地下には試写室も…人気脚本家・柏原寛司さん夫妻のカフェは映画ファンの隠れ家~人形町三日月座

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 東京駅まで約1.6キロ、徒歩20分強の好立地でありながら、江戸情緒が色濃く残る人形町。そのメインストリートに、映画関係者や地元の人に愛される隠れ家的カフェ「人形町三日月座」(中央区日本橋人形町1-15-5 柏原ビル2階)TWITTER がある。

人形町三日月座を経営する柏原寛司さん夫妻(撮影:平辻哲也)

『探偵物語』(1979-1980)、『プロハンター』(1981)、『あぶない刑事』(1986-1987)、『ルパン三世』シリーズ(1985年以降)などで知られる人気脚本家・柏原寛司さんと久美子さん夫妻が営む「人形町三日月座」だ。壁には映画のポスター、グッズが並べられ、趣味満載。聞けば、元々は映画館にするつもりだったのだとか……。

おしゃれとハードボイルドが絶妙に共存するカフェ

 阿部寛主演でドラマ、映画化された東野圭吾原作の『新参者』シリーズ(2010)の舞台としても知られる人形町。東京メトロ水天宮前駅の8番出口から人形町方面に徒歩1分。蕎麦屋「松竹庵」の看板が目印。昭和レトロな趣あるテナントビルの2階に、そのカフェはある。

店舗外観(撮影:平辻哲也)

 カントリー風の白い木製ドアには「coffee & pictures」の看板。カウンター席を含めて18席。店主は妻の久美子さん。

店舗入口(撮影:平辻哲也)

 かわいらしいインテリアや三日月を写した連作写真パネル(久美子さん撮影)に混じって、『仇討』(1964)、『大菩薩峠』(1966)、『上意討ち 拝領妻始末』(1967)、『侍』(1965)、『風林火山』(1969)といった男らしい時代劇のポスターがミスマッチ(失礼!)に並んでいる。

店に入ると珍しいポスターが並ぶ(撮影:平辻哲也)

奥を見れば、黒澤明監督の『七人の侍』(1954)、『隠し砦の三悪人』(1958)、『蜘蛛巣城』(1957)もズラリ!

柏原寛司さん(撮影:Avanti Press)

「脚本家の大先輩、橋本忍さんが7月に亡くなられたので、追悼の思いを込めて、作品を集めました。ポスターは月に1回くらい変えています。コレクションはいっぱいあるので。『仁義なき戦い』(1973)、『仁義の墓場』(1975)とか、深作欣二監督のポスターを飾った時は、(久美子さんから)“残虐すぎて、店の雰囲気に合わない”と止めてほしいと言われたけどね……」と寛司さん。

三日月座はどのようにして誕生したのか?

 夫妻は、俳優の柴田恭兵らが所属する草野球チームの選手とマネージャーという立場で知り合い、今年で結婚26年目。ハードボイルドな作風で知られる寛司さんはジョン・ウェイン、スティーブ・マックィーン主演作、ジョン・フォード監督作などアクションものが大好き。

久美子さんお気に入り『フォロー・ミー』(1972)のポスター(撮影:Avanti Press)

 一方の久美子さんはカメラと俳句が趣味。動と静。好きなものはまったく違うが、カフェのインテリアは、夫妻の互いの好きなものがそれぞれの領域で絶妙に共存している。

店主の柏原久美子さん(撮影:Avanti Press)

 カフェ開店のきっかけは「人形町で再び映画館の灯を灯したい」という熱い思いだった。寛司さんは人形町で江戸時代から続く4代目。小さい頃、人形町には7軒の映画館があったが、今はゼロ。そこで、ビルの地下を映画館にして、2階をロビーにしたいと考えた。

店内には映画の本やDVDも並ぶ(撮影:平辻哲也)

 ネットオークションで新古品の35ミリ映写機を見つけると迷わず購入。しかし、消防法の規制で、映画館営業の許可が降りないことが判明。そこで、地下は寛司さんの制作会社の試写室に、事務所だった2階はカフェに改装。「三日月」が大好きという久美子さんと、映画館と言えば「○○座」という寛司さんの思いが重なって、「人形町三日月座」が2009年9月にオープンした。

「お麩」のフレンチトーストも見逃せない!

「最初は『2階に自販機でも置くから、映画館の切符のもぎりでもやってくればいいから』という話でした。それくらいなら、と思っていたんですが、映画館がダメになったので、『ここでカフェでもやれば?』と言われたんです。でも、私は基本、人見知りなので、客商売は合っていないと思うんですよね。」と久美子さん。

サイフォンで淹れたコーヒーと麩レンチトースト(撮影:Avanti Press)

 看板メニューは、香り立つサイフォンコーヒーと、日本古来の「お麩」をフレンチトースト風に調理し、季節のフルーツとアイスクリームを添えた「麩レンチトースト」(450円)。味噌汁の具として、おなじみの「お麩」が見事に洋風に変身。ふわりとした食感がデザートとして楽しめる。コーヒーとの相性もバッチリだ。

 ランチタイムは周辺のOLのオアシス。ゆっくり読書をしながらカフェを楽しむ姿が見られる。

これぞ映画好きのロマン! 地下の試写室は貸切の映画館のよう

 地下の試写室にも特別に入らせていただいた。35ミリと16ミリの兼用映写機と35ミリ専用映写機が入った本格的なもの。ブルーレイ&DVD用のプロジェクターもある。座席数は25席(補助席合わせ30人収容)。

地下の試写室。貸出も行なっている(撮影:平辻哲也)

 自社作品の試写のほか、若手監督作品の試写、毎日映画コンクールの審査試写、かつては東京国際映画祭のチェック試写にも使われた。この日は「あいち国際女性映画祭2018」に出品されるドキュメンタリー映画『まわる映写機 めぐる人生』(森田惠子監督)の試写だった。

35ミリ映写機(撮影:Avanti Press)

「試写室の貸出は俺のスケジュールが空いている時だね。商売っ気はない。道楽だよ。地下は映画館ごっこ。好きな連中と映画を見るのは楽しいんだ。2階はカフェごっこ。お客さんが来たくても、そもそも営業時間は短いし、休みも多いから、会社勤めの人は難しいよね」と寛司さん。

 いやいや、これぞ、本格的な隠れ家カフェ! 月替りのポスターコレクションにも注目だ。映画好きなら、会社をサボってもぜひ! 寛司さんや映画関係者とも会えるかも。

人形町三日月座 TWITTER FACEBOOK
住所 東京都中央区日本橋人形町1-15-5 柏原ビル2階
電話 (03)3667-0423
営業時間 11:30~18:00  火・水(長期休業もあるので電話確認を)

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