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ハリウッド映画に登場したかつての「敵」といえば モスクワのいまと昔をたずねる ①

 冷戦時代、ハリウッド映画の敵といえばソビエト連邦(ソ連。現在のロシア)がお決まり。その流れを汲む『ロッキー』シリーズの新章『クリード 炎の宿敵』が2019年1月11日に公開されました。

©2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 旧ソ連時代も現在のロシアも、首都はモスクワ。そんなモスクワで2018年11月19日から12月2日開催された 「第52回日本映画祭」。黒沢清監督や李相日監督らが参加し、海外初の爆音上映などが行われました。今回はこの映画祭への訪問を機に、首都モスクワを探訪してみました。

52回の歴史を誇る日本映画祭に爆音上映が初上陸。会場となったカロ・オクチャーブリ劇場はモスクワ国際映画祭の上映会場でもある(撮影:中山治美)

意外と太っ腹? クレムリンのフィルムコミッション

 モスクワと言えば「赤の広場」です。ロシア政治の中枢「クレムリン」と、カラフルな玉ねぎ型屋根の「聖ワシリイ大聖堂」があり、同所がスクリーンに写れば一発で、「あっ、モスクワだ」と誰もが知る名所。

モスクワと言えばここ! 観光客で賑わう赤の広場。ショーン・コネリー主演『ロシア・ハウス』(1990)のオープニングなどでもおなじみ(撮影:中山治美)

 トム・クルーズ主演『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)では、このクレムリンを爆破! フィクションとはいえ、かのプーチン大統領(映画公開時はドミートリー・メドヴェージェフ大統領)も勤務するような場所を破壊するとは大胆な!と、度肝を抜かれたものです。ロシアを代表する作曲家ピョートル・チャイコフスキーが手掛けたバレエ音楽「くるみ割り人形」をディズニーが映画化した 『くるみ割り人形と秘密の王国』(2018)にも、クレムリンと聖ワシリイ大聖堂をモデルにしたようなお城が登場します。

カザン・ハン国に勝利した記念として1560年に竣工した聖ワシリイ大聖堂(撮影:中山治美)

 実際に広場に立ってみると、建造物の想像以上の大きさと荘厳さに圧倒されます。訪問したのはちょうどクリスマスシーズン。この時期は、同じく広場に面した 「グム百貨店」の運営するアイススケート場が登場し、モスクワっ子で大賑わい。今回で13回目だというので、民主化後の冬の風物詩のようです。

モスクワの冬の風物詩、赤の広場でのスケート(撮影:中山治美)

 と、一見平和そうに見える町ですが、地下鉄や百貨店、映画館など不特定多数の人が集まる場所の入り口ではセキュリティ・チェックがあるのが常識。町でも巡回している警察官の姿をよく見かけます。

旧ソ時代の面影を辿るなら「ブンケル-42冷戦博物館」

 冷戦は終わりを告げましたが、民族紛争によるテロ事件は続いており、そこはかとない緊張感を感じるのは事実です。それゆえに外国映画の撮影はなかなか厳しいものがあるようで、モスクワを舞台にした『ボーン・スプレマシー』(2004)も『ダイ・ハード/ラスト・デイ』(2013)も、『スターリンの葬送狂騒曲』(2017)も、クレムリンだけちょこっと写して、あとはハンガリーのブダペストやドイツのベルリン、ウクライナなどの他の国や都市で撮影しているようです。

『ダイ・ハード/ラスト・デイ』ブルース・ウィリスとジェイ・コートニー © 20TH CENTURY FOX

 撮影許可を得るのが難しいだけでなく、近代的な建物も増え、共同住宅「コムナルカ」のような旧ソ連時代の昔ながらの建物を写したいとなると他で探した方が早いという事情があるよう。モスクワで旧ソ時代の面影を辿りたい人には 「Bunker-42 Taganka」(ブンケル-42冷戦博物館)がオススメです。ここは核攻撃などに備えて、1952年に地下65mに建築された巨大地下壕。1986年まで実際に使用され、2006年以降は体験型の博物館として、予約制で一般公開されています。屈強なガイドに案内されて地下18階まで進むと、頑丈そうな金属壁で囲まれた通路がお目見え。

左/物々しい鉄の扉が入口 右/分厚い鉄壁で覆われた地下通路。見学者のみ歩かされ、突然、サイレンが鳴って明かりが消されるというデモンストレーションもあり(撮影:中山治美)

 さらに奥へ進むと、旧ソ連の第2代最高指揮者ヨセフ・スターリンの人形がちょこんと座った執務室や会議室、非常時長距離航空部隊司令部などがあり、そこには核ミサイル発射装置が設置されていました。発射台は当時使用されていた本物のようです。

スターリンの執務室。地下65mとは思えぬ豪華さ(撮影:中山治美)

 実際に執務室が完成したのは1954年春で、1953年に死去したスターリンが存命中に利用することはなかったそうです。一方で会議室は、重要な歴史的事件の作戦本部として使用されました。キューバの核ミサイル基地建設が明らかになった1962年、米ソの代理戦争へ発展「キューバ危機」の時です。

キューバ危機の時に使用されたという会議室(撮影:中山治美)

 同事件を題材とした映画といえばケビン・コスナー主演『13デイズ』(2000)が有名。大統領特別補佐官を演じたコスナーが米国側で右往左往している一方で、ソ連側はこんな地下深い場所で作戦を練っていたのかと想像すると、映画の緊張感が蘇ってくるようです。

レストランもあります! 旧ソ連チックな内装がたまらない(撮影:中山治美)

 <次回はいまのロシアを描いた話題作やモスクワ地下鉄を紹介!>

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