本年度アカデミー賞最多8部門を受賞した注目作『スラムドッグ$ミリオネア』がいよいよ4月18日(土)から公開される。全米ではわずか10館からスタートし、口コミで瞬く間に600館規模に拡大。キャストは無名の俳優ばかり、1400万ドルという低予算で製作されたこの作品が、なぜこれほどまでに受け入れられたのか?ダニー・ボイル監督に、オスカー受賞の喜びと作品のメッセージを語ってもらった。

― アカデミー賞8部門受賞おめでとうございます。
ダニー・ボイル監督(以下、ボイル監督):
受賞した瞬間を今でも思い起こします。たった1400万ドルの予算で作り、大スターも出演していないこの作品が、こんな成功を収められたんですからね。あらためて感激してしまいます。全世界の映画祭で多くの賞を獲得し、興行的にも成功したのは、この映画のストーリーにこそ理由があるのです。主人公が一人の小さな少年で、彼が自分の夢のために、絶え間なく努力をして、最後に大金を勝ち取る。でも、お金よりもっと大切なのは、彼が彼の想い人を勝ち取ったこと。これは我々が住むこの世界のどこかで起こっている話だし、国や宗教にかかわらず、誰もが共感する物語だと思います。

― イギリス人監督のあなたが、なぜインドでこの作品を製作したのでしょうか?
ボイル監督:
クイズショーという舞台をベースにしたストーリーを考えた場合、一番興味深く、最適な場所がインドでした。ムンバイのスラムは生命力が溢れ、コミュニティが形成されていて、日に日に進化をとげているんですよ!ゲームショーでもある「クイズ$ミリオネア」は、まさに変化を遂げているインドを象徴するものなんです。
ヴィカス(ヴィカス・スワラップ)が書いた原作は、富と貧しさ、まさにスラムドッグとミリオネアをぶつかり合わせたドラマティックなストーリーでした。そして僕がサイモン(サイモン・ビューフォイ)の脚本で一番好きなのは、この主人公ジャマールは、お金が目的ではなかったということ。そう!彼が求めていたのは愛した女性だったんです。あ、言ってしまった(笑)。

― インドでの撮影では、困難はありましたか?
ボイル監督: 街ですね。街の恩恵を受けることです。挑んだり、コントロールしようとするべきではないんです。通常、映画監督はそうします。人生の瞬間をまとめあげ、それを映画で上手く動かそうとすします。でもそれは上手くいかないんです。ムンバイは、制御不能の街なんですよ。我々は街の波に乗ればいいだけでした。この街にはエネルギーの巨大な波があります、1日20時間続く波です。そこに入り込み、その中に浸り、それを少しだけ捉えるんです。台本どおりの統制された正確なシーンは得られないけれど、それを補って余りある生命力を得られるんですね。生きている感覚。あの街は命を称えています。死も暴力もたくさん存在しますが、生命力溢れる感覚に圧倒されます。だから我々がしようとしたことは、それを変えたり、コントロールしようとするより、むしろ、その生命力を捉えるために全力を尽くすことでした。






