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『ラプラスの魔女』は温泉映画!? 山形と福島の温泉地をめぐる

 「温泉に行きたいなー」と、心の中でつぶやいてしまうこと、ありますよね。温かいお湯に包まれ、手足をのばすと、身も心も解放されたような気分になって、「明日も頑張るか」ってな活力が湧いてくるもんです。

 そんな温泉が出てくる映画も多数。古代ローマの浴場設計技師が、現代日本の銭湯にタイムスリップする『テルマエ・ロマエ』(2012、2014)シリーズ、家出した主婦が卓球で寂れた温泉地を復活させる『卓球温泉』(1998)、高峰秀子、加山雄三の義姉弟の秘めた恋を描いた名作『乱れる』(1964)など。アニメーションにも、両親とはぐれて異世界の湯屋で働く少女を描く『千と千尋の神隠し』(2001)、両親を事故で亡くした少女の成長譚『若おかみは小学生!』(2018)などのヒット作があります。どれも今一度観直したい、観ていない方にはぜひお勧めしたい作品ばかりです。

『若おかみは小学生!』DVD&Blu-ray 2019年3月29日発売 価格:¥3,800(税抜) 発売・販売元:ギャガ (c)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

 そんな中で一風変わった温泉との関わり方をする映画を紹介したいと思います。その作品は、2018年に大ヒットした『ラプラスの魔女』。ふたつの温泉地で連続して起きた不審死に、地球化学者が挑むミステリーです。

最初の事件が起きた「赤熊温泉」はどこ?

 原作は東野圭吾。地球化学を研究している大学教授、青江に櫻井翔が扮し、屋外で起きた硫化水素中毒死の謎を、科学的な観点から解き明かそうと挑みます。事件の鍵を握るのは、謎の美少女、円華(広瀬すず)と、彼女の友人、健人(福士蒼汰)。事件の不条理を地球化学に基づいて説明する円華に、青江は「君はいったい何者なんだ?」と問います。彼女は “ラプラスの魔女”だと言い残して去るのですが、ラプラスの魔女、なんていわれても、一般人には謎が深まるばかり。ラプラスとは18世紀の数学者ピエール=シモン・ラプラス。計算によって未来を予知する、未来を確かにする“ラプラスの悪魔”なる方程式を考えだした人だそうです。

 最初の事件は「赤熊温泉」で起こります。架空の温泉で、街並みは山形県「銀山温泉」(山形県尾花沢市銀山新畑)で撮影されました。前述した『乱れる』では、高峰秀子が亡くなった夫の弟である加山雄三とともに、運命の温泉地として意を決して訪れます。銀山川の両岸には、昭和初期の香りを残す洋風木材建築の旅館が立ち並び、旅情を誘います。

『乱れる』のロケ地でもある銀山温泉(撮影:Avanti Press)

 青江らが「赤熊温泉」で宿泊する旅館は、福島県「横向温泉」の「滝川屋旅館」(福島県耶麻郡猪苗代町大字若宮字下ノ湯甲2970)です。円華の秘められた能力を、青江が感じ取る大事なシーンが撮影されました。普段は、大正ロマンを感じさせる建物も魅力な温泉宿。昭和30年代頃までは60部屋ある客室が埋まる湯治場として賑わったようですが、現在は歴史的建造物を残しながらリノベーションし、1日3組限定の宿となっています。福島駅からバスを使って約1時間20分という山深い温泉ではありますが、なににもとらわれない時間を過ごす喜びを堪能できる場所のようです。

 「滝川屋旅館」のエントランスを潜ると、建物を建てる前からそこにあったという巨岩が、目に飛び込んできます。青江教授と麻布警察署の刑事、中岡(玉木宏)のやり取りは、これを背景に撮影されました。この巨岩、不可思議な事件に直面する青江のプレッシャーを描くことに、とても貢献しているように感じました。また、事件が起きた滝は 「達沢不動滝」。安達太良山系の船明神山が源流の不動川にかかる名瀑だそう。横向温泉から車で約20分とのことなので、気候の良い季節に行ってみたいですね。

雪の中で事件が起きた達沢不動滝(撮影:Avanti Press)

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