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現代ロシアが見える映画では日本人も活躍! 映画でめぐるロシア・モスクワ②

 冷戦時代、ハリウッド映画の敵といえばソビエト連邦(ソ連。現在のロシア)がお決まり。名作に多く登場した「赤の広場」と、冷戦時代のシンボルでもある「ブンケル-42冷戦博物館」をまわったあとは、現在のロシアに近づいてみましょう。

 ハリウッド映画かつての「敵役」は今 映画でめぐるロシア・モスクワ①はこちら

なんか似ている?意匠が美しいモスクワ地下鉄

 「ブンケル-42」を見学していて、ふと気付きました。照明のデザインといい、階段に使用されたエレベーターのステップといい、どこかで見たような? そう、豪華な内装で「地下宮殿」とも称される モスクワ地下鉄です!

地下鉄はまさにモスクワ市民の足! 常に人で賑わっている(撮影:中山治美)

 ガイドいわく「ブンケル-42」を手掛けた人々が、地下鉄の建設にも携わったとのこと。

左/キエフ駅の壁画は観光客の写真撮影スポット 右/ブルーの装飾が映えるタガンスカヤ駅(撮影:中山治美)

左/照明デザインが駅によって異なるので、それを見ているだけでも楽しい 右/地下鉄内には立派なベンチが多数。構内の美術をゆっくり鑑賞できる(撮影:中山治美)

 モスクワの地下鉄が建設されたのはスターリン時代ですが、1992年までは「レーニン記念モスクワ地下鉄」という名称でした。そのため、今も各駅でレーニンの胸像を見ることができます。最近のモスクワっ子は、レーニンを「地下鉄を造ったおじさん」と勘違いしているとか。これも歴史の流れでしょうか。

地下鉄各所にあるレーニンの胸像。今どきのモスクワっ子はメトロの社長?ぐらいな認識なのかも(撮影:中山治美)

 モスクワは地下鉄巡りをしているだけでも楽しいのですが、2010年に地下鉄爆破テロがあった影響から、しばらく撮影がNGだった時期もあるようです。2018年のサッカーW杯ロシア大会で緩和されたようですが、ここもなかなか外国映画では登場しない場所でもあります。

マヤコフスカヤ駅上には「チャイコフスキー記念コンサートホール」がある。1階は「カフェ・チャイコフスキー」。店名にテンション上がります(撮影:中山治美)

現在のモスクワを映す『ライカ-Laika-』と『アイカ』

 そんなモスクワの厳しい撮影状況をかいくぐって、同地でオールロケを敢行したのが今関あきよし監督『ライカ-Laika-』(2016)です。米国との宇宙開発競争の最中、宇宙船スプートニク2号に乗せられたライカ犬に自身の境遇を重ねた日本人女性ライカ(宮島沙絵)と女優志望のユーリャ(クセーニア・アリストラートワ)の愛を描いたドラマです。

『ライカ-Laika-』DVD発売中 (c)2016 “LAIKA”Film Parners

 地下鉄や、歩行者天国となっている繁華街のアルバート通り、夜のライトアップが美しい 「救世主キリスト大聖堂」(救世主ハリストス大聖堂)やモスクワ川にかかる歩道橋が2人のドラマを盛り上げます。

救世主キリスト大聖堂。スターリンによって一度、爆破された悲しい歴史を持つ(撮影:中山治美)

 ロケ地選定などラインプロデューサーを担当したのが、ロシアで活躍している俳優・監督の木下順介。モスクワに拠点を移して間もなく9年とあって、観光客目線とは一味違う、モスクワっ子の日常が垣間見られる風景ばかり。一度同地を訪れた人なら懐かしさすら感じるでしょう。

冬のモスクワ川。川は凍っているが、建物のライトアップが川に反射し、美しく輝く(撮影:中山治美)

 先頃行われた 「第19回東京フィルメックス」で最優秀作品賞を受賞したセルゲイ・ドヴォルツェヴォイ 監督『アイカ(原題)』(2018)も、観光地ではないモスクワを舞台にした作品。他の大都市と同じく、移民問題が深刻となっているモスクワの今を描き、産んだばかりの新生児を病院に残し、借金返済のために職を求めてモスクワの街を彷徨う、キルギス出身の女性の話です。

『アイカ(原題)』はカンヌ国際映画祭で主演サマル・エスリャーモヴァが最優秀女優賞を受賞

 地下鉄も登場しますが、ほぼ移民が肩寄せ合って暮らす集合住宅や雪舞うモスクワの寒空。滞在中、木下さんがコーディネートを務めていた、俳優・岡村洋一主演の自主映画『サンクトペテルブルグ・パラダイス』(棚瀬雅俊監督、2020年公開予定)のモスクワ・ロケにも同行しましたが、氷点下で1時間も耐えられない寒さ。この寒さの中、アイカは産後の体調のすぐれない体で彷徨っていたかと思うと切なくなりました。

岡村洋一(写真中央)とは20数年来の俳優仲間であることから、岡村の主演映画『サンクトペテルブルク・パラダイス』のコーディネートを引き受けた木下順介さん(写真右端)。雪舞う中、ゴーゴリー並木通りなどで撮影を行なった(撮影:中山治美)

 木下さんは、ロシアのテレビ番組で、有名な日本人ランキング・ベスト10に入ったことがある有名人ですが、その上位を行くのが女優、栗原小巻。日本・ソ連合作映画『モスクワわが愛』(1974)でボリショイ・バレエに入団したバレリーナを演じており、いまだに現地での知名度は高いのだそうです。製作したソ連時代の国営映画会社モスフィルムではYou Tubeで旧作を無料公開しており、『モスクワわが愛』も視聴可。栗原の可憐さと共に、当時のモスクワの風景が堪能できます。

 シリア内戦への介入や民族紛争などいまだ戦争の影がちらつく一方で、芸術へのこの理解の深さ。モスクワを理解するには1週間の滞在ぐらいでは足りないようです。