デビュー作『白い風船』でカンヌ映画祭新人賞、『チャドルと生きる』でベネチア映画祭金獅子賞(グランプリ)、そして本作でベルリン映画祭銀熊賞と、世界三大映画祭を制覇したイランの名匠ジャファル・パナヒ。その彼が今回題材にしたのは「サッカー観戦をしようとする女性たち」だ。今までにもイランにおける女性問題を描いてきたパナヒ監督だが、本作ではユーモアを散りばめた、エンタテインメントとしても成立する作品を作り上げた。あの手この手を考える少女たちと、それに翻弄される監視の兵士たち。どちらも等身大の庶民たちで、悪人はいない。笑いながらも考えさせられる上質なドラマだ。
女性のサッカー観戦が禁止されているイランで、サッカー観戦のために男装をして観戦をしようとする女性たちを描いた作品。監督は、「白い風船」でカンヌ映画祭カメラドール(新人賞)を受賞、その後も「チャドルと生きる」でベネチア映画祭金獅子賞(グランプリ)、そして本作でベルリン映画祭銀熊賞(審査員特別賞)を受賞し、世界三大映画祭を制覇するという快挙を達成したジャファル・パナヒ。
大騒ぎのサポーターたちを乗せたスタジアムへと向かうバスの片隅に、ひっそりと座っている独りの青年…いや、少女だ。彼女はどうしてもスタジアムでサッカーを観戦したいがために、男装をしてバスに乗り込んだの…
>>『オフサイド・ガールズ』あらすじ全文
※ストーリーの結末が記載されていることがあります。ご注意ください。
大騒ぎのサポーターたちを乗せたスタジアムへと向かうバスの片隅に、ひっそりと座っている独りの青年…いや、少女だ。彼女はどうしてもスタジアムでサッカーを観戦したいがために、男装をしてバスに乗り込んだのだった。イランでサッカーは国民的なスポーツ。男性だけではなく、女性もみんなサッカーが大好き。けれど、女性がスタジアムで男性のスポーツを観戦することは法律で禁止されている…。それでも今日の試合は、大事な一戦。だからなんとしてでもスタジアムで見たい。そこで思いついた苦肉の策だった。なんとかスタジアムに到着したものの、彼女は試合が始まる前にあえなく入場ゲートで捕まってしまう。そこには男装した少女たちが大勢。少女たちは試合終了後にまとめて警察に身柄を受け渡されるという。遂に試合が始まり、スタジアムの中から物凄い歓声が聞こえてくる。しかし、彼女たちの前には高い壁が立ちはだかり中の様子はまったく分からない…。捕まえられてもなお、試合を見せてくれるよう兵士たちに食って掛かり、それが駄目ならせめて実況をするようせがむ少女たち。そんな彼女たちに手を焼いた隊長に実況を命じられた兵士も、出場していない自分の故郷の選手を勝手に登場させて実況するという始末。更にあの手この手で少しでも試合が見られるよう奮闘する少女たち。スタジアムの中から聞こえてくる歓声は更にヒートアップし、諦めきれない彼女たちの想いもさらに熱くなる。時間は刻一刻と過ぎてゆく。とうとう中では試合を見られず、試合もまだ終わらぬうちに、スタジアムを出て分隊行きのバスに乗せられる彼女たち。「この先どうなってしまうの?」それまでの勢いから一転して重い空気が彼女たちを包む。しかし、そんな空気を断ち切るように、ラジオから聞こえてくる試合の実況中継が、再び彼女たちの熱い想いを呼び起こしたのだった。