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【映画祭で食べよう】タコ鍋と焼肉:釜山国際映画祭・韓国

 年間4~5回海外映画祭に参加する筆者。どの映画祭に参加するか? 決め手となるのは美味しい食事。酒と料理が不味い地域の映画祭には、できるだけ行かないことにしている。

急成長するアジア最大級の映画祭! スターとの交流も醍醐味

 韓国・釜山(プサン)を訪問する度に実感します。「映画祭が、街をここまで変えるのか!」と。

2011年に完成した、BIFFの拠点・映画の殿堂(釜山フィルムセンター)(撮影:中山治美)

 東京国際映画祭から遅れること11年後の、1996年にスタートした釜山国際映画祭(以下、BIFF)。当初は、イ・ビョンウ監督の映画にもなった国際市場もある、南浦洞(ナムポドン)を中心に開催されていました。それが2011年に、地上9階・地下1階建の専用館「映画の殿堂」を、東京・お台場を彷彿とさせるセンタムシティにどーんと建造。それに伴い上映会場やマーケット会場などを同じ海雲台(ヘウンデ)区に集約しました。

チャン・ドンゴンとユナの司会で行われた第22回のオープニング・セレモニー。会場は「映画の殿堂」の4000人収容のBIFF シアター(c)Busan International film festival

 中でも目覚ましく変貌を遂げているのが、トークイベントが行われるBIFFビレッジやホテルが立ち並ぶ海雲台ビーチ。ユン・ジェギュン監督『TSUNAMI-ツナミ-』(2009)で津波被害を受けていた、あのエリアです。道路は整備され、多数あったモーテルは次々とシティホテルにリノベーションされ、すっかり高級リゾートの趣。期間中、約20万人が集まる世界ブランドの映画祭へと成長したのですから、洗練されていくのは当然かも知れません。

開催中BIFFビレッジが設営される海雲台ビーチ(撮影:中山治美)

第22回の「アジア映画の窓」部門に映画『あゝ、荒野』(2017)が選ばれ、BIFFビレッジでトークイベントを行なった(写真左から)岸善幸監督、ヤン・イクチュン、菅田将暉。BIFFは映画スターとファンの交流イベントが豊富なので、映画のチケットが取れなくとも諦めないで!(c)Busan International film festival

コンビニでキンパプ、フードコートでチゲ……甘いものは別腹!

 食環境も充実しています。 「映画の殿堂」にはカフェやレストランも完備。上映会場のCGVセンタムシティは新世界センタムシティ、ロッテシネマ・センタムシティはロッテ百貨店センタムシティと巨大デパート内にあり、地下のフードコートへ降りればチゲでも寿司もなんでもござれ。海雲台ビーチ・エリアへ行けば日本以上にコンビニがあり、これまた日本以上に具材豊富なおにぎりやキンパプ(韓国式海苔巻き)を頬張りながらパソコンに向かうのも可能です。

左/cafe pascucci (カフェ・パスクチ)海雲台店のプルコギ・パニーニ。ファースト・フード店で出会う韓国ならではの味を発見するのも楽しい 右/新世界百貨店地下にあるフードコートのスンドゥブ(純豆腐)チゲ。町中よりお値段ちょっと高め(撮影:中山治美)

グローリーコンド海雲台ホテル前にある屋台村パダマウル(撮影:中山治美)

 映画祭関連パーティーも連日あり、ここまでくると注意すべきは膨満感。とはいえついコンビニに立ち寄っては、大好物のチャルオクスス(もちとうもろこし)アイスに手を伸ばしてしまうのですが。ハイ、アイスは別腹です。

海雲台市場で釜山を味わおう! 贅沢オデンにプルコギご飯

 でも忙しさにかまけていると、大事な事を忘れがちです。匂い立つような“釜山らしさ”を味わってないじゃないか! と。

 そこで向かうはBIFFビレッジからも程近い市民の台所・海雲台市場へ。一歩通りに足を踏み入れると釜山名物のコムジャンオ(ヌタウナギ)専門店から定食屋に屋台グルメetc……と、ウィンドウ・ショッピングならぬ、ウィンドウ・イートだけでもテンションが上がります。

これぞ釜山! 海雲台市場(撮影:中山治美)

海雲台市場は韓国のB級グルメの宝庫。見た目にも美味しそうなオデンやティギム(天ぷら)、トッポッギが食欲をそそります(撮影:中山治美)

 匂いに誘われ韓国B級グルメの定番オデンの出汁を覗いて見ると、贅沢にもカニが浸かっているじゃないですか。さすが、海の町。昼は食堂でプルコギご飯、夜には海鮮料理専門店でフェ(刺身)を味わいましたが、朝昼晩+間食まで一日すべての食事を市場で賄えそうです。

左/海雲台市場の食堂で味わったプルゴキご飯 右/オデン出汁にカニが! 良い味出してます(撮影:中山治美)

左/海雲台市場の魚料理専門店のフェ(刺身)盛り合わせ。ヒラメやスズキなど、魚は店のアジョシ(おじさん)にお任せ 右/フェ(刺身)を注文したらもれなく出てくるおかずの数々。ソラ(小さな巻貝)はチューチュー中身を吸い出しましょう(撮影:中山治美)

シメまでぺろり。“釜山式” ナッチポックン

 魚介といえば、海雲台駅からビーチに向かう亀南路(クナムロ)に、釜山式ナッチポックンの店「ケミチッ海雲台店」(釜山広域市海雲台区佑洞1338 2階※店名はケミチプとも)があります。

ケミチッのナッチポックン(イイダコのピリ辛鍋)。出来上がったら具材をご飯や海苔と混ぜて召し上がれ(撮影:中山治美)

 “釜山式”と書いたのは、ナッチポックンと言えば手長タコの炒め物のことですが、釜山ではタコ鍋のことを指すからです。

左/ケミチッ初来店者には、アジュンマ(おばさん)が食べ方を教えてくれます 右/ナッチポックンが美味しく出来上がりました(撮影:中山治美)

 野菜や薬味と共にタコをグツグツ煮た具は、ピリ辛の向こうにタコの旨味が広がっていて、ついついご飯も進みます。さらにシメに乾麺を投入。これで、出汁を吸った麺と共にスープまで一滴残らず完食です。映画祭で疲れた胃には、やっぱり温かい汁物が身も心も癒しますね。

絶対行きたい! 人気焼肉店オバンジャン

 もちろん焼肉は外せません。オススメは人気店「オバンジャン」(釜山広域市海雲台区佑洞542-11)。

ジュ(焼酎)の瓶で型どった緑のハートが目印。焼肉店オバンジャンの外観 右/真ん中で焼肉、周りでキムチやケランチム(韓国式茶碗蒸し)を焼くのがオバンジャンのスタイル(撮影:中山治美)

 亀南路からホテル街へと進んでいき、テラス席がやたら人で賑わっている店があるなぁーと思ったら、そこです。

焼肉の周りでキムチやケランチム(韓国式茶碗蒸し)を焼くのがオバンジャンのスタイル(撮影:中山治美)

 同店の特徴は、1つで3つの料理が味わえる鉄板。真ん中で肉を焼きながら、その周囲で焼きキムチやナムル、ケランチム(韓国茶碗蒸し)が出来上がる仕組みです。ケランチムは茶碗蒸しというよりは卵焼きに近いけど、出汁が効いていて、焼肉の箸休めにぴったりの優しい味。追加注文すれば、店員がヤカンに入れた溶き卵汁を鉄板の溝に注いでくれます。

映画も料理も楽しみたい!

 さて、いよいよ第23回釜山国際映画祭は10月4日~13日に開催されます。第19回では、政府の意を汲んだ釜山市長の中止要請を振り切って、セウォル号沈没事故の真相を追ったドキュメンタリー映画『ダビング・ベル/セウォル号の真実』(2016)を上映したところ、当時のイ・ヨングァン執行委員長が事実上の更迭をされるなど、ここ数年はゴタゴタが続いていました。

第21回は映画祭をボイコットする韓国映画人もいたが、ユ・ジテはイ・ヨングァンのサポート・パーティーに堂々と参加し、映画祭スタッフを励ました(撮影:中山治美)

 しかしパク・クネ政権が終わり、市長も変わった今年は、ヨングァンが理事長としてカムバック。再スタートを切るBIFFをぜひ見守りましょう。映画祭が楽しくないと、せっかくの料理も美味しく感じられませんものね!

釜山国際映画祭 Busan International Film Festival WEB
1996年に創設され、毎年10月に韓国・釜山で開催される国際映画祭。アジア最大級ともいわれ、映画の売買を行なう「アジアン・フィルム・マーケット」なども併設されている。日本映画の上映も多く、昨年は是枝裕和監督の『三度目の殺人』や岸善幸監督の『あゝ、荒野』ほか、アニメでは湯浅正明監督の特集上映も行なわれた。


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