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【個性的すぎる映画館】日本映画誕生の地・京都で映画文化を繋ぐ複合施設「出町座」

 1897(明治30)年、リュミエール兄弟が発明したシネマトグラフが日本で初めて上映された「日本の映画誕生の地」で、数多くの撮影所がある映画の街、京都。2017年12月に誕生したのが「出町座」だ。

出町座外観(撮影:平辻哲也)

 地下1階と2階に2スクリーン、1階はカフェ&書店、3階はギャラリーやイベント、講座など様々に使えるフリースペースという複合施設。1階では食事、アルコールを楽しみながら、読書もできる新たなカルチャーの発信地だ。

映画・食事・本の全てを楽しめる贅沢な空間

 「出町柳駅」(京阪、叡山電鉄始発駅)から徒歩で約5分。食べログ「百名店2018」にも上げられ、行列ができる和菓子店「出町ふたば」を横目に、昔ながらの雰囲気漂うレトロな出町桝形商店街のアーケードを入ると、「出町座」が姿を見せる。地上3階建ての建物は元薬局。それを大規模リノベーションした。

「出町座のソコ」看板(撮影:平辻哲也)

 ロビー及び、カフェ 「出町座のソコ」と書店 「CAVABOOKS」が入る1階が素晴らしい。洒落たインテリアに囲まれた空間は開放感があり、機能的。壁にある天井高の本棚には、映画を中心にカルチャー系の雑誌、書籍、小説が並び、中央のキッチンを取り囲むようにして、カウンター席が用意されている。

店内の様子(撮影:平辻哲也)

 テーブルの上には、来場した監督、キャストがサインした色紙ならぬプレートが目を引く。『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督、『この世界の片隅に』の片渕須直監督のものもある。

特製スパイスカレーライス(撮影:平辻哲也)

 映画を観て、本を買い、読む。お腹が空いたら、軽食も。名物はじっくりと煮込まれた特製スパイスカレーライス(800円)。気分がよければ、瓶ビールなどアルコール類をどうぞ。私は2杯いただいちゃいました。

劇場の様子(撮影:倉本あかり)

 劇場は地下1階(42席)と2階(48席)の2スクリーン。音響は5.1chサラウンド。映写機はデジタル設備のほか、16mm、8mm上映もできる。ミニシアター系の作品を中心に、時間代わりで10本前後を上映しており、ここなら、1人でも、気の合う仲間とも、1日中いられそうだ。地下の劇場で、何度目かの『カメラを止めるな!』を観たが、ほぼ満席の大盛況だった。

新天地を求め…出町座設立のきっかけ

 「上映作品をいっぱい抱えているので、10月12日でやむなく打ち切りましたが、一番入ったのは『カメラを止めるな!』です。『バーフバリ』も人気でした。東京にはいっぱい映画館がありますが、京都では(一般映画館としては京都で最古の)京都みなみ会館さんも3月で閉館になりましたし、館数が圧倒的に足りないと感じています。だから、できるだけたくさんの作品をかけたいと思っています。作品が多ければ、お客さんが映画を観る機会も増えるはずですから」

 こう話すのは出町座を運営する 「シマフィルム」の田中誠一さんだ。静岡県沼津市出身、京都外国語大学卒。京都国際学生映画祭スタッフとして映画上映に携わり、いくつかの劇場スタッフを経験。京都、大阪で自主上映企画を実施しつつ、映画祭運営、映画制作に参加。関西の劇場映画宣伝を経て、柴田剛監督のデビュー『おそいひと』(2004)の公開に携わったことを機に、京都を拠点に独自の映画製作を続ける「シマフィルム」に入社した。

店内に並ぶ映画監督のサイン(撮影:平辻哲也)

 シマフィルムは、相米慎二監督の『風花』(2000)、森﨑東監督の『ニワトリはハダシだ』(2003)、若松孝二監督の『17歳の風景 少年は何を見たのか』(2005)など巨匠の作品を製作、小林聖太郎監督の『かぞくのひけつ』(2006)など才気ある若手のデビュー作を送り出してきた。2013年から新たな映画事業に乗り出し、田中さんはその中心人物となった。

 シネマトグラフが日本で初めて投影されたことから、〈日本映画原点の地〉と呼ばれる立誠小学校(廃校)で、教室を映画鑑賞用にカスタマイズした上映スペース「立誠シネマ」と、俳優や脚本、プロデュースなどを学べるスクール「シネマカレッジ京都」を行う「立誠シネマプロジェクト」を展開。しかし、管理者である京都市が学校跡地活用事業を方向転換したため、2017年8月に撤退。田中さんらは「せっかく根付いた映画文化を存続させたい」と新天地を求めた。

出町座が大切にしていること

 クラウドファンディングで支援者を呼びかけ、724人から約941万円を集め、仏パリのグランカフェで行われたシネマトグラフ世界初の一般公開日と同じ12月28日にオープン。以来、映画上映に合わせたトークイベントなども数多く開催し、ブック&カフェも賑わいを見せている。

ブック&カフェ「出町座のソコ」の壁一面に本が並ぶ(撮影:平辻哲也)

 「開館資金は会社で用意し、ファンドは出町座の仲間になってもらおうと呼びかけました。『立誠シネマ』の時にも感じていたことですが、単に映画を観せるということだけをやるのは限界があると思っています。映画は、日常の地続きにある非日常。映画をDVDで観るというのは『映画を観る』とは言わないんじゃないか、映画は持ったり、触ったりできない“観る体験”というのが僕の勝手な持論です。その非日常の体験を提供したい。普通、映画館に来るお客さんは映画を観る前後で、本屋や喫茶店に入ったり、食事したりということをやっているはず。ならば、それを一つにしたら、いいんじゃないかと思ったのです」と田中さん。

出町座を運営する田中誠一さん(提供:出町座)

 開館から約10か月。商店街には人通りも増え、街も活気付いてきた。田中さんが大切にしているのはお客さんとのコミュニケーション。入り口での声かけは毎日、欠かせない。「小さなスペースだから、できることがあるはず」と話す。

 どこか温かみを感じる出町座は、街の新たなシンボルとなりつつある。

出町座 WEB
住所 京都市上京区今出川通出町西入上ル三芳町133
電話番号 075-203-9862
営業時間 10:00台〜23:00台(日によって変動)


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