたものだそうです。

勧学院門。勧学院客殿は特別拝観となるため事前申し込みが必要(撮影:Avanti Press)

 勧学院の石垣、よくみると組み方が変わっています。半分が整然と、もう半分が雑然と積まれている感じがするのです。しげしげと眺めていたら、お勤め途中のお坊さんが教えてくれました。整然とした石垣は、位の高い方を迎える建物に使う組み方で作られたものなんだそうです。再建する時に尽力したのは、関白も務めたことのある近衛前久の弟・准三宮道澄。そんなこともあって高貴な組み方で作られたのかなと思った次第。本当のところは分かりません。

整然と積まれている右のほうが古い石垣のようです(撮影:Avanti Press)

 三井寺では、『るろうに剣心』の他のシーンも撮られています。また続々と新作も撮影されているようなので、ロケ地を訪ねる旅をしたら、偶然にも撮影見学になる可能性も! たくさんある伽藍を詣でながら、どっぷり時代劇の世界に浸かってみてください。

天台宗門宗総本山園城寺 三井寺 WEB
住所 滋賀県大津市園城寺町246
電話 077-522-2238
拝観時間 8:00~17:00(年中無休)
入山料 大人600円(団体550円)、中高生300円(団体250円)、小学生200円(団体150円)

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