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【個性的すぎる映画館】「なぜ映画館なのか」を追求 極音・爆音上映の立川「シネマシティ」

アレンジ力でファンを魅了

 動画配信サービスなど、映画を見るためのチャンネルはどんどん増えている。「なぜ映画館なのか」の意味を作っていかなければならない、と遠山さんは語る。

 「やっぱり“映画館”という場は必要だと、日々確信しています。1990年代後半から2000年のゼロ年代にかけて、インターネットやスマホ等の飛躍的な技術の革新があった時代の反動なのか、ここ数年は改めて“リアルな体験への回帰”が求められていると感じています。たとえば、シネマシティでは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015)の極爆が大ヒットしました。重低音を音としてではなく物理的な震動として体感できる極爆は、音が持つ没入感アップの威力をわかりやすく理解できます。家では絶対に味わえないその没入感に、観客は魅了されたんです」

今年4月からスタートする「次世代映画ファン育成計画」告知ポスターの前で。シニア割の対象年齢引き上げ、夫婦50割の終了、24歳以下の有料会員料金値下げ、と挑戦的な内容だ(撮影:久田絢子)

 「どうせ同じ映画を見るならばシネマシティにしよう」と思わせる独自性や企画力は、「なぜ映画館なのか」に対する答えの一つだ。しかし遠山さんは、自身がアイディアマン的な扱いをされるのはちょっと違う、と感じている。

 「僕が一から新しい物を生んだ、という仕事はたぶんひとつもないんです。全部在りものをアレンジしているだけで。たとえば極爆。古くは『大地震』(1974)を上映するときに、地震の音を響かせるため映画館にスピーカーを持ち込んだんですよ。応援上映だって、ずっとさかのぼれば『ロッキー・ホラー・ショー』(1975)でやっていましたし。昔からそういう発想はあったんです。だから、新しい発想というよりは、以前からあったものをうまくアレンジして出すのが僕の仕事ですね」

シネマ・ワン1F外壁にはワンとツーそれぞれの上映作品のポスターがズラリと並ぶ。(撮影:久田絢子)

 映像と音を出すことのできる映画館という空間で、映画以外にも取り扱うコンテンツの幅を広げることにより、映画館自体の可能性が広がると遠山さんは考えている。

 「たとえば、舞台作品のコンテンツ上映はもっと広がって欲しいです。舞台って、座席位置によって作品理解にムラが生じますよね。前方の人は全体像が見えないし、後方の人は細やかな表情とかがわからない。でも映像上映なら、見るべきところはアップになるし、作品理解という点においては生鑑賞より上じゃないかと思っているんです。映像上映を見て、生の舞台を見たいと思う人も絶対出てくると思うし。

 音楽ライブ映像上映も、うちだったら大抵のライブハウスよりいい機材が入っていますし、極端な話、ゲーム大会やYouTuberの配信を見るイベントをやったっていい。そうやって、映画館で楽しめるコンテンツの幅を広げていけば、普段は映画館に来ない人も取り込めるかもしれない。新たなコンテンツが映画館に足を運ぶきっかけになって、『じゃあ映画も見てみるか、ってなってくれたらすごくうれしいですね」

これまでのような企画は今後できなくなる?

 この調子で突っ走って欲しいところだが、「そうはいかないかもしれない」と遠山さんは言う。

企画室室長・遠山武志さん(撮影:久田絢子)

 「今後、立川に新たな映画館が2つできることになっていたり、このエリアが一気に活性化するんです。立川という街が大きく変わる中、やはりシネマシティも変わらざるを得ない状況になっていくような気はしていて、今までみたいな自由すぎることもできなくなっちゃうのかなぁ、と思ったりしています」

 「その時になってみないとわからないですけど、これからどうなるんでしょうね」と繰り返す遠山さん。自由すぎる部分も含め、シネマシティらしさが失われてはならない。それはシネマシティファン、そして映画ファンの願いでもあると思う。たとえこの先に逆境が訪れたとしても、シネマシティというピンチに立たされた映画館が成長して強くなり乗り越えていく、そんな新たな物語の始まりが目に浮かぶようだ。

 これからも独自の「物語」を我々に提供し続けて欲しい。

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