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【日本の映画祭】うどんのようにコシが強い?本広監督が手がけるさぬき映画祭

 ドラマ『踊る大捜査線』シリーズ、映画『UDON』(2006)、『幕が上がる』(2015)、劇場版アニメ『PSYCHO-PASS』(2014)などを送り出す本広克行監督がディレクターを務めるのが「さぬき映画祭」(香川高松市内ほか)だ。毎年、香川県内のシネコン「イオンシネマ高松東・綾川・宇多津」や県民ホール「レクザムホール」、高松のランドマーク「サンポート高松」内のホールなどの会場で開催される。

メイン会場の一つ「サンポート高松」からは美しい高松港が一望できる(提供:Avanti Press)

 第12回を迎えた今年2月は、『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)を先行上映。興収30億円を超える大ヒットはこの映画祭から始まった! ジャンルを飛び越え活躍する本広監督らしく、映画祭と銘打ちながらも、テレビあり、演劇ありとエンターテイメント色が強いのが大きな特徴だ。

 『カメラを止めるな!』は2017年11月に都内でプレミア上映し、業界で評判に。さぬき映画祭での先行上映会では東京から駆けつけた人もいて、満席の大盛況。その後、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭、ウディネ・ファーイースト映画祭などで上映され、6月の一般公開で一気に火がついたのだ。

 「上田監督の前作短編『テイク8』(2015)を上映させてもらったので、『カメ止め』もいち早く見せてもらいました。面白いと思いましたが、ここまで大ヒットするとは……。上田君は愛情を持って映画に接していて、素晴らしい。公開前だったので、『カメ止め2はどう?』とか、『もう少し有名な俳優を使って、セルフリメイクはどう?』という話もしたんですよ。『落ち着いたらやろう』と言ったんですけども、ぜんぜん落ち着かないですね」と本広監督は、その快挙を自分のことのように喜ぶ。

本広監督と映画祭の関わり

 本広監督は小5から香川県丸亀市育ち。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)進学後は東京暮らしだったが、40代で郷土愛に目覚め、香川県でロケを行なった『サマータイムマシン・ブルース』(2005)、『UDON』(2006)、『曲がれ!スプーン』(2009)の“さぬき三部作”を撮った。映画祭には2006年11月の第1回から映像企画コンテストの審査員として参加し、2012年に映画祭ディレクターに就任。毎年2月開催となった2013年からリニューアルに着手し、上映本数を大幅に増やした。翌年には映像制作会社「ロボット」も運営に加わり、よりエンタメ色が強くなった。

高松市内を走る高松琴平電気鉄道、通称「ことでん」(撮影:平辻哲也)

 映画祭の運営資金の一部はなんと、本広監督自身が集めている。「みなさんは『踊る大捜査線』の監督と喜んでくれるんですけども、『一地方の映画祭のディレクターですから』というと、協力してくれるんです。ありがたいですね。一口5,000円ですが、まるで選挙運動をやっているみたいですよ。今年から クラウドファンディングも始めたのですが、世の中が何を求めているのかが分かるので、面白いですね」と苦にはならない様子。

本広克行監督(撮影:平辻哲也)

 2013年には『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012)のムロツヨシ、2014年には『魔女の宅急便』(2014)の小芝風花、『永遠の0』(2013)の井上真央、ムロ、2015年には『幕が上がる』(2015)のももいろクローバーZ、2016年には『野のなななのか』(2014)の大林宣彦監督、『空気人形』(2009)の是枝裕和監督、ペ・ドゥナ、『家族はつらいよ2』(2017)の山田洋次監督ら豪華なゲスト陣が毎年、来場している。

『SETOUCHI THE MOVIE Sanuki film festival ver.』上映の様子。生演奏を行っているのは瀬戸フィルハーモニー交響楽団(撮影:平辻哲也)

 2018年の上映本数は101本! コンセプトは「映画だけじゃない、映画祭」。瀬戸内の美しい風景や人々の営みを描いたドキュメンタリー『SETOUCHI THE MOVIE Sanuki film festival ver.』(監督・尾野慎太郎、総監督・本広克行)の上映に瀬戸フィルハーモニー交響楽団の生演奏とトータス松本らの朗読、地元合唱団を織り交ぜ、オープニング。『亜人』(2017)の上映では綾野剛がサプライズで登場し、観客を喜ばせた。

『亜人』上映の様子。左からオラキオ、本広克行監督、綾野剛(撮影:平辻哲也)

 ほかにも、演劇の上演、登録者数150万人以上のYouTubeチャンネル「カズチャンネル」のkazuさんが登壇するイベント、北海道テレビの「水曜どうでしょう」と福岡・テレビ西日本の「ゴリパラ見聞録」というローカル局の人気バラエティがコラボして、番組を制作し、上映するという企画も。

左/本広監督と深夜イベント「さぬき真夜中の映画祭」のゲスト・行定勲監督 右/『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』上映のゲストで登壇したドラマ第1話出演の近藤芳正(撮影:平辻哲也)

「演劇やテレビもあって、映画祭というよりは毎日、文化祭をやっている感覚ですね。面白いと思った人に声をかけて、ほとんどの方に来ていただくことができました。さぬき映画祭が出会いの場、ハブのような存在になれば、と思っているんです」

2019年の映画祭はどうなる?

 2019年は1月13日(日)のプレ開催と2月9(土)〜11日(月・祝)の3日間の2部編成となる。「さぬきストーリー・プロジェクト」というショートフィルムのコンテスト、ワークショップ、シナリオコンクールのほか、若手監督の作品を積極的に紹介するなど発掘と育成にも力を入れた内容になるとのこと。過去には『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)の中野量太監督、『鍵泥棒のメソッド』(2012)の内田けんじ監督、『淵に立つ』(2016)の深田晃司監督、『トイレのピエタ』(2015)の松永大司監督のブレーク以前の短編作品などを紹介した。

12月9日(日)には 「うどん市場」「東京シネマサロンvol.1」(文化シヤッターBXホール)と題する特集上映会で、「さぬき映画祭応援作品特集〜さぬき映画祭ディレクター 本広克行監督が応援する監督たち〜」という催しもある。上映されるのは、松本穂香主演、大野大輔監督の『アストラル・アブノーマル鈴木さん』(2019年1月5日公開)と、片山慎三監督の『岬の兄妹』 (2019年3月公開)。本広監督が若い監督を相手にトークを繰り広げる予定だ。

 来場者を魅了するのは映画だけではない。香川といえば、うどん。さらには、骨付鳥(ほねつきどり)という名物もある。

香川名物・骨付鳥も食べられる 「うどん市場」(撮影:平辻哲也)

 本広監督のオススメは 「日の出製麺所」(香川県坂出市富士見町1丁目8−5)と 「長田 in 香の香」(香川県善通寺市金蔵寺町本村1180)だそうだが、高松市内にも名店がいっぱい。香川県オリジナル小麦さぬきの夢100%使用のうどんを、秘伝のかえし醤油を使った付け出汁でいただく名店 「うどん棒」((香川県高松市亀井町8-19 )もオススメ。うどんに飽きた人には小豆島の釜揚げそうめんもご賞味いただきたい。

高松市内の讃岐うどんの名店、うどん棒(撮影:平辻哲也)

 映画だけじゃない映画祭に、うどんだけじゃない「うどん県」。本広監督が愛情たっぷりに作る「さぬき映画祭」は、さぬきうどんのように、コシが強く、長く愛される映画祭となりつつある。

さぬき映画祭 WEB
映画・映像による地域文化の振興と香川の活性化を目的に、2006年にスタートし、来年2月、第19回を開催予定。上映会などのイベントだけでなく、シナリオ執筆の講座やショートムービーコンペティションなども開催し、映画・映像に携わる人材の育成にも取り組んでいる。

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