個性的すぎる映画館 ② 中国で初めて国産映画を上映した映画館「大観楼」~変わりゆく北京の中で伝え続けるモノとは

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 中国の首都、北京は長い歴史を持つ都市です。万里の長城や紫禁城こと故宮、頤和園、天壇といった世界遺産のほか、文化の面でも重要な場所がいくつも観光地化されています。今回は「中国で初めて国産映画を上映した映画館」を紹介しましょう。

老北京の面影を残す前門

 北京市の南に位置する前門エリアは、数百年前から往来と商業の中心地として栄えました。ランドマークは城郭都市時代の名残である「正陽門」です。多くの行商人や旅人がこの周辺に滞在し、お茶や靴、衣類などの老舗も多数店を構えました。2008年の北京五輪にあわせて大規模な修繕工事が行われ、いまは「老北京」(オールド北京を指す中国語)のテーマパークといえるかも。とはいえ、少し歩けば古い町並みが残り、バジェットトラベラー向けの安宿もまだまだ豊富です。

ライトアップされた正陽門(前門)。2000年代初頭までは路面電車が走る「北京の浅草」でしたが、現在はスターバックス コーヒーやMUJI HOTELなどが出店する国際的観光地に。門の北側は毛主席記念堂と天安門広場です(写真:goo映画編集部)

 「正陽門」から南へ伸びる前門大街には、北京ダッグの老舗「全聚徳」も。日本はもちろん、中国で食べても数千円する高級料理ですが、本店であるこの前門店には使い捨て食器と紙コップで供されるお手ごろセットがあります。1人前130元ほどでさっと食べられるため、地元の人も便利に利用しているようです。ただし、通常メニュー用のレストランとは入り口が別。通りに面したドアから入りましょう。

全聚徳のマスコットキャラクターは意外とカワイイ。こちらは通常メニュー用の入り口です(写真:goo映画編集部)

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前門大街から大柵欄へそぞろ歩き

 前門大街のなかほどを横切る道は、東側が鮮魚口街、西側が大柵欄です。鮮魚口街は「小吃」(しゃおちー)と呼ばれる軽食の飲食店が並びますが、ここはおみやげ探しに適した大柵欄へ。約270メートルの通り沿いに、お茶の「張一元」や薬の「同仁堂」、シルク用品の「瑞蚨祥」といった北京の老舗が集まっています。休日の人並みは約20万人だとか。

シルク織物の「瑞蚨祥」。店内にはお手ごろ価格の普段用チャイナドレスも(goo映画編集部)

 清から民国時代に栄えた大柵欄、商店以外にも当時の名物は多く存在しました。周辺には京劇の有名劇場が集まり、買い物と芝居見物、食事が一度に楽しめる大繁華街だったのです。そして「中国映画誕生の地」とされる映画館「大観楼」も、この大柵欄にあります。

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初めて上映された中国国産映画は京劇だった

 「大観楼」のオーナーだった任慶泰は、大工から西太后の専属カメラマンと異例の出世を果たした人物です。日本で写真を学んだ彼は帰国後に開店した写真館が大繁盛。ビジネスに先見の明があったようで、1902年には経営していた大柵欄の「大享軒茶戯園」を「大観楼」に改名し、1903年には海外映画の上映を始めました。

建設当時の「大享軒茶戯園」はお茶と戯芸を楽しむ場所。1903年からは映画館として上映を始めました(goo映画編集部)

 映画撮影への情熱は、西太后の誕生祝いで発生したトラブルがきっかけだったそう。英国大使が祝いとして準備した映画上映は、発電機の事故であえなく中止されました。以後、皇宮では「映画は不吉」とされましたが、任慶泰の情熱は冷めません。カメラマンとして交流があった京劇俳優に協力を依頼し、1905年の秋には写真館近くの広場で京劇演目「定軍山」の一部を撮影。これが中国で初めて撮影された国産映画となります。

劇場へ入るとすぐに任慶泰の胸像。上の写真は中国映画創成期の大スターたちです。(goo映画編集部)

 完成後の映画『定軍山』は「大観楼」で上映されました。これより「大観楼」は映画館として本格的に発展し、1913年には中国人が開業・経営する北京初の「専業映画館」となります。さらには、北京南部でもっとも早い男女同席の導入やフランス製35mm映写機の購入など、革新的な経営で周囲を驚かせました。

館内のカフェエリアには映画『定軍山』を撮影した当時の写真が。(写真:goo映画編集部)

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中国の歴史とともに歩いた映画館

 1932年に任慶泰が死去した後も、中華民国の滅亡と中華人民共和国(中国)の成立、世界大戦などの激動を経て、1962年には北京初のシネラマ映画館に。1992年には北京市文化局から「一級影院」(一級の映画館)に指定されました。

リニューアルで建設当時のレトロムードに戻った売店(写真:goo映画)

 そして、任慶泰が『定軍山』を撮影した1905年から100年後、中国映画誕生100周年にあたる2005年には大規模なリニューアルが行われました。館内には展示スペースが設けられ、ちょっとした博物館になっています。

歴史がいっぱいつまった館内ですが、チケットシステムは最新。上映作品も一般的な最新作に

 リニューアルで館内のレトロテイストは強調されましたが、上映作品は最新作&チケットシステムも近代的。ここに少しだけ、任慶泰の姿が見えるような? 情熱と好奇心で突き進み、伝統と最新技術を混ぜ合わせて「最初の中国映画」を作った任慶泰。いまの時代に生きていたなら、あらゆる最新技術に目を輝かせていたでしょう。

熱心に撮影する任慶泰たちの姿はを銅像で再現(写真:goo映画編集部)

 どこの国や地域でも、映画の創成期には情熱と好奇心がつきものです。技術や表現の発達も、すばらしいものを求める気持ちがあってこそ。この「中国映画誕生の地」には、いつまでも覚えていたい教訓がつまっています。

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大観楼
住所 中国北京市西城区前門大柵欄街36号