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【映画祭で食べよう】寸胴鍋でやってくるスープ:ロッテルダム国際映画祭① オランダ

 オランダ第2の都市 ロッテルダムは、ヨーロッパ最大の港湾都市です。この町の名物といえば、インディペンデント映画作家の登竜門と称される「ロッテルダム国際映画祭」。2019年(1月23日~2月3日)に第48回を迎える歴史ある映画祭で、期間中に約33万人が訪れるビッグイベントです。

ロッテルダム映画祭のメイン会場「De Doelen」(デ・ドーレン)。ロッテルダム中央駅から徒歩3分の好立地(撮影:中山治美)

近未来的な街の映画祭は歓迎ムード満点

映画祭期間中は街中の店も映画祭特別メニューを用意するところが多い。市民皆がゲストを歓迎しているかのようで嬉しい(撮影:中山治美)

 アムステルダムから列車で約1時間。ロッテルダム中央駅に降り立つと、17世紀の環状運河地域が世界遺産登録されているアムステルダムとは対照的な、近未来的な建造物の多さに戸惑う人も多いでしょう。

長い工事の末に2014年完成した中央駅。斬新!(撮影:中山治美)

 でも、これには理由があります。第2次世界大戦中、港があることからドイツ軍の標的となり、旧市街は壊滅状態に。戦前からの建物は、市庁舎と旧郵便局以外、ほぼ残っていないそうです。夜間に街を散策する際は、地面を見てください。炎のマークが赤く光っている場所が、爆弾が落ちた場所です。ロッテルダムの人々は日々、歴史を感じながら、今の生活を大切にしようと生きているのですね。

夜に灯る爆撃地を示す赤いライト(撮影:中山治美)

 しかし、ゼロからの発想が面白い。これは実験映画から日本のピンク映画、深作欣二監督の特集上映まで幅広い作品を上映する映画祭の特色とも共通しているのですが、ユニークな建物をどんどん建てて、街の個性を生み出してしまったのです。その代表が、斜めになった立方体が並ぶアパート 「Kijk-Kubus」(キューブハウス)。

ホステルやミュージアムとして一部開放されているキューブハウス(撮影:中山治美)

 映画ファンなら、ニューウェ・マース川沿いにある 「Willemswerf」(ヴィレムスワーフ)に見覚えがあるはず。ジャッキー・チェンが映画『WHO I AM?』(1998)で滑り落ちた場所です。映画で見る以上の高さと斜面に、改めてジャッキーの無謀さ……もとい、チャレンジ精神に感嘆するでしょう。

ジャッキー・チェンはこの急斜面を滑り落ちた(撮影:中山治美)

映画祭会場はどこへ行っても食が充実!

 そんな建物群のなかでも、映画祭メイン会場の 「De Doelen」(デ・ドーレン)は威厳のあるどっしりしたとした佇まい。日頃はコンサートホールとして使用されており、映画祭期間中のみ事務局や試写、企画マーケットの会場など、映画祭の拠点として活用されます。

 人が集う場所に食と酒は必要ということで、1階には朝・昼・晩の食事を提供するカフェ・ダイニング、2階には夕方からバーもオープンします。メニューはサンドウィッチやキッシュなどの軽食から、夜には上映作品にちなんだ日替わり料理も登場。深田晃司監督の『淵に立つ』(2016)が上映された時には、エキゾチック・アジアン・ディ・メニューと称してベトナム料理が……。まあ、心意気を買いましょう。

左/一般市民も入場可のデ・ドーレン。こちらが『淵に立つ』上映記念メニューが記されたボード 右/ある日のメニュー。エシャロットとキノコと赤ワインで煮たチキンに、冬野菜のロースト、ジャガイモのローズマリーソテー、グリーン野菜。キッシュも定番メニュー(撮影:中山治美)

 この映画+食を提供するというスタイルは、ロッテルダムの特徴なのでしょうか。上映会場のひとつ、複数のスクリーンを持つミニシアター 「CINERAMA」(シネラマ)や 「LantarenVenster」(ランタレン・ヴェスター)のロビーには、本格的なダイニングが併設されています。少ない人手で効率よく来場者をさばくために、入口と出口を別々にしてロビーを小さくするシネコンが増えている中、これは真逆の発想です。

 夜になるとDJブースも設置されてクラブやライブ会場にも早変わりし、若者で大賑わい。映画館は人の交流を育む文化発信基地であるということを、明確に位置付けています。日本では映画館に若者が来ないという声をよく耳にしますが、是非とも参考にして欲しいところです。

ランタレン・ヴェスター1階のカフェ&ダイニング。海辺に面し景色も最高(撮影:中山治美)

 筆者にとって上映合間のお楽しみは、ランチ時になると寸胴鍋でやってくるスープ。これはどの映画館でもお馴染みの光景です。

左/ランチ時に販売されるエンテルスープ 右/上映会場のひとつOude Luxor Theaterでもランチにスープやホットミールがやってくる。鑑賞の合間に小腹を満たすことができるので、映画祭参加者には強い味方(撮影:中山治美)

 映画祭開催時は真冬。日替わりで提供されるオランダ名物エンテルスープやトマトスープが、体を芯から温めてくれます。お値段も、バゲットが付いて500円ぐらい。懐にも優しい。

 後編:チーズとビール、アップルパイはこちら

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