世界で最も愛されている英雄伝「三国志」を、巨匠ジョン・ウー監督が製作費100億円を投じて映画化!トニー・レオン、金城武ら、アジアのトップスターが集結し、国を賭けて戦う男の世界を壮大なスケールで描く。日本人俳優として唯一キャストに名を連ねた中村獅童が、ワイヤーアクションの苦労や、ジョン・ウー監督の印象について語ってくれた。

― 日本人としてただ一人、出演が決まった経緯を教えていただけますか。
中村獅童(以下、中村): きっかけは、エイベックスが出資していたことですかね。去年の3月の末に中国で初めて監督とお会いして、映画のことや色々な話をしたんです。そのお話を聞いて、「出たいな、やりたいな」と思ったんですよね。当初は2シーンくらいの役だったんですが、すごく出番が増えたんです。自分では照れくさいから言えませんが(笑)、後で聞いたら最初に会った時の印象が強かったようで。監督は僕の映画も結構観てくださっていて、最初に会ったときに僕の役柄のイメージが決まってたみたいです。監督は、アクションシーンで強い武将の役がもう1人欲しいと考えていて、周囲を支える強い武将の役を、と思ったそうです。
― 台本を受け取ったときに、甘興(かんこう)をどんな人物と捉えたのでしょうか。
中村: 台本の第1稿では2シーンか3シーンくらいだったので、武将というだけで、どういう人なのかまで描かれていませんでした。第1稿、第2稿、第3稿と何回も刷り直したのをいただいて、いつになったら決定稿が来るんだと思ってたら、最後まで決定稿がなかったんです。台詞は、基本的に現場で口頭で変わっていきました(笑)。
本当は僕は、実在の人物で甘寧(かんねい)という役だったんですが、出番が増えていくにつれ、史実と変わってしまうので、全部役名も新たに架空の人物にしようということになったんです。
甘興は、今までは水賊でひどいことしかやってこなかったけれど、周瑜の部下として真正面から戦うことになる。荒々しい人物が、まっとうに生きようとする。その強さを表現したいと思っていました。観る人には、人間の持ってるギラギラした情熱であったりとか、闘志であったりを感じてもらえたら、と。

― 三段跳びをして、馬に乗った敵に斬り込むアクションはすごかったですね。
中村: あれはワイヤーですよ。あんなに飛べないですよ、俺は(笑)。映像を観ていたらわからないけれど、上から吊って約5メートルくらい空中を飛んでいるんです。
誰にも言いませんでしたが、あのシーンで怪我をしましたね。知っていたのは、うちのスタッフぐらい。監督も最後はわかっていましたけど。タイミングが合わないと、やっぱり怪我をするんです。ワイヤーは最新技術のように見えますが、映像でコンピュータ処理するのが最新技術であって、ワイヤーで吊るのは人が支えているんです。機械じゃないんですよ。「いっせいの、せっ!」で5人くらいの人が、首から背中辺りに繋がってるワイヤーを引っ張る。そのタイミングと自分がジャンプしようとしたタイミングが合わないと、体が勝手に持っていかれてしまうんです。タイミングがなかなか合わなくて、8テイクくらいやったかな。馬の機嫌もありますからね。こっちが上手くいきかけたのに、馬が来なかった、とか。
― 向かってくる馬に対して恐怖はなかったですか?
中村: まるっきりないですね。ここでやれって言われたら、怖いからできませんって言うけど、カメラが回ってて役者が全員役になりきっている時は、自分も役に入っているのでやってしまいます。

― ジョン・ウー監督からアドバイスされたこと、逆に中村さんから監督に提案したことは?
中村: 言う前にやる。現場でとりあえずやる。監督はこうやれとか何にも言わないから、その場で役者が演じてみる。打合せもないし、説明もしない。そこでどういう風に自分が表現するかってことだけでした。そこで、当然「もうちょっとこういう風にしよう」っていうのも出てくるし、「ああ、いいね、それもっとやって」ってこともある。そういう時の会話は通訳の人が訳してくれるんですが、意外と本人同士で通じちゃったりしてることがあるんですよね。
つまり、役者が現場に入ったら好きにやってということなんです。だから、厳しいということですよね。言われるがままにやるってことではありませんから。信頼されて「好きにやってごらん」ってことは一番厳しいと思います。(監督は)懐の深い大きな人だと思いますね。
― 猛暑の中、中国での撮影で苦労したところは?
中村: 暑かったことですね。あの大地の暑さ、自然の暑さっていうのは、すごいんですよ。鎧も着てるし、マントをつけるから、さらに暑かったですね。うちのスタッフは、全員下痢してました(笑)。僕は『SPIRIT』で中国に行った時に、体調の事などで苦しんで、今回は気をつけていたから、食べ物にあたったりしませんでした。氷が入ってるようなものも絶対飲まないし、生野菜は絶対食べないようにしてたんです。

― 撮影中に超大作ならではと感じたことは?
中村: 周瑜のお城とか全部作ってしまうところです。僕らが時代劇でお寺でロケするのと一緒で、古城でロケしているのだと思ったら、映画のために建てた城でした。それはびっくりしましたね。こういう古風な村も、よく見つけて来たなって思ったら、更地のとこに村を建ててたんですよ。
― 今後、力を入れたいジャンルや挑戦したいことは?
中村: 歌舞伎はもちろんのこと、やはり映画ですね。歌舞伎と舞台と映画。日本でも海外でも、どこでもかまわない。呼ばれれば行きますから。でも、『レッドクリフ PartI』は中国の時代劇だから、日本人としては、世界の人に観ていただけるような日本の時代劇を作っていける役者になりたいと思ってますね。
取材時には窓の外を眺め、子供のようにスタッフとはしゃいでいた中村獅童。金髪にシルバーアクセサリーが光るファッション、奔放な言動から受ける印象を一言で表すと、「自由人」という言葉がぴったりくる。その唯一無二の個性がジョン・ウー監督に気に入られ、『レッドクリフ PartI』では当初の予定より出演シーンが大幅に増やされたのだとか。果敢に大軍に立ち向かっていく甘興の姿は、アジアの超大作の中で強烈な印象を残す役者・中村獅童と重なって見えた。
レッドクリフ PartI
はるか昔、生きる意味を戦いに求めた時代。天下統一という野望に燃える曹操は80万の兵力を使い、怒涛のごとく敵国を攻めていた。誰もがその勢力に圧倒されたとき、立ち上がった二人の男がいた。一人は、劉備軍の若き天才軍師・諸葛孔明。もう一人は、孫権軍の知将・周瑜。二人は、その巨大な勢力に立ち向かうため、連合軍を結成する。その数、わずか6万。兵力で劣る連合軍は、知略と奇策によって戦いに挑んでいく。だが、曹操の野望の裏には、一人の女への秘められた目的があった…。
[ 2008年11月1日(土) 日劇1ほかにて全国超拡大ロードショー ]
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