相木 悟 のレビュー

ドラゴン・タトゥーの女

みんなの評価  平均:81点 相木 悟 の評価  総合:85点
ストーリー:  78
キャスト:  84
演出:  79
ビジュアル:  83
音楽:  81
ストーリー:  80
キャスト:  80
演出:  80
ビジュアル:  85
音楽:  85

スウェーデン産人気ミステリー、スタイリッシュに再降臨!   (投稿者: 相木 悟 )   2012/2/13 11:12
評価: 85点  (9人中5人が参考になったと評価しています)
ダーク・ミステリーというより、異色のラヴ・ストーリーとして観応えのある一本であった。
本作は、スウェーデン発世界的ベストセラーとなったスティーグ・ラーソンのミステリー小説『ミレニアム』シリーズ第1弾の再映画化。云う迄もなく3部作はすでに母国にて映画化済みであり、わが国でも大ヒットし、高い評価を獲得している。それがこんなに早くリメイクされるのだから、ハリウッドにおけるネタの枯渇はよほど深刻なのだろう。
監督を務めるのは、今のりにのっているデヴィッド・フィンチャー。このばっちりな人選に膝をうった方もさぞ多かろう。あまりにかっちょいい予告編から、僕も期待に胸を高まらせていたのだが…。

左翼系雑誌“ミレニアム”の発行責任者ミカエル(ダニエル・クレイグ)は、実業界の大物ヴェンネルストレムの不正を告発するも、逆に名誉棄損で訴えられ、記者生命を奪われてしまう。そんな失意のどん底を這うミカエルに、ある日、スウェーデン有数の財閥ヴァンゲル・グループの前会長ヘンリック(クリストファー・プラマー)が接触。40年前に一族が集う孤島から忽然と姿を消した姪ハリエットの失踪事件の真相究明を依頼する。仕事を引き受け、さっそく調査を開始するミカエルであったが、行く手にはヴァンゲル一族の血塗られた歴史が立ち塞がり、行き詰まってしまう。そこで一族の弁護士フリーデは、パンクファッションに身を包むタトゥーとピアスにまみれた異形の天才ハッカー、リスベット(ルーニー・マーラ)を紹介。リスベットの協力を得てミカエルは、ハリエット失踪の裏に潜むおぞましい連続猟奇事件の存在に辿り着くのだが…。

結果から云うと、想像以上に楽しめ、大満足であった。
本作のようなケースは、原作ファン、スウェーデン版映画化作のファン、両方のファン、今回初めて接するファン、と多様なルートがあり、とらえ方も千差万別であろう。
僕は原作未読でスウェーデン版映画を一回観ただけの、いわゆるライトユーザーである。
スウェーデン版に関しては、予備知識なしで観た為、なかなか主人公コンビ(ミカエルとリスベット)が合流せず、本筋とは直接関連のなさそうなエピソードに時間を割く歪な構成にイライライライラ。その上、肝心のハリエット失踪事件の方は背後にヴァンゲル一族の縁者関係が複雑に入り組んでいる割には、たいしたことのない真相に着地し、拍子抜けであった。ハッキリいって、見立て殺人、トリックと、謎解きミステリーの出来としては二流もいいところである。
とはいえ、登場人物たちは魅力的であり、異様にインパクトのあるアンチ・ヒロイン、リスベットには造り込みの深さが窺え、これは事前に原作を読み込んで、それなりのリサーチをして挑むべきタイプの作品だったな、と実感。そう思ったまま、観直すことなく放置していた次第である。

よって、不満部分に対する心構えはあり、適度に内容をウル覚えであった、かような状況が功を奏し、本作を実に面白く観れた訳である。これは好運であった。
おそらく初めて観る人は情報量が多くて分かり難く、スウェーデン版を観込んでいる人は、
きちんと現地でロケをする等、原作を忠実なぞっている展開に既視感を覚え、内容比較に終始してしまい、少なからず興を削がれたことであろう。

それに今回、改めて本作はミステリーではなく、リスベットとミカエルのラヴ・ストーリーであることを痛感した。
二人の障壁として横たわるのが、作品のテーマである現在まで連綿と続く女性差別、人種差別といった差別感情という訳だ。だからして、二人が出会べくして出会うまでの課程、権力に抹殺されるミカエル、リスベットと変態豚野郎との一戦、等々が重要になってくるのである。
要は、劇中で描かれるヴァンゲル一族のまつわる事件は、上記テーマを表す1エピソードに過ぎないのだ。

それに本作に至っては、ことさらリスベットよりのラヴ・ストーリーにまとめようと、意図的にミカエル側を薄くしているふしがある。
おかげで切ないラストには、グッときた。

スティーヴン・ザイリアンの風通しをよくする交通整理の行き届いた脚色術には唸らんばかり。事件に関する、ちょっとしたオリジナルの仕掛けもいい塩梅である。大変勉強になりました。

デヴィッド・フィンチャーの演出も、やたら評判のいいダークな007風味のいかしたタイトル・シークエンスをはじめ、相変わらず編集のキレもよく、過不足なし。あるシーンにおいての悪趣味なエンヤの使い方には拍手喝采だ。

話題沸騰している新星ルーニー・マーラ扮するリスベットも、世評に違わず賞賛に値しよう。実は本人は富豪令嬢という裏事情も、多分にそそるものがある。が、如何せん、基本が美人過ぎるように思う。健闘は認めつつも、やはりスウェーデン版のノオミ・ラパスの痛々しい迫力には及ばず、彼女ほど感情を持ってはいかれなかった。ちと残念!(そもそもフィンチャーの淡白な演出形態が、このキャラに合っていないような気もするが…)

何はともあれ、続編での発展に期待したいところである。

このレビューは9人中5人が参考になったと評価しています。
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