映画祭でめぐる日本 ② 映画ファン流の観光で北海道を支援!~ゆうばり国際ファンタスティック映画祭

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 2018年9月に発生した北海道胆振東部地震後、観光客が激減し、356億円以上の大減収に直面している北海道。JR北海道は観光需要を復活させようと、北海道・東北新幹線が約半額になる期間限定の割引切符「お先にトクだ値スぺシャル」WEB を発売中。政府も1泊あたり2万円を上限に、日本人旅行者の場合、最大3泊まで宿泊費の50~70%が補助される「北海道ふっこう割」WEB を始めた。

 普段よりも安く行けて、復興の助けにもなる北海道旅行。そんな中でも、映画ファンにぜひ訪れて欲しい場所がある。映画の町、夕張だ。

あの有名監督の作品にも影響!

 空の玄関口・新千歳空港から約40km。バスや車で約1時間とアクセス至便な夕張。高倉健主演、山田洋次監督の名作『幸福の黄色いハンカチ』(1977)や吉永小百合主演、行定勲監督の『北の零年』(2004)などのロケ地としても知られ、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」(ゆうばりファンタ)が冬の風物詩だ。

映画祭に登場した北海道物産センター夕張店のマスコットキャラクター、メロン熊(撮影:平辻哲也)

 国内外からSF、ホラー、アドベンチャーなど、エンタテインメント性豊かなジャンルの映画が集まるゆうばりファンタは1990年、仏「アボリアッツ・ファンタスティック映画祭」をモデルにして誕生した、日本で唯一「ファンタスティック」の冠がつく映画祭。かつての炭鉱の街・夕張を観光地として活気づけようと夕張市が主導した。2007年に夕張市が財政破綻してからも、地元市民の力で復活し、映画の灯を守り続けてきた。

街中にはかつての映画の看板が並んでいる(撮影:平辻哲也)

 昭和30年代の炭鉱最盛期には17あった映画館は今では1館もないが、商店街には、懐かしい名画の手書き看板が並ぶ。若き日のクエンティン・タランティーノ監督はこの地で、『パルプ・フィクション』(1994)のシナリオを書き、『キル・ビル』(2003)では感謝の思いを込めて、”GOGO夕張”なる登場人物(栗山千明)も出演させた。ホウ・シャオシェン監督の『珈琲時光』(2003)のロケ地が夕張になったのも、同映画祭の審査員として監督が夕張市を訪れたことがきっかけ。『22年目の告白―私が殺人犯です―』(2017)の入江悠監督、『味園ユニバース』(2015)の山下敦弘監督もゆうばりファンタ出身者だ。

世界で一番楽しい映画祭

 ゆうばりファンタは「世界で一番、楽しい映画祭」をキャッチフレーズに掲げている。筆者もその魅力に取り憑かれた1人で、95年(第5回)から何度も参加した。上映作品はもちろんのこと、雪上で行われる「ストーブパーティ」や毎夜の酒宴が楽しい。夕張駅前の「ゆうばり屋台村」や旧市街の飲み屋街には、映画関係者、映画ファンが集い、映画談義に花が咲く。

ストーブパーティの様子(撮影:平辻哲也)

 2019年のゆうばりファンタは従来の5日間開催を短縮し、2019年3月8日から10日までの3日間、「ゆうばりホテルシューパロ」 WEB ほか市内で開催予定。招待作品、オフシアターコンペ、ショートコンペ、ゆうばりチョイスほかトークイベントを企画し、現在、具体的な内容を詰めている段階という。

2019年は鉄道にちなんだ企画や“叛逆組”の運動も

 「NPO法人ゆうばりファンタ」理事の千石慎弥氏は「石勝線夕張支線が2019年3月末で廃線となるので、地元の『ありがとう夕張支線実行委員会』WEB と相談し、長年市民や観光客の足を守ってくれたJR北海道様に、ありがとうの気持ちを込めて鉄道にちなんだ企画なども準備し、夕張市でお出迎えしたいと考えています。また、2020年アニバーサリー開催を目指し、一度3日開催にして足元を見直しますが、3日開催でも5日開催分楽しんでもらえるよう企画を準備したい」と話している。

2019年3月末廃線の夕張支線を走る「キハ40形気動車」(撮影:平辻哲也)

 一方、「ゆうばりファンタが近年つまらなくなった」と、そのあり方に一石を投じようと2018年、「ゆうばり叛逆映画祭」を同時期開催した映画監督、特殊造型プロデューサーの西村喜廣氏ら“叛逆組”も2019年に向け始動した。どんな相乗効果が生まれるのか期待したい。

名作のラストシーンも!夕張の「映画を感じる」観光スポット

 映画祭は少し先のお楽しみだが、夕張には映画を感じられる観光スポットがいくつもある。いま、“鉄ちゃん”の注目を浴びているのは2019年3月31日をもって廃止される新夕張〜夕張間の16.1kmを結ぶ夕張支線だ。1日5往復しかないため、夕張駅を降りてもすぐに折返し便に乗り込む人が多いそうだが、1つ手前の「鹿ノ谷駅」で降りてもらいたい。

夕張鹿鳴館(撮影:平辻哲也)

 鹿ノ谷駅から徒歩8分の場所には「夕張鹿鳴館」がある。所有会社の経営不振で3年間閉館していたが、夕張でホテルやスキー場を経営する元大(げんだい)グループが買収し、10月に再オープンしたばかり。夕張鹿鳴館は北海道炭礦汽船株式会社が1913年、役員の交歓や来賓の接待のために建てた本格的な和風建築。夕張の石炭産業の栄華を象徴する施設として2007年には近代化産業遺産に認定され、2011年には国の登録有形文化財となった。贅を尽くし、芸術性の高い内装や調度品が見どころ。1999年にはNHK連続テレビドラマ小説「すずらん」のロケでも使われた。

幸福の黄色いハンカチ思い出ひろばの長屋(撮影:平辻哲也)

 ここから車で5分ほどの距離、線路を挟んだ向こう側には「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」WEB がある。『幸福の黄色いハンカチ』の主人公の島勇作(高倉健)と妻・光枝(倍賞千恵子)が再会を果たしたラストシーンが撮影された場所。五軒長屋の炭鉱住宅を改装した内部には、来場者が幸せを願って書いた “黄色い手紙”が四方の壁を埋め尽くし、実際に使われた赤いファミリアも展示。モニターからは名場面が流されているので、しばし見入ってしまうのは間違いなし。冬季には雪深くなるため、営業は11月上旬まで。

ファミリアと壁を埋め尽くす“黄色い手紙”(撮影:平辻哲也)

 夕張駅から3kmほどの距離にあるテーマパーク「石炭の歴史村」では『北の零年』のセットを見ることもできる。隣接する「夕張市石炭博物館」WEB も2018年4月にリニューアルオープンしたばかり。石炭博物館本館・模擬坑道を全面改修し、2年ぶりに全施設を完全公開。30年以上変化がなかった本館展示を一新したという。筆者が訪れたのは改装前だが、ヘルメットをかぶって探索できる「模擬坑道」WEB はインディ・ジョーンズのような気分を味わえた。

模擬坑道(撮影:平辻哲也)

 宿は「ゆうばりホテルシューパロ」 WEB か、「ホテルマウントレースイ」 WEB で。どちらも大浴場があり、天然温泉で旅の疲れを癒やすことができる。グルメファンに勧めたいのはシューパロ裏の老舗ラーメン店「のんきや」、夕張のカレーそば発祥の店「藤の家」の味を受け継ぐ「吉野家 本店」。絶対に気に入ってもらえる自信あり。

おトクな値段で観光することが復興支援に

 鈴木直道夕張市長にも現状を聞いた。

鈴木直道夕張市長(写真は2012年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭開催時のもの。撮影:平辻哲也)

 「夕張は元気です。炭鉱の閉山、財政破綻というピンチをチャンスに変え乗り越えてきた街です。今回は地震と、その後の風評被害により、2,900件(9月末現在)をこえる宿泊キャンセルがありましたが、このピンチも『ふっこう割』などを活用し、国内外の皆さんが夕張を訪れるチャンスに変えていきたいと思います。ぜひ、夕張へお越しください!」

 観光地を見て、食べたり、飲んだり……。それが北海道の支援になる。行くのは今しかない!

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 Yubari International Fantastic Film Festival WEB
2019年3月8日から10日まで